エゴマに高抗酸化力 そば粉、玄米、黒大豆も 富山県食品研34品目を調査
2021年03月04日

富山市で栽培されたエゴマ
富山県農林水産総合技術センター食品研究所は「県内産農産物の抗酸化力評価」をまとめ、3日の研究発表会で説明した。調査した県産34品目の中で「生のエゴマの葉」が最も高い数値が出た。実際には調理して食べることを想定し、品目ごとに加熱や保存した場合の抗酸化力の変化も示しており、県産の販売促進や消費者の利用拡大に役立てる。
体を酸化させる活性酸素は、さまざまな病気の発症に関係しているとされる。「抗酸化力」が人体にもたらす効果は研究途上だが、活性酸素の害を防ぐ役割が期待されている。健康志向の高まりを受けて食品研究所は、2012~19年度にわたり、県内の農産物や加工品34品目の抗酸化力を、ORAC法と呼ばれる測定方法で分析した。
ORACは「活性酸素吸収能力」と訳される指標。ポリフェノールやビタミンCなど水溶性抗酸化物質が関係する数値と、ビタミンEなど脂溶性抗酸化物質が関係する数値をそれぞれ測定して合算し、抗酸化力を評価した。34品目のうち、生のエゴマの葉は119と格段に高い数値が測定された。エゴマはシソ科の一年草で、富山市が特産として力を入れている。えごま油も53と高い。
他に高い値が出たのは、そば粉(品種は「信濃1号」)の90、玄米(「富山赤78号」)81、乾燥した黒大豆(「丹波黒」)77、ユズ果皮70、バタバタ茶葉69、生のブルーベリー57など。米みそは4社で調べたところ45~51と比較的高かった。
詳細は食品研究所のホームページで公開し、加熱や保存による抗酸化力の変化も紹介している。発表会場でも関心は高く、「食べるときの分量を考慮するのも大事ではないか」などと質問や意見が相次いだ。
体を酸化させる活性酸素は、さまざまな病気の発症に関係しているとされる。「抗酸化力」が人体にもたらす効果は研究途上だが、活性酸素の害を防ぐ役割が期待されている。健康志向の高まりを受けて食品研究所は、2012~19年度にわたり、県内の農産物や加工品34品目の抗酸化力を、ORAC法と呼ばれる測定方法で分析した。
ORACは「活性酸素吸収能力」と訳される指標。ポリフェノールやビタミンCなど水溶性抗酸化物質が関係する数値と、ビタミンEなど脂溶性抗酸化物質が関係する数値をそれぞれ測定して合算し、抗酸化力を評価した。34品目のうち、生のエゴマの葉は119と格段に高い数値が測定された。エゴマはシソ科の一年草で、富山市が特産として力を入れている。えごま油も53と高い。
他に高い値が出たのは、そば粉(品種は「信濃1号」)の90、玄米(「富山赤78号」)81、乾燥した黒大豆(「丹波黒」)77、ユズ果皮70、バタバタ茶葉69、生のブルーベリー57など。米みそは4社で調べたところ45~51と比較的高かった。
詳細は食品研究所のホームページで公開し、加熱や保存による抗酸化力の変化も紹介している。発表会場でも関心は高く、「食べるときの分量を考慮するのも大事ではないか」などと質問や意見が相次いだ。
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いただきまーす あさくら味噌(みそ)汁 福岡・JA筑前あさくら
福岡県のJA筑前あさくら特産の「博多万能ねぎ」、大豆「フクユタカ」をはじめ地元農産物などを使って手作りしたみそ汁。湯を注ぐと、「博多万能ねぎ」とみそが織りなす香りが食欲をかき立てる。「忙しい朝や弁当の一品にうれしい」と人気。2020年度県6次化賞品コンクールで福岡県農業協同組合中央会会長賞となった。
1袋5個入り500円。JA農産物直売所「きばる」や「JA FARMERS 旬菜ひろば とまと」、JA管内Aコープ各店、楽天サイト「JA筑前あさくら旬菜広場」などで販売中。(福岡・筑前あさくら)
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2021年04月19日
きょうは「雨生百穀」の穀雨
きょうは「雨生百穀」の穀雨。この時季に降る雨は、作物を育て恵みをもたらす。事前に種まきを済ませておくといいそうだ。しかし2010年の宮崎県では、時候のあいさつをしている場合ではなかった▼〈牧場が戦場となる現実を挨拶(あいさつ)として一日始まる〉。同県の歌人伊藤一彦さんが当時を詠んだ。家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)が発生し、この日を境に県内の畜産関係者は、戦場さながらの闘いを余儀なくされた▼殺処分で埋却などをされた家畜は30万頭近くにもなる。〈親と子は同じリボンを付け置きて一緒に埋むるを頼むもゐたり〉。同じく伊藤さんの歌。せめて親子を近くにという農家の心情が伝わる▼国内では今も豚熱や高病原性鳥インフルエンザといった感染症が発生し続けている。この経験を風化させず、知恵を語り継がなければならない。千葉県旭市で養豚管理獣医師を務め、地域の防疫体制づくりにも取り組む早川結子さんは、防疫で人間側の最大の武器は、人と人がつながって生まれる集合体としての「知」なのだという▼一人一人は小さな存在でも、知恵を集め共有し、語り継げば大きな力になる。穀雨の恵みを受けるように、あらかじめ知恵の種を集め、まいておかないと、地域防疫の体制は育たない。
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2021年04月20日
評価低い「菅農政」 現場の声 反映が不可欠
菅義偉内閣の支持率が続落している。日本農業新聞の農政モニター調査では、菅政権発足時の期待が、半年で失望に変わりつつある様子が見て取れる。米の需給緩和など直面する課題への対応が不十分と見られている。農政展開に当たり、生産現場の声を丁寧に聞くことが求められる。
調査は農業者を中心に3月中・下旬に行った。内閣支持率は40%で、昨年12月の前回調査に比べ4ポイント減った。政権発足当初の9月は6割を超えていたが、2調査連続で下落。支持理由は「他にふさわしい人がいない」が最多の34%で、次いで「自民党中心の政権だから」が27%、「菅首相を信頼する」が23%だった。
前回と比べて特徴的なのは「首相を信頼」が9ポイント減る一方、「他にふさわしい人がいない」という消極的な支持が6ポイント増えた点だ。「農家の長男坊だ」と地方重視の姿勢をアピールした首相に当初は農家の期待も膨らんだが、半年でしぼみつつあるようだ。
支持率低下の理由では、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず農業にも影響が出ていることや、元農相による収賄事件や総務省幹部の接待問題といった不祥事が相次いでいることなどが考えられる。加えて調査では「菅農政」への評価の厳しさが目立つ。
菅内閣の農業政策を評価する人は25%にとどまる。評価しない人は56%で、前回より11ポイントも増えた。今回「分からない」と答えた人は19%で、前回から10ポイント減ったことを考えると、評価を決めかねていた人が、評価しない方向に移ったことがうかがえる。
調査の自由記述には、率直な声が上がる。首相肝いりの農産物輸出拡大には「現場目線に欠け、2030年の輸出額5兆円も妄想」と、手厳しい。「大規模経営、スマート農業に偏重し過ぎ」との意見も多い。昨年見直した食料・農業・農村基本計画には、中小・家族経営への政策支援を明記したが、実際の農政運営では実感できず、不満となって表れているようだ。
コロナ禍や米の需給緩和により「市場での野菜の価格が安過ぎる」「米価下落で農地の保全が大変な状況になる」と、農業経営や地域農業への影響を心配する声も上がる。米の転作支援策では「(施策の見直しに)振り回されている感が否めない」との指摘もあった。生産現場の実態や課題をよく見るよう政府に求めていると言える。
調査では、新型コロナの感染拡大で打撃を受けた農業経営への対策を「評価しない」が57%で、転作支援など米の需給緩和を受けた対策は「効果がない」も57%だった。
「地方重視」を実感できるよう、生産現場の声に基づく政策を積み重ね、着実に成果を上げることが重要だ。
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2021年04月19日

EC和牛ギフト活発 花と合わせ華やかに 花束に見立て楽しく
5月9日の「母の日」に向け、ギフト用の和牛を提案する動きが電子商取引(EC)市場で活発化している。花とのセットや肉を花に見立てた商品など、各社が趣向を凝らす。今年は8割が「母の日」の贈り物をECサイトで購入するとのアンケート結果もあり、商機が広がっている。
黒毛和牛のギフト専門ECショップ「evis meats」は、和牛肉と生花をギフトボックスに詰め合わせた商品を売り込む。「箱を開けた瞬間のサプライズだけでなく、花を飾ることで食卓も華やかに彩れる」とアピールする。
肉の部位はイチボ、モモ、サーロインなど6種類から選べる。価格は1万3360円で、肉の量は部位ごとに異なる。同店は1月にオープンし、完売も相次ぐなどギフト用の和牛が好評という。
焼き肉店などを運営する翔山亭(東京都千代田区)は、和牛肉を花束に見立てた「肉フラワーギフト」を自社ECサイトで販売する。渦状に巻いた肉が、バラの花びらのように見えるのが特徴だ。「店舗以外でも和牛を楽しんでもらえるよう、ギフト開発に力を入れている」(同社)。
霜降り肉と赤身など3種類を組み合わせた「愛」(250グラム)が6000円、「優」(400グラム)が9000円。
日本最大級の取り寄せ情報サイト「おとりよせネット」のアンケートによると、今年は77%がネット通販で「母の日」のプレゼントを購入すると回答。百貨店などの実店舗は減少傾向となった。「生活スタイルが変わり、行動が制限される中、対面の機会が少ない『ギフト通販』を利用する人が定着してきた」と指摘する。
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2021年04月21日

魅力満載の動画配信 特産をラップで称賛 長野県職員
「信州長野は日本の屋根」「南は市田柿 ガキには分からない粋な味」。長野県庁に勤める若手職員4人からなる「WRN」は、ラップで若い世代に農や自然、地域の魅力を伝える。歌詞には特産のリンゴやブドウ、キノコなどの農産品が登場する曲もある。(藤川千尋)
カラス対策も曲に
グループ名の「WRN」は「We Respect Nagano」(長野県を誇りとする)の頭文字を取った。鳥獣対策・ジビエ振興室の宮嶋拓郎さん(31)がリーダーを務める。この他、森林づくり推進課の服田習作さん(31)、ゼロカーボン推進室の三村裕太さん(32)、上田保健福祉事務所の井出伊織さん(33)がメンバーだ。
きっかけは2015年ごろ。当時、県飯田合同庁舎に勤めていた宮嶋さん。若手農家の交流会を企画し、県のホームページに告知を出したものの人が集まらなかった。痛感したのは、地域の魅力や県の取り組みが、伝えたい人に届いていないこと。「世の中に関心を持ってもらう伝え方が必要」と考えた。
当時流行していたラップに注目。同じ庁舎で働いていた服田さん、三村さん、井出さんに声を掛けて活動を始めた。
現在はライブを企画したり、制作したミュージックビデオを動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したりするなどして活動する。
3月に投稿した「Night Veil」は、県が約40年ぶりに実施したカラスの生息調査を基に作った。農作物を荒らすカラス対策の曲だ。歌詞では「ついばむ 放置果実」と、摘果などで畑に捨てられた果実がカラスの冬の餌となることを強調。「生き延びるための餌残さない 対策そういう 意識共有」と呼び掛ける。
4月中旬に業務で参加できなかった井出さんを除いたメンバー3人が、長野市の戸隠神社や新潟県内の川や海で新曲のミュージックビデオを撮影した。新たな楽曲で発信したいのは「山や森林を大切にすることは田や畑へ豊かな水を供給すること」であり、「海の生態系の保全につながること」だ。
宮嶋さんは「ラップを通じて、若い世代に農や地域の魅力を伝え、盛り上げていきたい」と話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=PnTYAjVzOr4
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2021年04月21日
営農の新着記事
集落営農・農業法人 米価下落に危機感 大規模ほど厳しく 6割「転作に余地」 本紙調査
集落営農・農業法人の9割が2021年産米価格は下落すると見通していることが、日本農業新聞の調査で分かった。近年にない厳しい見方が広がる一方で、主食用米の需給均衡に必要な転作拡大の機運は高まっていない。収入面の課題から、転作強化に踏み切れない実態も浮かび上がる。
調査は3月中・下旬に郵送で実施。……
2021年04月22日

仏製マシンが四角く牧草ラッピング 積み上げ隙間なく 福島の佐久間牧場
直方体に束ねられた450キロの牧草を持ち上げた4本のローラーが、まるでお手玉を転がす指先のように動く──。福島県葛尾村で乳牛180頭を飼養する農業法人の佐久間牧場で、牧草を保管するため仏製のラッピングマシンが活躍している。
機種はKUHN(クーン)社製の「ラッピングマシーンSW4004」。ロールベール兼用の機種で、直方体に包装すれば、隙間なく重ねられ集積場所の節約になる上、輸送の利便性も高い。
油圧スライドシステムを採用しており、常に前進方向での作業が可能。移動時は幅2・5メートルになるため、代表の佐久間哲次さん(45)によると「狭い場所での移動も気にならない」という。
佐久間牧場では、年間で牧草を約360個使う。カラスに突かれても穴が開かないよう、同牧場では12層に巻く。それでも牧草1個にかかる時間は40秒ほどだ。
佐久間さんは「後継者が少ないのは、酪農に限らず農業全体の悩み。機械化で労働の省力化を進め、農業と縁がなかった人たちにも興味を持ってもらえたら」と話す。
販売元の日本ニューホランドによると、スクエアタイプの機種は、大規模な牧草地が広がる北海道では他社製品も含め使用例があるが、本州での運用は珍しいという。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=W-e1D5tHLU8
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2021年04月21日

脚立転落事故防げ レバー式開き止め 操作簡単、後付け可 農研機構
農研機構は、果樹などで使う脚立の転落事故を防ぐため、開き止め装置を考案した。指先のレバー操作により従来の半分以下の時間で、開き止めの解除とセットができる。既存の脚立に後付けできる点も特徴だ。試作品を使って改善しながら商品化を目指す。
脚立は果樹園で広く利用されているが、落下などの事故が多発している。農家の場合、はさみを持って上ることが多いので、転落すると重大事故につながることがある。
農研機構・革新工学研究センター(現・農業機械研究部門)は、誤った脚立の使用が事故につながっている可能性があるとして、リンゴ、ミカン、柿の農家で使用実態を調査。誤使用をしている作業者は95%に上った。
特に、開き止めを緩んだ状態で使っていた例は68%。使っていない人も14%いた。
果樹園では脚立を移動のたびに地形に合わせた後支柱の角度の調節が必要。開き止めのチェーンをぴんと張った状態に掛け替えるのに手間がかかることが誤使用の原因と捉え、チェーンに代わる開き止め装置を考えた。
装置は、三脚型脚立のはしご側の頂上部分と後支柱をL字形に結ぶ構造。連結部に入れたラチェット機構で後支柱の自由な開閉と開き止め機能を両立させた。ラチェットは歯車と歯止めの爪を組み合わせ、片方にだけ回転させる機構。逆に回すときは爪を外す。
実際に10人に使ってもらったところ、開き止めの調節にかかる時間は、チェーン式を56%短縮できた。「開き具合の調節が面倒でない」「こつが分かれば使いやすい」などの評価が聞かれた。開発チームでは使い勝手を試しながら、軽量化や耐久性の改善をしていく。
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2021年04月19日

和牛 世界に向け発信 動画150万回再生 JFOODOの動画話題
和牛の魅力を台湾、香港の消費者に発信しようと、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が作成した動画「和牛100%.TV」が話題だ。タレントの照英さんが産地を巡り、和牛のおいしさの秘密に迫る内容で、「日本和牛こそが他国産WAGYUとは異なる本物の和牛であることを効果的に伝えたい」と狙う。
山形、滋賀、宮崎、鹿児島の生産者らが登場する産地編と、おいしい食べ方を紹介するクッキング編の計8本を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開し、合計再生回数は約150万回に上る。特に産地編の再生回数が多く、日本の和牛生産への関心の高さがうかがえる。
各回とも5分ほどの動画で、生産者の和牛に懸ける思いや、徹底したトレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)などを紹介。宮崎編では、輸出向け認定施設として和牛の食肉処理などを手掛けるミヤチクや、宮崎県立高鍋農業高校の生徒らが出演する。
台湾、香港向けの字幕付きだが、音声は日本語のため、国内の消費者も楽しめる。飼料の工夫や、子牛ごとに与える乳量を管理できる哺乳ロボットの活用など、各生産者の飼養管理も学べる。
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2021年04月18日

酪農家向けに点検表 働き方改革を簡易診断 日本生産性本部
日本生産性本部は、日頃の作業に安全性への配慮が足りない部分や、無駄がないかをあぶり出す酪農家向けの「チェックリスト」を開発した。列挙した「やってはいけないこと」が自身の経営にどれだけあるか確認していけば、改善すべき部分が分かる。今後セミナーなどで使い方を説明し、問い合わせがあれば無料で提供する。
「カイゼン」を応用
同本部は企業の人材育成やコンサルティングを手掛ける。……
2021年04月16日

東日本各地で凍霜害 雌しべ枯死広範 山形・サクランボ
先週末の関東から東北にかけての広い範囲で発生した冷え込みの影響で、果樹を中心に各地で凍霜害が出ている。特に国内生産量の7割を誇る山形県のサクランボでは広い範囲で雌しべが枯死し、作柄への影響が懸念されている。
山形県天童市の大町さくらんぼ園では「紅秀峰」を中心に被害を受けた。武田章代表は「近年ない規模での凍霜害。生育が前進し、花が咲きかけていた」と話す。防霜ファンを回したが、氷点下4度近くまで冷え込み、被害が避けられなかった。「昨年はコロナ、今年は凍霜害と生産者にとっては厳しい年が続く」と嘆く。
十分な対策も…サクランボ直撃 想定外の低温 肩落とす
全国随一のサクランボ産地である山形県では、低温による凍霜害で、生産者が悲鳴を上げる。白い花の中、緑色に伸びているはずの雌しべが茶色に染まり、枯死が相次いで確認された。産地は残る雌しべを守り、確実に受粉できるように対策を呼び掛ける。(高内杏奈)
残った雌しべ「受粉確実に」
出荷量が上位の東根、天童、寒河江の各市では、3月から気温が高く降水も少なかったため、サクランボの発芽は平年より5日程度早まっていた。10日から11日未明にかけて最低気温がマイナス4度近くに下がり、長時間の低温が影響。開花直前という最も霜に弱い時期に低温・降霜が重なり、被害が相次ぐ事態となった。
JAさがえ西村山の秋場尚弘さくらんぼ部会長は「ここまで気温が下がるとは思わなかった」と肩を落とす。秋場部会長は、約50キロの収穫を見込む木で雌しべの枯死を確認。「収量は半分あるかどうか心配。ここしばらく日中の気温も低い。例年は15度程度だが、10度を下回る日が続いている。今夜も心配で眠れそうにない」と打ち明ける。 県全体の雌しべの枯死率は主力「佐藤錦」が20~60%、大粒の晩生「紅秀峰」は40~80%に達する。特に「紅秀峰」は晩生ながらも他品種より発芽が早いため、降霜の打撃を大きく受けている。
凍霜害対策として、樹上からマイクロスプリンクラーなどで連続散水し、凍るときに放出する熱を利用する散水氷結法がある。東根市で1・2ヘクタール栽培する岡崎貴嗣さん(47)はこの方法で対策を立てていたが、それを上回る低温で雌しべの枯死が確認された。
同市は昨年、新型コロナでサクランボ狩りに来る観光客が激減した。だが、ふるさと納税などで着実にファンを獲得してきた。岡崎さんは「来年も買うと言ってくれた消費者を裏切らないよう、残った雌しべの受粉を確実にしたい」と人工授粉の徹底で着果率を高めることを誓った。
JAさがえ西村山は14日に緊急会議を開いて被害状況を把握。生産者に、ちらしなどで凍霜害対策と人工授粉の徹底を呼び掛けることを確認した。
福島県では梨や桃などの果樹とアスパラガスで被害が出た。長野県では、11日現在で10市3町2村の農作物被害が、2億4220万円に上った。松本地域ではリンゴや梨などの果樹やアスパラガスに被害が出た。
栃木県によると、13日現在、梨で約5億4938万円の被害が発生。芳賀町や高根沢町など3市3町で花への低温障害が生じた。群馬県でも14日現在各地で梨、リンゴ、柿、サクランボの花が枯死する影響が出た。
新潟県内では新潟市など9市町で果樹の凍霜害が発生。13日現在、梨を中心に西洋梨や柿、桃など約400ヘクタールで花芽の褐変が確認されている。
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2021年04月15日

疑似グルーミング装置使用 子牛の体重2割増 農研機構
農研機構は、母牛の毛繕いを再現できる電動回転ブラシ「子牛用疑似グルーミング装置」を使うと、使わなかった子牛に比べて体重の増加率が2割高かったと明らかにした。群飼育移行時の生存率も高かった。同機構は「乳用牛に比べて誕生時の体重が軽い黒毛和種は肺炎や下痢などの影響が大きい」として、肉用牛の繁殖農家でのメリットを説明する。
ナイロン製のブラシは長さが40センチ、直径17センチの円柱状で、牛舎の柱などへ子牛の体高に合わせた位置に取り付ける。牛がブラシに体を押し付けるとスイッチが入ってモーターが毎分30回転し、体を離すと止まる。
農研機構が開発し、2016年から農家での実証を続ける。同機構畜産研究部門の矢用健一主席研究員によると、これまでの実証で黒毛和種の生後3カ月間12頭1群で飼った場合、ブラシを使用した牛は、使用しなかった牛と比べて体重の増加率が23%向上。群飼育移行時にブラシを使わなかった牛は10頭残存したが、ブラシを使うと11頭残った。試験では子牛1頭が1回約1分で、1日20分ほど装置を使っていた。
養牛農家では、母牛の発情を早く促すために生後1週間ほどで子牛を母牛から離して飼育する。子牛は母牛に体を毛繕いしてもらう「グルーミング」を受ける機会が減ると、ストレスになる恐れがあるという。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=yswKRrjaVxs
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2021年04月14日
消石灰のコンクリ散布 効果発揮には「水まき」必須 室蘭工業大
室蘭工業大学は、家畜疾病の原因となる細菌やウイルス対策に使う消石灰について、消毒効果を得るには水分が15~20%程度必要だと突き止めた。土に散布する場合は直接散布で使えるが、乾燥したコンクリートには消石灰20キロ当たり3~4リットルの水を散布すべきだとした。消毒効果の持続期間は屋外で2週間から1カ月で失われることも確かめた。
研究は口蹄疫(こうていえき)や豚熱、鳥インフルエンザの対策として……
2021年04月13日

緑肥作物でリン酸減肥 キャベツ、ニンジン2割 ソルガムのすき込み有効 千葉県農林総研センターが実証
千葉県農林総合研究センターは、冬取りキャベツと秋冬ニンジンの作付け前に緑肥作物を栽培してすき込むと、元肥のリン酸を2割ほど減らせることを確認した。土壌微生物中のリン酸が増え、リン酸の吸収量が増えたとみる。有機物の補給効果で、土づくりにもつながると期待する。
冬取りキャベツの作付け前にすき込むために、5月下旬から6月上旬に緑肥作物のソルガムを播種(はしゅ)し、8月にすき込む。……
2021年04月09日
農機 交通死亡事故減らず 8割単独、誤操作が主因 昨年23件
トラクターなど農耕作業用自動車が絡んだ交通事故のうち、死亡事故はほとんど減らず、横ばいで推移していることが警察庁の集計で分かった。死亡事故の8割が単独事故で、その要因はハンドルなどの「操作不適」が7割を占めた。警察庁は農水省と連携して確実な運転操作や、シートベルトとヘルメットの着用などを呼び掛けている。
警察庁がまとめた「農耕作業用自動車の交通事故発生状況」によると、2020年の死亡事故は23件、重傷事故は31件。……
2021年04月08日