パラレルノーカー 農への携わり方 多様に

 JAグループ北海道が、「パラレルノーカー」という農業への携わり方を提唱している。別の仕事をしながら農業も行う人のことで、農業ファンの裾野を広げるのが狙いだ。地元産や国産を選ぶ機運が高まり、将来的に農業の担い手になる可能性もある。食料自給率向上へ全国的な運動の展開につなげたい。

 新型コロナウイルスの感染拡大を契機にJAグループ北海道は、消費者と農業、農家がつながる行動を「アグリアクション北海道」として展開。パラレルノーカーの提唱はその一環だ。

 複数の仕事を持つ働き方を意味する「パラレルワーカー」にちなんだ造語である。「半農半X」だったり、農業を少し手伝ったりするなど農業との多様な関わり方を広げる。農家には、受け皿となるよう働き掛ける。

 中国からの輸入が大半だったマスクが、コロナ禍で一時品薄になった。農作物をマスクになぞらえ、食料の国内生産の重要性や地産地消の意義について認識が広がった。都市の脆弱(ぜいじゃく)性も浮き彫りになり、人口密度が低く食料も生産できる農山村への関心が高まった。マスクは店頭に並んでいるが、食料の国産回帰の動きを一過性にしてはいけない。コロナ禍の教訓を新たな社会づくりに生かす必要がある。

 パラレルノーカーの提唱はその一歩である。「食料自給率を高めよう」と言葉だけで呼び掛けても、行動に移す人は少ないだろう。消費者らと農業・農村との接点を増やし、関係を育むことがまずは重要だ。それは、地域に根付いて生きる農家と出会い、話すことや、美しい棚田や広がる田畑を見て、触れることから始まる。自らの食の見直しにもつながる。こうした小さな歩みの積み重ねが、自給率の向上に結び付く。

 政府は、新たな食料・農業・農村基本計画に、副業や兼業による農業など、多様な働き方を支えることを明記。実態調査も始めた。パラレルノーカーの提唱が、農業専業地帯の北海道で始まったことの意義は大きい。中山間地域だけでなく、大規模農業地域でも農業・農村の多様な支え手が求められていることを意味する。同計画が掲げるように、産業政策と地域政策を車の両輪として推進する必要性を物語る。

 旭川市の30代の女性は、自らをパラレルノーカーと言う。デザイナーをしながら、夫が営む農場を時々手伝う。知人や移住者も好きな時に来て農作業を行う。「農家、消費者と切り分けるのではなく、多様な人が関わる農業ってすてき」と笑顔だ。

 新型コロナ対策でテレワークなど多様な働き方が広がった。地方移住への関心も高まっている。自治体や、JAなどの関係団体が、農業へのさまざまな関わり方を提案する好機だ。「農業をする時代から、農業もする時代へ」。多様性と持続性を軸としたポストコロナの時代を、農から切り開きたい。

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