英国の劇作家オスカー・ワイルドに次の言葉がある

 英国の劇作家オスカー・ワイルドに次の言葉がある。〈自由と書物と花と月がある。これで幸せでない人間などいるものだろうか〉▼確かに至福の四点セット。四季を愛(め)でるわが国の風趣「花鳥風月」には、花と月がある。春に花、秋には月。そしてきょうは中秋の名月。中国の中秋節が伝わったとされ、豊作を願う。実際の満月は14日だが、古来、人々は月に宿る不思議な力を信じ、農耕儀礼のよすがとした▼ススキを稲穂に見立て、月見団子を供え、米の実りを祈る。別名「芋名月」ともいう。収穫を迎える芋類に感謝しての呼び名である。稲作以前から、日本人の命を支えたサトイモを供える習わしによるという。いにしえの人々の思いが、その名に込められている▼遠い祖先たちは、月の満ち欠けで時間や月日を知り、農事の目安としてきた。太陰暦である。漁や種まき、収穫の時期も月の暦によってきた。今の太陽歴になったのは明治6年から。およそ150年前まで、われら農耕民族の暮らしは月と共にあった。神事の盛んな沖縄では今でも太陰暦が根付き、豊かな島文化が息づく▼雲に隠れたら「無月」、雨なら「雨月」。見えなくても名月は中空にある。こよい、空を見上げ一句ひねってみようか。芋名月にちなみ、芋焼酎でも味わいながら。

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