木材自給率の向上 振興へ国民理解不可欠

 国内の木材自給率は9年連続で上昇し、2019年は38%になった。安定供給が可能になったことなどが要因だ。伐(き)る・使う・植える・育てるといった循環が、地球温暖化の防止など森林の多面的機能の発揮につながる。自給率向上への国民理解を広げ、成長産業化と山村の振興を進める必要がある。

 木材自給率は9年間で10ポイント超高まった。戦後に造成された人工林が出荷適齢期を迎え供給量・価格の両面で安定取引されるようになったためだ。国産材利用量は19年が3100万立方メートルで5年前より3割増えた。

 木材の関税は、丸太と製材の大半が1964年までに撤廃された。合板・集成材も段階的削減で10%以下となった。林業を生活の糧にしていた山村は疲弊し自給率は02年に19%まで落ち込んだ。しかし、輸入材の価格は為替に大きく左右され、現在は国産材とほぼ拮抗(きっこう)しているという。加えてロシアや東南アジアなど主要な対日輸出国が伐採制限や国内の資源管理を厳格化したことで、輸入量は年間5000万立方メートル(丸太換算)前後と、ここ数年は頭打ちだ。

 建築用途が多様化したことも手伝って国産材に注目が集まり、自給率は回復を遂げた。カロリーベースの食料自給率と肩を並べることになった。

 森林は温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収し、木材を住宅や家具などに使えば炭素を長期間、貯蔵できる。生物多様性の保全や土砂災害の防止、水源のかん養、保健休養の場の提供などの役割も果たす。

 しかし林業も多くを小規模・零細な経営体が支える。山林を3ヘクタール以上持ち、継続して林業を行うなどの林業経営体は15年が約8万7000。そのうち9割が家族経営だ。林業の再生に向け、政府は森林環境税の導入や放置された森林の集約化などを進めているが、高齢化と慢性的な担い手・人手不足といった課題の解決に至っていない。

 国産材利用の機運は高まっているとはいえ、新型コロナウイルスの影響を受けている。景気の低迷は住宅建設にも波及。木造新築住宅の着工数は今年に入って毎月3万5000~4万戸と、前年を1割下回るペースが続く。国産材にとって最有力の仕向け先だけに、需要の視界は良好とはいえない。

 政府・与党は、森林・林業政策の指針となる新たな森林・林業基本計画の策定に向けて論議を始めた。おおむね5年ごとに見直し、来年6月ごろに閣議決定する。農業と同様、林業の成長産業化と地域の再生を両輪で進めることが重要だ。山村では農業も営まれており、地域資源の活用による就業機会の創出と所得の確保、生活環境の整備などで共同歩調は欠かせない。

 国産材の利用拡大には、その意義について国民理解が重要だ。東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場は全国から木材を集めて造っている。理解醸成に生かしたい。
 

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