コロナと都市農業 多様な役割見つめ直す

 新型コロナウイルス禍で都市農業の役割が見直されている。暮らしの在り方を見つめ直す中で、直売所や体験農園など身近な農に触れる機会が増えたことが大きい。都市農業の価値を評価し、理解と共感を広げよう。

 農水省が5月に行った「都市農業に関する意向調査」によると、8割近い人が「保全すべき」だと答えた。昨年の同調査を5ポイント上回る結果となった。近年、「保全すべき」だとするが7割程度で推移してきたが、今年は過去最高水準となった。しかも大都市部で身近に都市農業がある地域ほど「保全すべき」だとの意識が高くなっている。

 アンケートの対象は三大都市圏の住民2000人。調査時点が緊急事態宣言下ということもあり、コロナ禍の中で都市農業が果たす役割について聞くと、半数が「役割が高まっている」と回答した。こうした関心の高まりが好結果につながったと言えよう。

 同省は「新型コロナウイルス感染症への危機感から、直売所などを通じて食料供給の大切さを実感した結果ではないか」と分析する。それだけでなく、もっと根源的なところで、食と農への危機感が都市住民の中に芽生えたのではないか。

 新型コロナは私たちの生活様式を大きく変えた。緊急事態宣言下では外出や会食などの自粛を余儀なくされた。そして感染再拡大の中で「3密」を避ける働き方や暮らし方は定着した。

 グローバル経済全盛の中にあって、自由貿易や、輸入原料に依存する食品産業のサプライチェーン(供給網)が、コロナ禍の前では極めてもろいことも分かった。しかも、コロナ禍で需要を失った多くの農畜産物や生産者の窮状を目の当たりにした。普段の食生活が、生産、加工、流通、飲食業など多くの人たちに支えられていることにも思い至った。

 いつもは仕事に忙殺されている親たちが、家庭や地域に目を向けたことも大きい。花や野菜の苗を買い求め、子どもたちとベランダ菜園を楽しむ。体験農園で汗を流す。直売所巡りで新鮮な地元野菜に出会う。オンライン通販で「応援消費」をする。さまざまな出会いや気付きが、農へのまなざしをより深く、豊かにしたのではないか。

 もう一つ注目すべきなのが、都市農地の持つ防災機能だ。震災時の避難場所や仮設住宅建設用地などの役割を担う。このため自治体との間で防災協力農地の協定を結ぶ取り組みが進んでいる。今回の調査でも都市住民の8割がこうした取り組みの必要性を認めている。災害が常襲する時代にあって、防災空間としての都市農地の役割が再評価されていると言えよう。

 都市農地を保全し利活用するための法制度や税制も整備され、農家の営農意欲も高い。農と住の調和の取れた街は人間らしい暮らしを約束し、非常時にも強い。ウィズコロナ時代の街づくりのヒントがここにある。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは