来年分の収入保険 農業経営守る選択肢に

 農業収入の減少に備える収入保険が、加入申請の時期を迎えた。同保険は、新型コロナウイルス感染の影響による農業経営への損害にも対応できることから、関心が高まっている。経営と生活を守るセーフティーネット(安全網)の一つとして検討する価値がある。

 農家経営の公的安全網の代表例としては農業共済制度が知られる。風水害や病虫害などによる収量減・品質低下に備えた農作物共済や果樹共済、台風などによるハウス損壊などに備えた園芸施設共済、家畜の死傷病に備えた家畜共済などだ。

 だが、コロナ禍による被害の救済は難しい。外食の休業や学校休校、イベント自粛で農産物が販路を失ったり、売り上げが減少したりする被害は想定していない。こうした事態にも対応できるのが収入保険だ。

 同保険は農業経営の安定へ農水省が2019年に創設した。全ての農産物が対象で、青色申告をする農家が加入できる。保険料や積立金を払い、1年間の収入額が基準の9割を下回った時に、下回った額の9割を上限に補填(ほてん)。災害時に加え、コロナ禍や盗難、けがや病気などによる収入減を幅広くカバーする。1年目は2万2812経営体が加入し、保険金は3049件、72億円が支払われた。

 4月時点の加入者は3万4723件で、青色申告農家46万人の1割に満たないが、コロナ禍を契機に関心が高まり、状況は変わりつつある。収入保険への加入促進・支援の動きが活発化し始めている。

 静岡市と地元2JA、静岡県中部農業共済組合は7月、来年度までに300経営体の加入目標を掲げ協定を結んだ。農家負担の軽減へ保険料に市とJAが最高6万円補助する。群馬県館林市は保険料に5万円補助する。今年度は継続加入を含め50人の加入を目指す。「コロナにも対応する保険だ。農家負担を抑えることで加入を増やし経営を守ってもらいたいと考えた」と市の担当者は強調する。

 埼玉県や山形県では県や農業共済組合、JAが収入保険の推進組織を設立。農業共済組合やJAが協定を結ぶ例もある。

 また同省は、JAなどの要望を受け、21年1月から収入保険に初加入する場合、野菜価格安定制度との同時利用を特例で1年間できるようにするなど、加入促進の機運が高まっている。

 収入保険の保険期間は個人の場合1~12月(法人は各事業年度)で、来年1年間に備えたい人の申請は新規加入の場合、12月に締め切られる(継続加入は11月まで)。希望者は、過去の収入データを用意するなど準備を始める必要がある。

 リスクの時代である。コロナ禍も長期化が懸念される。作物や販路の見直し、衛生管理の徹底、さらに経営の安全網も準備すれば安心だ。自分が感染し収入が減ることもあり得る。「まさか」ではなく「もしも」の時を考え、備えることが肝要だ。

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