味覚の秋である

 味覚の秋である。香り立つ新米、ほっこりしたカボチャやサツマイモ、甘栗。今年は歴史的な不漁だが、脂の乗ったサンマ。旬の食材が頭に浮かぶ▼季語で、秋の涼気に食欲をそそられることを「秋渇き」という。渇くのは食欲だけだろうか。寒造りで仕込んだ清酒を熟成させ、秋になる頃に一段とおいしくなったものを「秋上がり」の日本酒と呼ぶ。旬の食材を取りそろえた和食を味わいながら、秋上がりの日本酒をたしなむ。愛酒家の顔がほころぶ季節になった▼和食といえば、ユネスコの無形文化遺産でもある。「日本人の伝統的な食文化」として2013年に登録された。誇らしいことで、政府によるアピール効果もあったのか和食は海外でブームへ。人気は日本食全般に広がり、東京・築地の場外市場も秋の味覚を求める大勢の訪日外国人で連日にぎわう▼その東京の台所と秋の実りをスーパー台風19号が直撃。「秋の嵐」という季語では伝えきれぬほどの猛威。国際機関が「ハギビス」と命名したこの台風、フィリピンの公用語で「素早い」の意味があるとか。名前と裏腹に長時間の暴風雨にさらされた▼〈釣鐘(つりがね)のうなるばかりに野分かな〉(夏目漱石)。物を皆なぎ倒す猛烈な野分が常襲する時代。早く通過してくれと祈ることしかできない。 
 

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