経済
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
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2019年12月06日

豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
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2019年12月02日

特産エダマメビールに加工 秋田・大館市 観光地域づくり法人発案
秋田県大館市特産のエダマメを副原料に使ったクラフトビール「秋田枝豆ビール」が登場した。地元の日本版観光地域づくり法人(DMO)秋田犬ツーリズムが発案し、同市産のエダマメを原料に供給。委託醸造を経て、酒類販売業のルーチェ(東京都大田区)が地元スーパーや首都圏のデパートなどで11月から販売している。同法人は同市産エダマメの知名度のアップと消費拡大を狙う。
同法人は市内の農家が朝に収穫したエダマメを仕入れ、ペースト状に加工し「田沢湖ビール」(秋田県仙北市)に供給し、ビールに醸造してもらう。後味にエダマメの風味が残るのが特徴だ。ラベルには、秋田犬がエダマメを食べているイラストを採用した。
同法人の大須賀信事務局長は「大館のエダマメは知名度がまだ低く、取引価格が伸び悩んでいる。ビールを通してブランド力を高めたい」と期待する。イベントで先行発売した際には、用意した500杯が完売するなど関心を集めた。
1瓶(330ミリリットル)700円(税別)。大館駅前の観光施設「秋田犬の里」や市内のスーパーで販売している他、東京・新宿のデパートでも扱う。今年度は5700本を販売する予定。飲食店向けに、たる詰めでの出荷も検討している。
秋田県では近年、転作作物としてエダマメの生産が盛ん。8~10月には、東京都中央卸売市場で1位の取扱量を誇る。
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2019年12月01日

世界都市農業サミット開幕 体験農園の魅力実感 5カ国が参加 東京都練馬区
東京都練馬区が主催する世界都市農業サミットが29日、同区で始まり、参加する5カ国(米国、英国、カナダ、韓国、インドネシア)の都市の行政関係者や専門家ら15人が区内の農業体験農園や観光農園、直売所を視察した。サミットは12月1日まで。
参加都市はニューヨーク、ロンドン、トロント、ソウル、ジャカルタ。都市農業の魅力と可能性を学び合い、発展の場にしようと区が初めて開いた。
参加者は区内でキャベツやネギを栽培する高橋正悦さん(68)の畑を訪問。高橋さんは「近隣の人とは直売所で新鮮な野菜を買ってもらい、良好な関係だ」と話した。
加藤義松さん(65)が運営する体験農園「緑と農の体験塾」も訪れた。加藤さんは「野菜の栽培方法を示すことで、初心者でもプロ並みの野菜が作れる」と説明した。
視察した韓国・ソウル特別市の都市農業課長は「体験農園の活性化について知見を深めたい」と述べた。インドネシア企業の植物防疫研究所長も「日本の都市で市民主体の農業が営めているのは興味深い」と、農園をカメラで撮影していた。
区の毛塚久都市農業課長は「都市の中に農地が必要という方向性は各国共通だと思う。サミットを機に世界の都市農業の発展につながれば」と期待する。
30日と12月1日に国際会議を開き、「サミット宣言」をまとめる予定だ。
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2019年11月30日
無洗米 SDGsに貢献 国連会議で東洋ライス
米の総合メーカー・東洋ライス(東京都中央区)は27日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権などに関する国際会議に参加し、同社の米の加工技術による環境や健康への貢献と、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)との関わりについて報告した。同社によると、日本の企業がSDGsについて国連で報告するのは今回が初めて。
会議は25~27日までの日程で開かれ、世界約190の国と地域から3日間で約2000人が参加した。
同社が独自に開発した「BG無洗米」の普及で、下水処理などで発生していた二酸化炭素(CO2)の排出量をこれまでに50万トン以上削減したことなどを紹介。加工過程で取り除いた米のとぎ汁成分を有機質資材として活用し、循環型農業を実現していることなども説明した。日本の主食である米に関する多様な事業を通じ、「気候変動に具体的な対策を」など、17項目を掲げるSDGsの目標のうち、14項目に寄与していることを報告した。
雑賀慶二社長は「(今回の報告を)日本の農業や米の文化が、SDGsの取り組みとつながっていることを国際社会に発信するきっかけにしたい」と話した。(ジュネーブ斯波希)
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2019年11月29日

汚泥肥料、ハウスの熱源、農業用水… “下水パワー”発揮 国交省と公共団体が推進チーム
全国各地で、下水道から発生する汚泥やメタンガス、再生水を農作物の栽培に有効活用し、ブランド化する自治体が増えてきた。国土交通省などは下水道を生かした農作物を「じゅんかん育ち」と名付け、地域と共に安全性や効果の分析、周知を行う。タマネギやニンニクなど“下水道パワー”で多様な農作物が育ち、食に大きく貢献している。
安全実証、広がる活用
汚泥や再生水の中には農業に欠かせないリンなどが含まれ、肥料にしたり、処理水を農業用水に活用したり、発生する熱や二酸化炭素(CO2)をハウス栽培の熱源として活用したりできる。下水道由来の肥料は、葉の成長を促す窒素の含有量が高いことが特徴だ。
同省は2013年から地方公共団体と「BISTRO下水道推進戦略チーム」を結成し、“下水道×農業”の普及を進めてきた。科学的に安全であることも実証されており、下水道法では現在、下水汚泥再生の努力義務が課せられる。
ただ、課題は下水道のイメージの悪さだ。そこで同省では名称を公募。現在は、人が排出した下水を作物の栽培に利用して再び生かすなど、食の循環に貢献することから「じゅんかん育ち」としてPRする。
同省によると、下水道から発生する汚泥は18年度で242万トン。そのうち肥料や土壌改良材に生かされる「緑農地利用」は14%に上る。処理水は18年度で155億立方メートル。全国各地で「じゅんかん育ち」食材が生まれている。
土壌改善、食味向上も
酪農が盛んな北海道標津町。役場は乾燥させた汚泥を農家に配布している。受け取った農家は窒素の含有量が比較的少ない牛ふんを混ぜた混合肥料を作り、牧草地の肥料にしている。同町汚泥肥料研究会によると、汚泥肥料の方が従来の化学肥料に比べて牧草の生育が良好で、窒素化学肥料の使用量も従来の3分の2まで減らすことができた。土壌中の栄養成分も増え、搾乳量の増加や肉質向上にもつながったという。
秋田県大仙市の上野台堆肥生産協同組合は、下水道由来の汚泥を発酵させた肥料「アキポスト」を製造・販売する。15年度の販売量は475トンで、全量を県内で売る。稲作を中心にそば、エダマメ、ホウレンソウなどの肥料として使われている。
アキポストを使う水稲農家の中には「米・食味鑑定コンクール」で米の味や色つやなどが評価され、5年連続で「ベストファーマー認定」を受けた農家もいるほどだ。一方で、安全性や効果の周知はさらに必要で、下水道の汚泥と聞くだけで否定的な反応をする人も少なくないという。
同組合の山岡和男専務は「適切な処理を施せば、汚泥は素晴らしい肥料になる。何より行政の後押しが必要だ」と訴える。
5ヘクタールの農地で枝豆を作る大仙市の農家、鈴木辰美さん(72)はアキポストを10年ほど利用する。「エダマメの味が良くなった気がする。糖度も上がり、甘くておいしいと評判だ」とうれしそうだ。
印象の改善や 管理周知必要
下水道資源による特産品の栽培や、循環型農業を学ぶ体験授業なども広がっている。一方で、製造方法によっては特有の臭気が気になる他、牛鶏ふんとの混合や攪拌(かくはん)する作業の手間、イメージの悪さなどの課題も残る。
東京農業大学の後藤逸男名誉教授は「国や地方自治体が農家に向けてガイドラインの作成や、効果や適切な管理方法の周知に力を入れていくべきだ」と指摘。また、再生エネルギーや下水道資源の活用に詳しい長岡技術科学大学の姫野修司准教授は「農業分野にとって下水道資源の活用は可能性のある分野。自治体やJAによる普及推進活動が必要だ」と説明する。
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2019年11月29日

SNS料理コン 知恵絞って“カボス映え” 大分県振興協議会
あなたなら何に絞る?──。大分県カボス振興協議会は27日、カボスを使った料理の投稿をインターネット交流サイト(SNS)のインスタグラムで募った「マイカボ選手権」の入賞作品を発表した。グランプリは、アカウント名「kiirokabosu」さんの「カボスバーガー」。ハンバーグ種にカボスを絞り、さらに皮もトッピングするなどカボス満載の一品だ。
選手権は、カボスの消費拡大を目指して初めて開いた。8、9月に募集し、756件の投稿があった。審査基準は、画期的なアイデアや、プロが見ても納得し“カボス映え”することなど。
カボスバーガーは、ハンバーガーと、カボスを餌に与えて育てた「かぼすブリ」のフィッシュバーガーの2種類。ハンバーグ種に果汁を絞ったことで、ふっくらジューシーでさっぱり仕上がったという。大人用はカボスのスライスも挟む。
特別審査員を務めた料理家の栗原心平さんは「カボス満載のハンバーガーだ。パティの肉汁にカボスが寄り添い、絶妙なうま味を引き出しそう」と講評した。協議会は「カボスの使い方が分からないと言われることが課題だ。受賞作品を紹介して消費拡大につなげたい」と意気込む。
準グランプリは、アカウント名「sakurazusa」さんの「桃とカボスのレアチーズケーキ」を選んだ。
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2019年11月28日

有機食品 週1回以上飲食 3割超 増やしたい1位は生鮮野菜 農水省調査
有機(オーガニック)食品が消費者に注目されている。過去1年以内に有機食品を飲食した経験のある人を対象にした農水省の調査では、「週に1回以上食べる」と答えた人が3割以上を占めた。「購入を増やしたい」品目は生鮮野菜が最多で、国産を求める割合も7割近くに上る。高い頻度で有機食品を購入する消費者がいるため、小売りは取り扱い拡充の動きを強める。
同省は8月下旬~9月上旬、1年以内に有機食品の飲食経験がある20歳以上の男女1099人を対象に、購入意向を調査した。
有機食品を食べる頻度が「ほとんど毎日」と答えた割合は5・9%。「週に2、3回」(12・1%)、「週に1回」(16・7%)と合わせ、週に1回以上食べる人の割合は34・7%に上った。年代別では「ほとんど毎日」と答えた割合が最も高かったのは40代(7・6%)だった。
家庭消費用に購入を増やしたい有機食品の品目では、生鮮野菜が59・5%と最多。続いて生鮮果実(25・8%)、パン(25・3%)、米(22・6%)だった。同省は「生鮮野菜は購入経験が多く、売り場が広がったこともあり、消費者に浸透している」(農業環境対策課)と分析する。
また、有機食品は「国産しか購入しない」「割高でもできるだけ国産を購入する」と答えた割合は米が86・2%と最多で、豆腐・納豆(77%)が続いた。生鮮野菜(67・4%)、冷凍野菜(56・6%)、生鮮果実(54・7%)と青果物に国産を求める声も強い。
有機食品のニーズに応えようと、小売りは供給体制を強化。イオングループで有機食品などの専門店を展開するビオセボン・ジャポンのスーパー「ビオセボン」は今年、6店舗を新たに構え、首都圏の総出店数を14店舗に拡充。「安全・安心な食品を求める子育て世代をターゲットに出店を増やしている」と同社。
イオンは10月、生産者の有機JAS認証取得や物流、販売を支援する提携制度「イオン オーガニック アライアンス(AOA)」を始めた。生産者の負担軽減と、青果物の安定供給を図る。
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2019年11月26日

銘柄ネギ“競演” 14府県22産地PR 千葉で全国サミット
全国各地のネギが一堂に会する「全国ねぎサミット」が23日、千葉県松戸市で開幕した。14府県22産地からブランドネギが集まり、魅力を伝えるPR合戦や直売、試食などを実施。家族連れなど大勢の人でにぎわった。安全・安心なネギの供給を続けることなどをまとめた「ねぎサミット宣言」を発表した。24日まで。
同市や千葉県のJAとうかつ中央などでつくる実行委員会が主催。同JA経営管理委員会の秋元篤司会長は「大雨後の播種(はしゅ)で芽が出にくくなるなど困難があったが、生産者の努力で出荷物がそろってきた」と強調した。
「産地PR合戦」では、各地のブランドネギの由来や味の特徴をアピール。ネギの直売の他、芋煮などの試食販売も用意した。
開催地の同市からは3種類のネギが出品された。特に矢切地域で栽培する白ネギ「矢切ねぎ」を丸ごと炭焼きにした料理に人気が集まった。上矢切●出荷組合の川村博文組合長は「台風や大雨の被害も出たが、鍋物需要の高まる時期に向け安定した出荷を続けたい」と意気込んだ。
市内から訪れた中村友一さん(32)は「青森や山形など普段手にしない産地のネギを購入した。レシピももらえたので食べるのが楽しみ」と笑顔を見せた。
同サミットは2010年から各地で開催しており、今年で10回目。次回は山形県新庄市で開催する。
編注=●は○に矢
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2019年11月24日
店頭表示 国が監視強化 市場価格 影響なし ワクチン接種豚流通
豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通が始まっていることを受け、江藤拓農相は22日の閣議後会見で、不適切表示の監視を強める考えを示した。今後、小売り段階での流通が本格化することを見据え、「店頭の動向はこれから。しっかりサーベイランス(監視)する」と強調した。
監視については、不適切な表示の防止に向け「出だしが肝心」と指摘。「ワクチンを接種していない」「接種地域の中のものではない」などの不適切な表示がないか「しっかり監視する」とし、週末にかけて徹底的に店頭を見ていくよう同省職員らに指示した。消費者庁とも連携しながらチェックする方針を示した。
18日以降、各地の市場でワクチンを接種した豚の取引が始まる中、「卸売段階での取引価格は先週を上回っている。これまでのところ、ワクチン接種豚と非接種豚で価格差は見られない」と指摘。現時点で価格に影響は出ていないとの認識を示した。
各食肉卸売市場では、安定した取引となり、相場に大きな動きは出ていない。
群馬県食肉卸売市場では19日から、ワクチンを接種した豚の取引を開始。県によると、21日までの上物平均価格は471円で、前週の464円からほぼもちあいだ。「価格が下がることがあっては問題だが、今のところ大きな変動も風評もない」(畜産課)と胸をなでおろす。
18、19日に取引のあった岐阜市食肉地方卸売市場でも、価格に大きな動きは見られなかった。大手食肉メーカーは「昨年9月の初発の際に比べると、取引先からの問い合わせなどもなく落ち着いている」と冷静に受け止める。
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2019年11月23日
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携行缶 駄目なの? ガソリンスタンド給油 「お断り」に農家「困った」 京アニ余波相次ぐ自粛
7月18日に京都市で発生した京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件から間もなく1カ月。携行缶に入れたガソリンが放火に使われたことを受け、農家にも思わぬ余波が広がっている。薬剤噴霧に使うスピードスプレヤー(SS)や刈り払い機などを使う農家らが、ガソリンスタンド(GS)での携行缶給油を断られる事例が発生している。農家らは、携行缶での給油が生活に欠かせない人への配慮を求めている。(木村泰之)
総務省消防庁の通知でガソリンの携行缶などの容器への販売は、1事業所で1日200リットル未満とされている。京アニ事件以降、同庁は全国の消防本部などに携行缶での購入者に対し身分証の確認と使用目的、販売記録の作成を求める通知を出した。加えて、消防法を運用するための「危険物の規制に関する規則」で、危険物を扱う資格を持たない人が携行缶で販売することは認められていない。
しかし、資格を持つ従業員がいるにもかかわらず、自主的に規制をするGSが出てきた。今月末で給油を中止するちらしを客に示すGSも相次ぎ、農家らが対応に追われている。販売を中止する大手元売りブランドのガソリンを販売する会社は「事件後、GSが携行缶給油を利用する客の個人情報管理を求める社内ルールを設けた。対応できないGSでの携行缶給油は中止した」と説明する。
千葉県白井市で「幸水」や「豊水」など7品種の梨を生産する橋本哲弥さん(39)は、園地から徒歩で行ける距離にあるセルフGSを利用していた。SSや動力噴霧機などの動力源として、月に40リットルほどを購入し保管していた。
これまでは従業員に給油してもらっていたが、同じ従業員から携行缶での給油ができないと断られた。京アニ事件を機にGSを運営する会社から出された指示だという。橋本さんは、市内の若手農家でつくるグループに呼び掛け、携行缶給油が可能なGSの情報を共有した。橋本さんは携行缶を車に積み、約2キロ離れたGSまで通っている。
橋本さんは「社会的影響の大きさは分かるが、極めてまれな危険な事例に過敏に反応されては、本当に使いたい人が使えなくなる」と嘆く。
苦情受けて 国が対策も
携行缶給油を自粛するGSが地域内で相次ぎ、携行缶給油を求める客が1軒のGSに集まり、指定数量を超えたために給油を断られるケースも発生している。
農家などの利用者からGSに苦情が寄せられていることを受け、総務省消防庁は今月7日、地域の消防本部やGS運営会社などに通知を出した。各給油所が容器に販売する量の基準を原則1日200リットル未満と据え置く一方、危険物を扱える従業員が給油し、給油設備の安全装置を完備していれば、200リットル以上の販売を認める内容だ。
同庁は「携行缶給油を求める人に供給されないことは国民生活への負担になりかねない。引き続き安全対策を呼び掛けたい」(危険物保安室)と話した。
JA―SSを運営するJA全農は「法令や消防庁などからの指示順守は徹底する。組合員だけでなく地域住民のために店頭での携行缶給油を続け、JA―SSの役割を果たしたい」(総合エネルギー部)と話す。
2019年08月16日

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豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
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2019年12月02日

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汚泥肥料、ハウスの熱源、農業用水… “下水パワー”発揮 国交省と公共団体が推進チーム
全国各地で、下水道から発生する汚泥やメタンガス、再生水を農作物の栽培に有効活用し、ブランド化する自治体が増えてきた。国土交通省などは下水道を生かした農作物を「じゅんかん育ち」と名付け、地域と共に安全性や効果の分析、周知を行う。タマネギやニンニクなど“下水道パワー”で多様な農作物が育ち、食に大きく貢献している。
安全実証、広がる活用
汚泥や再生水の中には農業に欠かせないリンなどが含まれ、肥料にしたり、処理水を農業用水に活用したり、発生する熱や二酸化炭素(CO2)をハウス栽培の熱源として活用したりできる。下水道由来の肥料は、葉の成長を促す窒素の含有量が高いことが特徴だ。
同省は2013年から地方公共団体と「BISTRO下水道推進戦略チーム」を結成し、“下水道×農業”の普及を進めてきた。科学的に安全であることも実証されており、下水道法では現在、下水汚泥再生の努力義務が課せられる。
ただ、課題は下水道のイメージの悪さだ。そこで同省では名称を公募。現在は、人が排出した下水を作物の栽培に利用して再び生かすなど、食の循環に貢献することから「じゅんかん育ち」としてPRする。
同省によると、下水道から発生する汚泥は18年度で242万トン。そのうち肥料や土壌改良材に生かされる「緑農地利用」は14%に上る。処理水は18年度で155億立方メートル。全国各地で「じゅんかん育ち」食材が生まれている。
土壌改善、食味向上も
酪農が盛んな北海道標津町。役場は乾燥させた汚泥を農家に配布している。受け取った農家は窒素の含有量が比較的少ない牛ふんを混ぜた混合肥料を作り、牧草地の肥料にしている。同町汚泥肥料研究会によると、汚泥肥料の方が従来の化学肥料に比べて牧草の生育が良好で、窒素化学肥料の使用量も従来の3分の2まで減らすことができた。土壌中の栄養成分も増え、搾乳量の増加や肉質向上にもつながったという。
秋田県大仙市の上野台堆肥生産協同組合は、下水道由来の汚泥を発酵させた肥料「アキポスト」を製造・販売する。15年度の販売量は475トンで、全量を県内で売る。稲作を中心にそば、エダマメ、ホウレンソウなどの肥料として使われている。
アキポストを使う水稲農家の中には「米・食味鑑定コンクール」で米の味や色つやなどが評価され、5年連続で「ベストファーマー認定」を受けた農家もいるほどだ。一方で、安全性や効果の周知はさらに必要で、下水道の汚泥と聞くだけで否定的な反応をする人も少なくないという。
同組合の山岡和男専務は「適切な処理を施せば、汚泥は素晴らしい肥料になる。何より行政の後押しが必要だ」と訴える。
5ヘクタールの農地で枝豆を作る大仙市の農家、鈴木辰美さん(72)はアキポストを10年ほど利用する。「エダマメの味が良くなった気がする。糖度も上がり、甘くておいしいと評判だ」とうれしそうだ。
印象の改善や 管理周知必要
下水道資源による特産品の栽培や、循環型農業を学ぶ体験授業なども広がっている。一方で、製造方法によっては特有の臭気が気になる他、牛鶏ふんとの混合や攪拌(かくはん)する作業の手間、イメージの悪さなどの課題も残る。
東京農業大学の後藤逸男名誉教授は「国や地方自治体が農家に向けてガイドラインの作成や、効果や適切な管理方法の周知に力を入れていくべきだ」と指摘。また、再生エネルギーや下水道資源の活用に詳しい長岡技術科学大学の姫野修司准教授は「農業分野にとって下水道資源の活用は可能性のある分野。自治体やJAによる普及推進活動が必要だ」と説明する。
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2019年11月29日

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シークワーサー 新たな商機 認知症予防効果で脚光
沖縄県特産のシークワーサーの人気が沸騰している。テレビ番組で機能性成分「ノビレチン」が脚光を浴び、空前の売れ行きだ。東京都内の県産品アンテナショップの棚から商品が消え、業者からJAおきなわの冷凍濃縮果汁には前年の倍の注文が舞い込む。JAなどは一過性の動きに終わらせないよう、安定供給や商品開発に力を注ぐ。
東京・銀座の県産品アンテナショップ「わしたショップ」。10月中旬、棚にぎっしりと並んでいるはずのシークワーサー飲料などが姿を消し、JA関係者らが驚きの声を上げた。前日のテレビ番組がノビレチンに認知症予防の効能があると紹介し、注目を集めた。
JAのシークワーサー果汁100%の飲料には1日で1000ケース(1ケース24本、1本500ミリリットル)以上の注文が相次いだ。青切りの果実を皮ごと搾った商品だ。ノビレチンは果実が青い時期に多い上、特に内皮に含まれるため、人気が集中したとみられる。JAが8月に発売した、100%果汁を粉末にした商品「ヒラミン」にも料理への利用などで引き合いが集まる。
JAが業者向けに販売する冷凍濃縮果汁にも問い合わせが殺到。昨年の台風で生産量が減り、果実の確保が難航していたところにブームが重なったためだ。JAは「注文数は昨年の倍だ」と複雑な心境だ。関係者は需要を逃さないよう、安定供給と商品開発に力を入れる。十数年前にもテレビ放映の効果で売れ行きが伸びたが、長続きしなかった苦い記憶があるためだ。
JAは2014年度、農家と契約取引を始め、原料を安定して確保できる態勢を整えた。その結果、昨年の台風の影響で木が弱り、果実が少ない今年も冷凍濃縮果汁を業者に供給しながらチャンスロスを防いでいる。搾りかすを使った商品の開発や、機能性表示食品としての販売も視野に入れる。JA特産加工部の新城悟次長は「ブームに関係なく健康的な食品として定着させたい」と意気込む。
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2019年11月07日

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銘柄ネギ“競演” 14府県22産地PR 千葉で全国サミット
全国各地のネギが一堂に会する「全国ねぎサミット」が23日、千葉県松戸市で開幕した。14府県22産地からブランドネギが集まり、魅力を伝えるPR合戦や直売、試食などを実施。家族連れなど大勢の人でにぎわった。安全・安心なネギの供給を続けることなどをまとめた「ねぎサミット宣言」を発表した。24日まで。
同市や千葉県のJAとうかつ中央などでつくる実行委員会が主催。同JA経営管理委員会の秋元篤司会長は「大雨後の播種(はしゅ)で芽が出にくくなるなど困難があったが、生産者の努力で出荷物がそろってきた」と強調した。
「産地PR合戦」では、各地のブランドネギの由来や味の特徴をアピール。ネギの直売の他、芋煮などの試食販売も用意した。
開催地の同市からは3種類のネギが出品された。特に矢切地域で栽培する白ネギ「矢切ねぎ」を丸ごと炭焼きにした料理に人気が集まった。上矢切●出荷組合の川村博文組合長は「台風や大雨の被害も出たが、鍋物需要の高まる時期に向け安定した出荷を続けたい」と意気込んだ。
市内から訪れた中村友一さん(32)は「青森や山形など普段手にしない産地のネギを購入した。レシピももらえたので食べるのが楽しみ」と笑顔を見せた。
同サミットは2010年から各地で開催しており、今年で10回目。次回は山形県新庄市で開催する。
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2019年11月24日

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大嘗祭供納 喜びの声 農家冥利に尽きる 一世一度の大舞台へ
皇位継承に伴う皇室の伝統行事「大嘗祭(だいじょうさい)」。14日夕から15日の未明にかけ、天皇陛下が米やアワなどを神前に供えて五穀豊穣(ほうじょう)や国家・国民の安寧などを祈られる。天皇1代に一度きりの行事に向け、全国からは自慢の特産品も供納された。その品々と生産者らの喜びの声を紹介する。
米は栃木と京都
大嘗祭に使う米の産地は5月に「斎田点定の儀」で、栃木県と京都府に決まった。栃木県の「悠紀(ゆき)田」の耕作者は高根沢町の石塚毅男さんが、京都府の「主基(すき)田」の耕作者は南丹市の中川久夫さんがそれぞれ務め、米を献上した。
中川さんは「皇位継承の重要な行事に地元の米を提供できることは農家冥利(みょうり)に尽きる」と語る。27アールで「キヌヒカリ」を生産。おいしさと見栄えを追求するため、水管理や除草などを徹底し、地域住民ら延べ約120人も生産に携わった。
自慢の逸品並ぶ
全国の特産品は「庭積(にわつみ)の机代物(つくえしろもの)」と呼ばれる。47都道府県から各3~5品目が、大嘗宮の主要な建物「悠紀殿」と「主基殿」の前の庭にそれぞれ設けられた庭積帳殿の机上に供えられる。
北海道は小豆、ジャガイモ、小麦など。東北はリンゴを中心に果樹が多く、山形県の西洋梨「ラ・フランス」や福島県の梨が選ばれた。野菜では、全国トップクラスの生産量を誇る青森県のナガイモ、岩手県の干しシイタケなどが目を引く。
青森県東北町で2ヘクタールでナガイモを生産し、供納する向井博徳さん(54)は栽培歴28年のベテラン。「自慢の品が選ばれてうれしい。名誉あることだ。全国に青森のナガイモを知ってもらうきっかけになれば良い」と喜んだ。町は夏でも涼しくナガイモは時間をかけて成長する。粘り気があり味が濃いのが特徴だ。
関東甲信越地区では、県の主力品目や特産品が目立った。栃木県はイチゴ、千葉県はラッカセイなどを選出。甲信越ではブドウやリンゴ、柿などを納めた。東海4県では静岡県が茶やワサビ、愛知県は全国屈指の生産量を誇るフキ、三重県も「南紀みかん」や「伊勢茶」など、全国に名が知られる産品が並ぶ。
群馬県でコンニャク「あかぎおおだま」を生産し奉納する中之条町の小淵敏夫さん(68)は「一生に一度あるかないかの光栄なこと。掘り取りを手伝う人たちからも喜ばれ、実感が湧いてきた。50年近く作り続けたコンニャクを晴れ舞台に届けられ、農家を続けて良かった」と喜ぶ。
「苦労報われた」
岐阜県では、JAひがしみの管内の東美濃栗振興協議会ぽろたん部会が栽培する栗「東美濃ぽろたん」が選ばれた。水野賢治部会長は「生産者の長年の苦労が報われ、今後の栽培の励みになる」と喜ぶ。大粒で、加熱すると渋皮が鬼皮と一緒にぽろっとむける。低温貯蔵することで、でんぷん質が糖に変わり、糖度は20以上になる。
近畿北陸9府県からは大豆、サトイモ、干しシイタケ、柿、茶、栗、ミカン他、石川の能登金糸瓜、福井の抜き実ソバ、京都の長ダイコン、大阪のエビイモ、兵庫の丹波黒大豆、奈良の吉野葛(くず)などが送られた。
柿「富有」を供納した和歌山県のJA紀北かわかみは、JAトレーニングファームで職員と研修生が作る「富有」から、6L級(370グラム前後)以上を選んだ。渋柿主体の産地で、部会がハウス柿の献上を続けているのが誇り。木村恵一専務は「県、地域の担い手になる人たちが作ったので(富有も)“普段通り”味わっていただきたい」と思いを込めた。
中国四国地方は、鳥取県からヤマノイモ「ねばりっこ」、広島県からレモン、徳島県はスダチ、香川県は生オリーブ、愛媛県はサトイモ「伊予美人」、高知県はブンタンなど各県えりすぐりの特産品を選んだ。
愛媛県でミカンを供納した日の丸柑橘(かんきつ)共同選果部会の宮本衛共選長は「愛媛のかんきつ産地を代表して日の丸みかんを納められ非常に光栄。産地にとっても、大いに励みになる。この名誉に恥じぬよう生産者一同、栽培技術を磨き、高品質生産へ一層努力したい」と話す。
九州では本格的なシーズンを前にかんきつ類を選んだ県が多い。佐賀、長崎はミカンを、熊本は「デコポン」、大分はカボス、宮崎はキンカンを供納する。また茶の有力産地でもあるため、福岡、佐賀、宮崎、鹿児島の茶も並ぶ。沖縄のゴーヤー(ニガウリ)など特徴的な品目も名を連ねた。
JAそお鹿児島ピーマン部会は地域でブランド化している「志布志ピーマン」を奉納する。部会長の野口泰晃さん(48)は「大変名誉なこと。今の時期のピーマンは色つやも良く生食がお勧め。天皇陛下に届けられることは素直にうれしい」と喜んでいる。
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2019年11月14日
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有機食品 週1回以上飲食 3割超 増やしたい1位は生鮮野菜 農水省調査
有機(オーガニック)食品が消費者に注目されている。過去1年以内に有機食品を飲食した経験のある人を対象にした農水省の調査では、「週に1回以上食べる」と答えた人が3割以上を占めた。「購入を増やしたい」品目は生鮮野菜が最多で、国産を求める割合も7割近くに上る。高い頻度で有機食品を購入する消費者がいるため、小売りは取り扱い拡充の動きを強める。
同省は8月下旬~9月上旬、1年以内に有機食品の飲食経験がある20歳以上の男女1099人を対象に、購入意向を調査した。
有機食品を食べる頻度が「ほとんど毎日」と答えた割合は5・9%。「週に2、3回」(12・1%)、「週に1回」(16・7%)と合わせ、週に1回以上食べる人の割合は34・7%に上った。年代別では「ほとんど毎日」と答えた割合が最も高かったのは40代(7・6%)だった。
家庭消費用に購入を増やしたい有機食品の品目では、生鮮野菜が59・5%と最多。続いて生鮮果実(25・8%)、パン(25・3%)、米(22・6%)だった。同省は「生鮮野菜は購入経験が多く、売り場が広がったこともあり、消費者に浸透している」(農業環境対策課)と分析する。
また、有機食品は「国産しか購入しない」「割高でもできるだけ国産を購入する」と答えた割合は米が86・2%と最多で、豆腐・納豆(77%)が続いた。生鮮野菜(67・4%)、冷凍野菜(56・6%)、生鮮果実(54・7%)と青果物に国産を求める声も強い。
有機食品のニーズに応えようと、小売りは供給体制を強化。イオングループで有機食品などの専門店を展開するビオセボン・ジャポンのスーパー「ビオセボン」は今年、6店舗を新たに構え、首都圏の総出店数を14店舗に拡充。「安全・安心な食品を求める子育て世代をターゲットに出店を増やしている」と同社。
イオンは10月、生産者の有機JAS認証取得や物流、販売を支援する提携制度「イオン オーガニック アライアンス(AOA)」を始めた。生産者の負担軽減と、青果物の安定供給を図る。
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2019年11月26日

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世界都市農業サミット開幕 体験農園の魅力実感 5カ国が参加 東京都練馬区
東京都練馬区が主催する世界都市農業サミットが29日、同区で始まり、参加する5カ国(米国、英国、カナダ、韓国、インドネシア)の都市の行政関係者や専門家ら15人が区内の農業体験農園や観光農園、直売所を視察した。サミットは12月1日まで。
参加都市はニューヨーク、ロンドン、トロント、ソウル、ジャカルタ。都市農業の魅力と可能性を学び合い、発展の場にしようと区が初めて開いた。
参加者は区内でキャベツやネギを栽培する高橋正悦さん(68)の畑を訪問。高橋さんは「近隣の人とは直売所で新鮮な野菜を買ってもらい、良好な関係だ」と話した。
加藤義松さん(65)が運営する体験農園「緑と農の体験塾」も訪れた。加藤さんは「野菜の栽培方法を示すことで、初心者でもプロ並みの野菜が作れる」と説明した。
視察した韓国・ソウル特別市の都市農業課長は「体験農園の活性化について知見を深めたい」と述べた。インドネシア企業の植物防疫研究所長も「日本の都市で市民主体の農業が営めているのは興味深い」と、農園をカメラで撮影していた。
区の毛塚久都市農業課長は「都市の中に農地が必要という方向性は各国共通だと思う。サミットを機に世界の都市農業の発展につながれば」と期待する。
30日と12月1日に国際会議を開き、「サミット宣言」をまとめる予定だ。
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2019年11月30日

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店頭表示 国が監視強化 市場価格 影響なし ワクチン接種豚流通
豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通が始まっていることを受け、江藤拓農相は22日の閣議後会見で、不適切表示の監視を強める考えを示した。今後、小売り段階での流通が本格化することを見据え、「店頭の動向はこれから。しっかりサーベイランス(監視)する」と強調した。
監視については、不適切な表示の防止に向け「出だしが肝心」と指摘。「ワクチンを接種していない」「接種地域の中のものではない」などの不適切な表示がないか「しっかり監視する」とし、週末にかけて徹底的に店頭を見ていくよう同省職員らに指示した。消費者庁とも連携しながらチェックする方針を示した。
18日以降、各地の市場でワクチンを接種した豚の取引が始まる中、「卸売段階での取引価格は先週を上回っている。これまでのところ、ワクチン接種豚と非接種豚で価格差は見られない」と指摘。現時点で価格に影響は出ていないとの認識を示した。
各食肉卸売市場では、安定した取引となり、相場に大きな動きは出ていない。
群馬県食肉卸売市場では19日から、ワクチンを接種した豚の取引を開始。県によると、21日までの上物平均価格は471円で、前週の464円からほぼもちあいだ。「価格が下がることがあっては問題だが、今のところ大きな変動も風評もない」(畜産課)と胸をなでおろす。
18、19日に取引のあった岐阜市食肉地方卸売市場でも、価格に大きな動きは見られなかった。大手食肉メーカーは「昨年9月の初発の際に比べると、取引先からの問い合わせなどもなく落ち着いている」と冷静に受け止める。
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2019年11月23日
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鳥獣対策の技術披露 捕獲、運搬、処理 東京でジビエ利活用展とサミット
全国の野生鳥獣の肉(ジビエ)振興の先進事例や消費の動きなどを共有する第6回日本ジビエサミットが20日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。利用拡大に向け、鳥獣害対策の延長だけでなく、食材としての魅力を高めるために関係者が連携することの重要性が示された。22日まで。
日本ジビエ振興協会の主催。都内での開催は初めて。協賛したJA全中の中家徹会長は「ジビエを普及させることは、地方や農業の振興にも大きな役割を果たす」と期待を寄せた。
会場では、野生鳥獣の捕獲、運搬、処理からジビエとしての利用まで、最新の技術や道具が展示され、情報交流、商談が行われた。セミナーでは、食肉と豚コレラ(CSF)の安全性について講演を行った。
会場では、情報通信技術(ICT)を活用し、イノシシや鹿を捕獲するわなの見回り作業を軽減する装置が目立った。わなの作動をセンサーで感知し、狩猟者にメールで知らせる仕組み。これまでの製品は、わなに設置するセンサー(子機)と電波を集約して飛ばす親機の設置が必要だったが、アンテナメーカーのマスプロ電工は、子機だけで稼働するシステム「ワナの番人」を展示。導入にかかる総経費を割安に設定したこともあって、来場者の評判を呼んでいた。
捕獲した野生鳥獣の処理を効率化する機器も注目を集めた。フロンティアインターナショナルの「バイオベーター」は、残さを堆肥化するコンパクトなドラム式処理機。エー・ワンの小型焼却炉「クリーンファイア」は骨まで灰にできるのが特徴だ。
講演では、麻布大学の押田敏雄名誉教授がジビエと豚コレラの関連について解説した。「豚コレラの発生によりイノシシの食肉利用を控える店が出ているが、豚コレラに感染したイノシシを人が食べても人体に影響ないことを、もっと周知する必要がある」と指摘。また、豚コレラの感染リスクを高めない狩猟方法についても紹介した。現場で解体しない、ブルーシートに包んで運搬、残さの正しい処理などのポイントを挙げていた。
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2019年11月21日
