豪雨被害対策 生活と農業 早期再建を

 記録的な豪雨が未曽有の被害を広域でもたらしている。河川が氾濫し、家屋が浸水、停電、断水も続いている。農業も甚大な被害が予想される。政府は、暮らしの早期再建と農業の早期復旧に向け、万全の対策を急ぐべきだ。一方で梅雨前線はまだ停滞している。命を守る行動を最優先する必要がある。

 各地で観測史上最大の雨量を更新した。原因は「線状降水帯」の発生だ。停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、発達した積乱雲が連なる現象だ。2017年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨でも発生し、同じ場所に短時間で猛烈な雨を降らせた。今後も油断できない状況が続く。

 熊本県では球磨川が氾濫。同県の死亡者は50人を超えた。被害は拡大し、九州北部や岐阜県、長野県でも発生している。

 政府は、被災した住民の日常を取り戻すための支援を急がねばならない。停電や断水の早期解消に全力を挙げてほしい。避難所では新型コロナウイルスの感染防止対策の徹底が必要だ。避難先を分散させるため、ホテルなど宿泊施設も十分な数を急ぎ確保すべきだ。食料などの支援物資を早急に届けるとともに要望も把握し、避難所以外にいる被災者にも目配りするなど、きめ細かな対応が求められる。

 農業被害は調査が始まった段階で、豪雨も続いている。全容判明には時間がかかるとみられるが、記録的豪雨の多発と範囲の広さから相当大きくなりそうだ。被害が離農につながらないようにしなければならない。

 九州北部は17年の豪雨被害からの復旧途上だった。3年たっても福岡県朝倉市では農業関連の工事は3割しか終わっていない。防災工事が優先され農地は後回しになっている。今回の豪雨が追い打ちをかけた形だ。

 河川の氾濫で水田は冠水し、ハウスはつぶれ、農機が流されている。再整備は大きな負担となる。土砂崩れで園地ごと流された果樹は改植が必要だが、収穫までの無収入の期間を乗り越えなければならない。畜産・酪農も家畜導入や牛舎の整備には資金が必要だ。農家の営農と生活、そして生産基盤を守るため、大規模・担い手だけでなく、高齢農家や中小農家も再起できる支援をすべきだ。支援策に規模拡大などの条件を付ければ高いハードルとなる。激甚災害の指定も急ぐべきだ。

 日本農業新聞が報じたように農家は被害の大きさに途方に暮れている。熊本県の畜産農家では、川からの濁流が畜舎に流れ込んだ。「夢んごたる(夢のよう)と思ってもこれが現実。考えられないことが起こった」とのつぶやきに驚きと悔しさがにじむ。復旧・復興への道筋を早期に示し、支援に際しては被災者に寄り添うことが重要だ。

 梅雨前線はまだ日本列島に停滞する見通しだ。雨がやんでも土砂崩れが起きたりする。命を最優先し、注意と準備を怠らないようにしてほしい。

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