麻木久仁子さん(タレント) 病気で知った薬膳の良さ

麻木久仁子さん

 2010年に脳梗塞になったんです。何の前触れもなく。1年半後には、初期の乳がんであることが分かりました。それまで病気はほとんどしたことがなく、入院したのは出産の時くらいです。人って病気になるんだ。そんな当たり前のことを突き付けられました。

 病気になる前は仕事が忙しかったこともあって、食べ盛りだった子どもに、他のお母さんのように手作りおやつをあげたりとかできませんでした。子どもに対して申し訳ない気持ちがあり、せめて量をいっぱい作ってあげようという思いが強かったんです。

 自分で作れない日はお総菜をたくさん買って来ました。とにかくドンとお皿を並べておく。一つ一つのお皿、一つ一つの食材が、体にどういう働きをするのか考えることもありませんでした。

 仕事先で食事をすることも多く、テレビ局で出されたお弁当や、忙しい時はコンビニのおにぎりで済ますような日常でした。
 

食が体調の基本


 そんな私が、病気になって初めて気が付きました。病気とはどんな人でもかかってしまうもの。いざ病気になった時には持病はない方が良いし、体力があった方が良い。そのためには日頃から体調を整えるのが大事で、基本は食べ物であるということに。

 たまたま薬膳の学校があるのを知り、見学に行ってみました。良い睡眠、適度な運動、ストレスとどう向き合うかなど、生活全体を整えることで病気にならないようにするということを知りました。薬膳というのは、その中のご飯の部分をどうしようかということなんですね。面白そうだと感じ、その場で入学願書を出したんです。1年間学び、資格も取りました。

 その土地で作られた旬の食材をいただくことの大切さを教えられました。例えば、夏ならスイカやゴーヤー。強烈な日差しの中でもみずみずしさを保って実る食材を食べることで、暑さを乗り越える力をいただく訳です。

 今の時期のお薦めはヤマイモです。買い物に行くと、できるだけ買うようにしています。擦り下ろしてご飯に掛けたり、スープやみそ汁に流し入れたりします。お好み焼きに使ったり、小麦粉と一緒に混ぜて団子にしてすいとんみたいにいただくのも良いですよね。

 講演で地方に行き、地元で取れたものをいただくと、本当にうれしい。その土地の力を凝縮させて実ったものですから。生産者の方に感謝の気持ちが湧きます。
 

素材の力丸ごと


 私はご飯派で、玄米を食べるようにしています。「一物全体」といって、季節や土地の力を包み込んで実ったものは、できるだけ丸ごと食べるという考えからです。野菜も皮はむきません。ジャガイモは皮を付けたままでフライドポテトにします。この間、ブロッコリーの硬い茎を皮をむかずにミキサーにかけてスープにしたら、すごくおいしかったですね。肉を煮込むときはなるべく骨付きを使い、骨からのエキスも大切にします。

 娘が「銀シャリを」とねだるので、時々白米を炊きます。やっぱりおいしいですからね。修行ではありませんから、白米を食べてはいけないという訳ではないんです。食べる楽しみを放棄しては、ストレスがたまって体調を崩します。体に良いから日常的には玄米を食べ、心の満足を優先したくなったら白米を食べています。

 薬膳をきっかけに生活習慣を見直し、自分の体の状態に興味を持つようになりました。おかげで元気に過ごせています。(聞き手=菊地武顕)

 あさぎ・くにこ 1962年東京都生まれ。「いい旅・日本」などでのリポーターやアシスタント、「THE WEEK」のキャスターとして活躍。闘病後に薬膳を学び、国際薬膳師の資格を取得。自身の経験と知識を、著書『ゆらいだら、薬膳』(光文社)、『生命力を足すレシピ』(文響社)や講演で伝えている。
 

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