日本は水の列島である

 日本は水の列島である。モンスーンアジアという雨の多い気候帯に属する。高温多湿な夏がおいしい米を育てる。その慈雨が時に豪雨に姿を変える▼米の歴史は、治水の歴史そのものである。植物学者の稲垣栄洋さんいわく、「途方もない労力と時間を掛けて、人々は川の氾濫原を田んぼに変えていった」(『世界史を大きく動かした植物』)。終戦の日、大型の台風10号が西日本を中心に猛威を振るい、人々は河川の氾濫に身構えた▼わが国の年間平均降水量は約1700ミリで世界平均の2倍。台風10号がその半分以上の雨量をもたらすと聞けば、脅威のほどが分かる。暴風雨はお盆の帰省を混乱に陥れ、花火大会などの楽しみも奪った。甲子園の高校野球は順延、奈良の大文字送り火は初めて中止になった▼記録的な大雨は、発熱する地球の気候変動と無縁ではあるまい。詩人の山田今次は、たたきつける雨の様を「ざんざか」「ざんざん」「ざかざか」と形容したが、雨の降り方は年々たけだけしさを増していく。台風が去った後は置き土産の酷暑も待つ▼水をたっぷり含んだ山では、根こそぎ崩れる深層崩壊の危険もある。異常気象下での治山治水を怠れば、水の列島は洪水列島となる。深層崩壊の危険が迫っているのは、人間社会の方かもしれない。
 

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