農畜産物トレンド 二極化捉え“売り”探れ

 安全・安心で、値頃で、簡単に、おいしく食べられ、健康にも良い──。流通・小売りのプロが予測した2020年の農畜産物トレンドから消費者が望む理想的な食の姿がうかがえる。だが全てを満たすのは至難。高級感と値頃感の消費の二極化も意識し、消費層や利用場面を念頭に訴求できる“売り”を探ろう。

 日本農業新聞は、スーパーや外食、卸売業者など計169社の回答を基に20年の農畜産物トレンドをまとめた。上位10位に入った販売キーワードで消費動向を踏まえたものは、多い順に「安全・安心」「簡便・時短」「おいしさ」「健康(機能性)」「値頃感(節約志向)」だった。安全・安心は国産の前提と言える。他のキーワードは部門で注目度が異なる。

 ほぼ毎日食べる野菜では、調理の簡単さ(簡便性)と栄養価の高さ(健康)が特に求められる。プロが最も注目した品目がブロッコリーだ。緑黄色野菜で栄養価が高く、電子レンジで加熱するだけで食べられる。

 果実でも「食べやすさ」という簡便性が注目品種を選ぶポイントとなった。併せて、「おいしさ」と高値につながる高級感と、「値頃感」の二極化が進むとの予測が顕著に現れた。

 注目の果実のトップは10年連続で、おいしくて食べやすいブドウの「シャインマスカット」。旬には買いやすい価格になったが贈答用にも重宝する高級感は変わらない。だが、食べやすい国産と一緒に昨秋は米国産が店頭に多く並んだ。味は劣るが半値以下で皮ごと食べられる。プロも、出回り増が予想される輸入果実で圧倒的なトップ品目に選んだ。簡便性に加え、同じ棚に高級感と値頃感の二極が並ぶ様は、消費者の果実消費の現状を象徴している。

 食の二極化は他部門でも見られる。家庭用の米で注目品種1、2位の「ゆめぴりか」「つや姫」は良食味で高値を保つ。併せて低価格の業務用品種も家庭用に一部仕向けられ安定した需要がある。東京五輪・パラリンピックを控え食肉でも銘柄和牛の外食需要が旺盛になるとみる一方、健康志向から輸入も含めた牛赤身肉や安価な鶏肉の引きが強まるとの見方もある。

 二極化の背景には消費者の所得格差が大きくなり、購買力に差ができたこともありそうだ。日本政策金融公庫の調べでは、若年・中年層を中心に「食べること」への関心が低下し、また食について健康よりも経済性や簡便性を優先させる傾向が強まったことが明らかになった。

 食への志向が多様化する中で、どの消費層をターゲットに農畜産物を生産するか見極めるのが難しい。流通・小売りの消費情報を基に、需要が期待できる商品を連携して生産・販売するマーケットインの取り組みが重要だ。値頃感への対応では、調理しやすく小ぶりで安価なブロッコリーの側枝に目を付け、人気商品に育てた直売所ならではのアイデアも参考になる。
 

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