九州各地で氾濫、浸水

用水路や水田に流れ込んだ土砂を片付ける田中さん(右)(7日、鹿児島県垂水市で=染谷臨太郎写す)

 熊本などに猛烈な雨をもたらした梅雨前線による被害は7日、九州北部にも広がり、広い範囲で河川の氾濫や土砂崩れなどが発生した。熊本県南部で4日朝にかけて発生した被害と合わせ、九州地方の豪雨による死者は計55人となり、各地で農業被害も起きている。道路の寸断や通信障害のため、被害の全容は依然判明していない。

 

火山灰土、撤去急ぐ 鹿児島県垂水市


 集まった農家が、スコップを握った手を必死に動かしていた。土砂崩れが発生した鹿児島県垂水市新城地区。崩れた山から、用水路や水田に土砂や木、軽石が流れ込んだ。7日午前中には、近隣の農家が撤去作業を始めた。

 

 鹿児島県特有の火山灰が降り積もった「シラス台地」の土砂。その撤去は時間との闘いだ。

 「乾かないうちに取らないと、かちかちに固まってしまう」。農家は重機も使い、作業を急いだ。

 土砂崩れは6日の午前8時ごろに発生した。前日の夜から雨が降り続き周囲の道路は水が勢いよく流れ続け、川のようになっていたという。

 崩れた山の麓に住む鹿屋盛男さん(73)は「(山が)0・5秒くらいで一気に崩れた。ほんの一瞬だった」と振り返る。大量の土砂が、6月末に「ヒノヒカリ」を植え付けたばかりの水田を襲った。

 田中正作さん(65)も隣接する水田で土砂の被害を受けた。苗が倒れずに残った場所でも、よく見ると細かな軽石が広範囲に入り込み、ぷかぷかと浮いている。

 田中さんは「ここは火山灰が降り積もってできた土地。乾いているうちは固い。水には弱いが、こんなに崩れたことはなかった」と驚く。

 地域では、土砂災害による犠牲者は出なかった。

 田中さんの妻、みち子さん(64)は「命があってよかったね、と周りから言われた。でも私たち農家からすれば、やっと植えた田だから……」と悲しさをにじませた。(三宅映未)
 

せり前の青果物無残 鹿屋市


 大雨に見舞われた鹿児島県鹿屋市。青果卸・鹿児島中央青果鹿屋支店では、卸売場内や保冷庫が浸水した。付近の肝属川から流れ込んだ。せりに出るはずだったキャベツやタマネギなどの野菜、果実、花などが水に漬かり、売り物にならなくなった。

 せりは7日朝には一部で再開したものの、完全復旧までは時間がかかる見通しだ。被害額は品物だけで500万円、保冷庫や、パソコンなどの備品を合わせると1000万円を超えるという。

 支店によると、浸水が始まったのは6日の午前6時半ごろ。付近を流れる肝属川支流の水が一気に流れ込んだ。いったん勢いは収まったが、午前9時ごろに再度水かさが増えて、最終的に膝の高さまで一面に水が入った。

 水の勢いが収まってから、散乱した荷の片付けをした。ポンプ車を活用して卸売場を水で洗い流して清掃し、ぬれた野菜を1カ所にまとめて、荷を置くスペースを確保。7日朝には、通常の3分の1ほどの荷で、せりを開いた。

 市場には鹿屋市内や宮崎県串間市などから農家が持ち込みで荷を運ぶことも多い。付近は農閑期で出荷も少ないが、夏にかけてニガウリ(ゴーヤー)やオクラの出荷も始まる。小川義文支店長は「農家や買参人のため、市場は止めずに動かし続ける。出荷する農家や農地が無事か心配だ」と話す。

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