1週間後に決まる今年上半期の芥川賞、直木賞に興味が尽きない

 1週間後に決まる今年上半期の芥川賞、直木賞に興味が尽きない。文学を巡る思い出と重なる▼まずは芥川賞候補の一人、劇作家・石原燃(ねん)さん。何とあの太宰治の孫である。太宰と芥川賞の因縁は深い。85年前、1935年の第1回芥川賞で太宰は惜しくも受賞を逃す。酷評したのは後にノーベル文学賞に輝く川端康成で、激高した太宰は「刺す」とさえ書く。文豪・佐藤春夫は「芥川賞の季節になると、いつも太宰治を思い出す」と述懐した▼直木賞候補は実力者がずらり。今村翔吾さんの『じんかん』は戦国三大梟雄(きょうゆう)の一人、松永久秀の新たな歴史像に光を当てた。NHK大河「麒麟(きりん)がくる」でも明智光秀と絡む武将で、従来の「極悪人」イメージを一新する。著名の〈じんかん〉は漢字で書けば〈人間〉。人と人とが織りなす間で、世の中を指す▼同じ直木賞候補の澤田瞳子(とうこ)、馳星周両氏にも注目したい。澤田さんはこの間、天才絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)らを題材に史実を掘り下げ新たな解釈を表す。個人的には、馳さんのデビュー作『不夜城』に衝撃を受け激しい文体にしびれた。今回の候補作『少年と犬』では新境地を切り開く▼きのう選考会会場となる東京・築地の料亭「新喜楽」に出掛けた。長い歴史を刻む建物は、隠れ家的で文学の香りも漂う。
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは