米需給緩和の懸念 価格安定へ早期対策を

 消費の減少傾向に新型コロナウイルス禍が重なり、米の需給緩和への懸念が広がっている。転作の積み上げや長期計画的な販売など入り口・出口の対策を進め、不安材料を早期に払拭(ふっしょく)すべきだ。時間は限られるが、米価が大きく下がるのを、まだ回避できる段階であると強調したい。

 2019年産米の産地から卸への累計販売数量は5月末時点で前年と同水準。しかし、卸から実需者への販売は業務需要を中心に落ち込んでいる。JA全中は、20年産の作付面積が前年並みで作況指数が100だった場合、適正生産量を20万トン程度上回ると試算、米価の大幅下落への懸念を示している。もちろん、それが避けられない局面かというと条件付きでノーだ。

 13、14年産は相対取引平均価格が2カ年で60キロ当たり計4500円下落したが、その時の6月末時点の民間在庫量は13年から3年連続で220万トン以上だった。20年産では、米価下落の目安とされる200万トンを21年6月末は超える可能性があるとして過剰感が出てきた。しかし当時ほどではないとみられる。

 大幅下落の回避には、不安材料を早期に取り除くことが必須だ。新規需要米などの助成金申請期限が8月末まで延長された。主食用からの切り替えが優先課題だが、この時期から主に取り組めるのは、潜在需要が見込める飼料用米だろう。しかし主食用品種は多収ではなく、切り替えると農家所得が減る。産地が推進をためらう要因だ。産地交付金の複数年契約上乗せ助成(10アール1・2万円)や、使い道の裁量が自治体にあるコロナ対策の地方創生臨時交付金などの活用も検討し、十分な収入を農家が得られるようにすべきだ。

 転作の積み上げと出口対策を段階的に構える必要がある。契約販売ペースが鈍い産地は、実質的な市場隔離を行う米穀周年供給・需要拡大支援事業の活用を早めに検討したい。長期計画的に販売する場合、保管費用などを国が最大で半額助成する。今年度分の1次公募は終わったが、2次公募を適切な時期に実施するよう求める。年一作の米は、出来秋に設定した価格が相場感を形成する特性がある。市場に向け、需給改善へのメッセージの発信を急ぐべきだ。

 これからの時期、産地は卸に事前契約の商談を進めて相場の居所を探る。契約価格は農家に支払う概算金にも影響する。産地は需給改善策をとった上で、必要以上に弱気になっていけない。米価は一度下げると戻すのに時間がかかる。農家の離農が加速し、耕作放棄にもつながりかねない。しかし、安くなっても消費は大きくは伸びない。過去を見れば明らかだ。

 コロナ禍で需給や価格は不透明な状況が続く。売り急ぎに走れば産地間で価格競争を引き起こしかねない。入り口・出口での備えをしっかりして、この難局を乗り切りたい。政府にも機敏で柔軟な対応が求められる。
 

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