国連気候変動予測 食料安保へ危機共有を

 世界的に異常気象が猛威を振るう。将来的な穀物高騰などを予測した国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書は、今後の食料安全保障の重要性を裏付けるものだ。危機感を共有し、持続可能な農業の維持・発展へ国内合意を急ぐべきだ。

 同報告書は、干ばつなど気候変動の激化で2050年までに穀物価格が最大23%上がる恐れがあり、食料不足や飢餓のリスクが高まると警告した。地球温暖化が土地に与える影響をまとめており、水不足に悩まされる人口が増えるなどと指摘。来年に本格始動する予定のパリ協定で、対策を強化するように訴えたのが特徴だ。いわば、地球規模の危機に警告を発し、食料安保の構築を急ぐよう促した。

 だが、地球温暖化対応を巡り、最も大きな問題として浮上したのが「政治リスク」だ。24日からのフランス・ビアリッツでの先進7カ国首脳会議(G7)でも、自国経済最優先を掲げるトランプ米大統領と、温室効果ガス削減を求める欧州各国などの対立が改めて表面化しかねない状況にある。

 先進国と途上国の対立を乗り越え、新しい国際条約「パリ協定」が採択されたのは15年。196カ国・地域が参加し、20年以降の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減目標設定に合意した。ところがパリ協定の実行が危ぶまれている。中国に次ぐ温室効果ガス排出大国の米国のトランプ大統領が「温暖化はでっちあげ」と批判し、パリ協定からの離脱を宣言したからだ。G7では、自国で燃料税引き上げなど温暖化対策を重視する議長国のフランス・マクロン大統領と、トランプ米大統領の激論も想定される。貿易に加えて環境問題でも共同宣言が出せない事態となれば、G7の求心力は一気に弱まる。

 こうした中での今回のIPCC報告である。重要なことは、気候変動が大きな脅威として目の前にあるという現実だ。報告書が警告する社会不安定化は現実味を帯びる。途上国を中心とした30年後の出来事と、傍観してはいられない。

 日本では西日本豪雨などがあった昨年、自然災害による農業被害額が5000億円になり、11年の東日本大震災以降で最大となった。西日本豪雨は温暖化の影響も大きいとの指摘が強い。熱波の一方で突然の集中豪雨と、急変する気候変動は大きな脅威以外の何ものでもない。

 日本農業は高齢化が進み、生産基盤が大きく揺らぐ。被災から立ち上がる復元力も弱まってる。過去最低の食料自給率37%(カロリーベース)への落ち込みは、食料安保確立の重要性を改めて裏付けた。今秋からは5年に1度の食料・農業・農村基本計画見直し論議が本格化する。自給率低下を踏まえて、しっかり自国農業生産を柱とした食料安保の確立を求めたい。今回の国連報告はその必要性を示したものだ。 
 

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