新型コロナ
感染拡大が続く新型コロナウイルスは、農業の現場にも大きな影を落としています。産地の抱える問題や、食料などの供給を止めないための生産現場の取り組みを伝えます。
緊急宣言 食品業界に明暗 宅配伸び外食苦境 1月売上高
食料品を扱う各業界の1月売上高がまとまった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言再発令で、家庭内で調理する内食傾向が強まり、食品宅配やスーパーの好調ぶりが目立った。特に宅配は大きく伸びた。一方、外食や百貨店は外出自粛による客足減が響き、落ち込みが大きくなった。……
次ページに食料品を扱う業界の売上高に関する表があります。
2021年02月28日

コロナ禍で需要減 豚レバーで薫製 消費拡大へ 家庭向け人気 千葉県食肉公社
新型コロナウイルス禍による需要減少で廃棄処分されていた豚レバーが、薫製加工をした商品として人気を集めている。食肉出荷・加工を手掛ける千葉県食肉公社(千葉県旭市)が、独自の熟成法と薫製で味を改良した「豚レバースモーク」を道の駅などで販売。緊急事態宣言の解除を見据え飲食店ではメニュー開発も進んでおり、地域を挙げて消費拡大に向けて動き始めた。
豚レバーは串焼きやレバニラ炒めの材料として、居酒屋やレストランを中心とした外食産業に需要があった。しかしコロナ禍で外食需要が低迷。同公社では最大約9割が廃棄処分になったという。
「一般家庭向けに豚レバーを使えないか」。同公社の若松重伸取締役営業部長らは、昨年7月ごろから新商品の開発に着手。独自の調味液に漬けて零下2~0度前後で氷温熟成し、桜チップでいぶして香り付けをした「豚レバースモーク」(約100グラム330円)を作った。若松部長は「ねっとりとした食感を味わってもらいたかった。豚レバースモークを通じて消費を拡大したい」と期待する。
千葉県は豚の飼養頭数が全国5位の60万3800頭(2019年2月1日時点)と豚は身近な存在だが、若松部長によると「豚レバーのスモークはなじみがない」という。昨年11月、千葉市の商業施設でテスト販売をしたところ、見込みの20個を大幅に上回る約100個を売り上げた。
今年1月に旭市の道の駅季楽里あさひや旭食肉協同組合本店の他、県内の道の駅や直売所で販売を始めたところ、評判を聞き付けた客が相次ぎ、売り切れの店も出た。季楽里あさひの江本伸二駅長は「これまで聞いたことのない商品だったが、いまではスモーク目当てで来店する人もいるほどの人気だ」と驚く。
メニュー開発 飲食店も意欲
市内では新たな豚レバーメニューの開発も進む。ハンバーグとケーキの専門店「キッチンツナグ」は、ハンバーガーに豚レバースモークを加えるなどメニュー開発に余念がない。2月からメニューで目立つように「旭市豚さんのレバーパテ」「スモークレバー」と記載したところ、店内や持ち帰りで注文する客が増えたという。豊田維代表は「コロナ禍で来店客は減っているが、豚レバーのメニューは反応が良い。今後も新たなメニューを出して千葉から豚レバーを広めたい」と意気込む。
同公社では学校給食への提供を目指し、ソーセージなども開発中だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年02月27日

緊急事態延長で飲食限界 倒産増加 止まらず
新型コロナウイルス感染症対策で政府が10都府県の緊急事態宣言を3月7日まで延長したことで、飲食店などの外食業界にとどまらず、食材の卸業者や生産農家への一層の打撃は避けられない。2020年の企業の休廃業と飲食業の倒産は2000年以降最多に上り、緊急事態宣言延長で外食業界は限界が迫っている。
東京商工リサーチによると、20年に休廃業・解散した企業は、2000年の調査開始以来最多の4万9698件だった。……
2021年02月05日
花ある暮らし推進 需要喚起へ発信強化 コロナで農水省
緊急事態宣言の再発令で販売が低迷する花きの需要喚起に向け、農水省は29日、花を飾ったり、贈ったりして楽しむことを呼び掛ける「花いっぱいプロジェクト2021」を始めると発表した。昨年行った取り組みをリニューアル。消費者向けに花きの情報を集めた特設サイトを同省ホームページに新設し、花飾りや花贈りの機運を高める国民運動も新たに行う。
同プロジェクトは、新型コロナウイルス禍を受けて昨年3月に開始。自治体や企業に花の活用を提案し、消費者に花の購入を呼び掛けてきた。同省は取り組みにより、「(花き業界から)通販などで家庭での需要が伸びたとの声が聞かれた」(園芸作物課)とする。
緊急事態宣言の再発令で、業務用を中心に販売が再び低迷する中、同省はプロジェクトをリニューアル。新設したサイトでは、身近にある花屋などを紹介した「応援ショップリスト」、飾り方や長持ちさせる方法などを伝える「花飾りお役立ち情報」などを掲載。企業や団体によるキャンペーン情報なども発信する。
国民運動は、同省が消費者や企業などから募り、「花いっぱいプロジェクト応援隊」をつくる。応援隊がインターネット交流サイト(SNS)を通じて活動を紹介し、花飾りや花贈りの機運を高める。取り組みの課題などを話し合うオンライン意見交換会も実施。活動の質が高まるようにすることを見込む。
野上浩太郎農相は同日の閣議後記者会見で、「国民の皆さまには、家庭で花を飾ったり、大切な人に花を贈っていただければ」と述べた。
同省でも正面玄関や記者会見場を花で飾ることや、バレンタインデーやホワイトデーに合わせた職員による花の購入などを予定している。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月30日

クラスター発生2カ月 北海道・旭川厚生病院 地域医療の要 再開へ 組合員、住民ら安堵
新型コロナウイルスで全国最大規模の311人の感染クラスターが発生した北海道旭川市のJA旭川厚生病院が、診療を再開した。国立感染症研究所や保健所などの指導で徹底した感染対策を講じ、終息したと判断された。外来は予約制で対応し、2月から施設内健診も再開する。道北地帯の地域医療の要だっただけに、JA組合員や地域住民は安堵(あんど)している。(尾原浩子)
ホテル通勤、「風評」耐える
同病院は旭川市だけでなく、道北各地の自治体から住民らが頼りにする地域の基幹病院だ。医師や看護師らおよそ1000人の医療スタッフが働く。市内の他病院で感染が広がり、転院患者を受け入れるなど、コロナ禍の地域医療を守るために対応してきた。
専門家が「最高レベルの感染対策」をしてきたと評価する同病院だったが、昨年11月20日に陽性者を確認した。その後感染に歯止めがかからず、外来を停止するなど診療制限をせざるを得ない異例の事態となった。中でも、道北各地から多くの人が頼りにしていた産婦人科の外来診療と、年間800件を担ってきた分娩(ぶんべん)の休止は地域医療に深刻な影響を与えた。
同病院は対策本部を立ち上げ、国や北海道のクラスター対策班、保健所、近隣病院やJA北海道厚生連の他の病院の協力を得て、事態の収束を目指した。
その間、病院の職員は苦しい生活を強いられた。一部の職員は感染拡大を防ぐため自宅に帰らず、同厚生連が契約したホテルから通った。家族に会えない中でも使命感で医療に従事し、涙を流しながら働く職員もいた。職員自身が陽性者でないにもかかわらず、家族や子どもが職場や保育園に通えなくなるなど、厳しい状況が続いたという。
12月下旬には感染拡大の歯止めにめどが付いた。同月22日には旭川医大との連携で救急母体搬送、新生児救急搬送の一部再開に踏み切った。同月30日以降は陽性者の発生はなく、1月26日、森達也院長が記者会見で終息を宣言した。
北海道厚生連 中瀬省会長に聞く 懸命の対策効かず ウイルスと壮絶な闘い
JA北海道厚生連の中瀬省会長に28日、終息までの経緯や受け止めを聞いた。
JA北海道厚生連の中瀬省会長
──クラスターが発生した理由は。
発生した理由はまだ分かっていない。しかし、感染者を最初に確認した時はほぼ満床状態で、市内の他の医療機関でもクラスターが発生していた。転院も難しく、陽性患者と感染していない患者を分けるのが困難だった。
目に見えないウイルスの感染防止は非常に難しく、国立感染症研究所や保健所の指導を受けながら対応したが、感染者数が多いこともあり、感染に歯止めがかからなかった。クラスターが発生した時点で一部の診療を残し、診療を休止した。北海道厚生連のネットワークで他の厚生病院、本部からも応援スタッフが対応に当たった。
感染拡大は医師や看護師が悪いわけでは決してない。森院長が会見や会議で「申し訳ない」と謝罪する姿を見て、とてもつらかった。ある職員が泣きながら感染症の専門家である恩師に「どこが悪かったのか」と訴えていたと聞いて、自分も涙が出た。一生懸命やっているのに、それでも抑えきれない。ウイルスとの闘いは壮絶だった。
──診療再開をどう受け止めますか。
診療制限で地域住民ら多くの人に迷惑をかけ、本当に申し訳なかった。ゾーニング対策や検査の拡充など徹底し終息に至り、ここまで来られた。
私はもち米を作る農家で、病院に精通しているわけではない。今回、命を預かる病院職員の使命感と存在の大きさを、改めて知った。毎日の朝夕のウェブ会議で、森院長、看護部長、事務部長らがどうやって終息させるかを真剣議論しているのを聞き、心が震えた。病院は単なる建物ではなく、たくさんの立場の人が集まって地域医療を守っていることを痛感した。
地元(JA北はるか)から病院までは車で2時間かかるが、診療再開で地元の組合員から「ほっとした」「待ち望んでいた」と聞き、本当にこの病院は道北の地域を守っているのだと痛感した。まだ受け入れの制限はしているが、再開を伝えられてよかった。
上川地区13JAの組合長会をはじめとする全道各地のJA、組合員、子どもたち、地域住民、職員OB、厚生連にお世話になったという患者、関係者ほか、多くの人から支援を頂いた。物資や寄せ書きなど、温かい支援に心から感謝している。
──改めて国や組合員に伝えたいことは。
厳しい状況だが、国や道、自治体からの支援のおかげで経営が成り立っている。長期戦なので、息の長い支援を国や道などにお願いしたい。
組合員や住民には、ちょっと油断すれば感染が広まることを知ってほしい。多人数の会食を控え、マスクや手洗いは徹底し、みんながちょっとずつ辛抱する。流行させないという努力をみんなですることが、コロナ対策の一歩になる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月29日

コロナ下節分に葉物や実 魔よけ飾り試験販売 大田花き
花き卸の大田花きは、2月2日の節分に向けて葉物や実を使った魔よけ飾りを初めて開発した。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、「疫病退散」の意図を込めた。首都圏のスーパー限定で試験販売する。店頭価格は500~600円を想定し、来年以降の本格販売を視野に入れる。
縁起物の植物を束ねて壁に飾るタイプで、大きさはA4サイズ。厄よけに用いられるヒイラギに加え、古来、神聖なものとされるヒカゲノカズラ、一部地域で豆まきに使われるラッカセイ、「難を転じて福となす」ナンテンの実などを合わせた。
大田花きと買参人の加工業者とで、計400個を手作りした。首都圏に展開するスーパーのサミットとヤオコーで限定販売する。今後は業者の加工ラインで効率よく生産できるよう、花材や組み方などを工夫していく。
同社は「花業界の物日ではなかった節分に、新しい需要をつくる」と今後を見据える。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月29日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(下) 引きこもり生活一変 新たな居場所 たくましく歩む
「自信はまだないけれど、怖いほど迷いがない。きっと僕は農業が好きなんだと思う」。新型コロナウイルス禍の2020年度に日本農業実践学園に入校した18人の中で最年少、28歳の雙田貴晃さんが、ナスを促成栽培する温床を作ろうと土壌を掘り返しながら、白い歯を見せた。
挫折からしばらく引きこもりの生活が続いた。外の世界に連れ出してくれたのが農業だった。
諦めた司法試験
「理系一家」の末っ子だ。……
2021年01月21日

メロン・大葉 相場低迷 再発令 時短営業響く
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や休業を受け、一部青果物の相場低迷が加速している。メロン「アールス」の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年の3割安を付け、前回発令された4月上旬と同水準に落ち込む。刺し身のつま物に欠かせない大葉も、業務需要が減って平年の3割安に低迷。小売りでの販売にも勢いがなく、相場を下支えできていない。
小売りも勢い欠く
メロン「アールス」は12月、「GoToキャンペーン」の活況により、上位等級を中心に引き合いが強まり、歳暮需要も加わり高値で推移。だが、年が明けて環境は一変した。中旬(19日まで)の日農平均価格は1キロ799円と平年の32%安で、同4割安を付けた日もある。東京都中央卸売市場大田市場では、初市以降、静岡産の高値が1キロ4320円と止め市の半値に急落し、一時は同3240円まで下げた。
卸売会社は「正月に百貨店や果実専門店に客足が向かず弱含みとなる中、再発令が重なった。ホテルやレストランが営業縮小し、売り先がない。低価格帯を中心にスーパーに売り込むが、上位等級と下位等級の価格差が縮まっていく」と厳しい展開を見通す。
加温にコストがかさむ厳寒期の軟調相場に、産地からは嘆息が漏れる。主産地の静岡県温室農業協同組合によると、交配から収穫までは、 50日程度。収穫時期をずらすことができず、供給の調整は難しい。「コストをかけ、丹精したものに値段が付かないのはつらい。スーパーなどへの販売を通し、家庭での消費拡大に期待したい」と話す。
小物商材も厳しい販売を強いられている。大葉は、1月中旬の日農平均価格が1キロ1690円。元々需要が減る時期ではあるものの、平年の28%安と低迷が顕著だ。
産地は前回の宣言時、巣ごもり需要で好調だったスーパーに販路を切り替えた。ただ、「今回はスーパーからの注文は勢いを欠き、相場を下支えし切れない」(卸売会社)情勢だ。
主産地を抱えるJAあいち経済連は「業務筋が大半を占める契約取引分の販路を新たに確保しないといけない」と説明。春の需要期の販売も見据え、コロナの早期収束を望んでいる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(中) 国際協力から転身 「まず農家に」 地に足着け精進
吹き抜ける風が肌寒さを増した2020年11月下旬、水戸市にある日本農業実践学園の講義用あずまやで、多品目の野菜農家を目指す吉田誠也さん(30)が、パソコンに野菜の生育データを打ち込んでいた。背後には自身で種から育てた10品目の畑が広がる。
東京大学大学院で植物のバイオテクノロジーや分子生物学を修め、昨春から海外で農業の国際協力に携わるつもりだった。「半年前まではここにいるとは想像できなかった。でも、本当はこれが本来の順序。急がば回れで、新型コロナウイルス禍で僕は農家への道に踏み出す決断ができた」
入校者数が右肩下がりを続けていた実践学園は、研修生がゼロとなった19年度と打って変わり、20年度は18人が入校した。
2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(上) コロナで体感「農業っていい」 多業種から入校生 日本農業実践学園
0度近くまで冷え込んだ晩秋、丘陵地のビニールハウスの中は春のような暖かさで、イチゴの白い花の周りには蜜蜂の羽音が響いていた。「蜂が近くに来ても払わないで。攻撃されるかもしれないから」。水戸市の郊外、新規就農者の専門学校「日本農業実践学園」の研修施設。2カ月前に入校し、1年後にイチゴ農家として独立を目指す小林克彰さん(39)が、実習作業の手伝いに来た妻の瞳さん(37)に語り掛けた。
克彰さんは、芸能人のホームページやコンサート情報を制作していた自営のウェブデザイナーだった。会社員だった30歳の頃、副業として会社が認めていた個人受注が増え、独立を決意した。2年前に工業デザイナーの瞳さんと結婚し、埼玉県三郷市に居を構えた。克彰さんが自宅で仕事、瞳さんが会社勤め、2人の生活は順風だった。
2021年01月19日
新型コロナアクセスランキング
1
緊急宣言 食品業界に明暗 宅配伸び外食苦境 1月売上高
食料品を扱う各業界の1月売上高がまとまった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言再発令で、家庭内で調理する内食傾向が強まり、食品宅配やスーパーの好調ぶりが目立った。特に宅配は大きく伸びた。一方、外食や百貨店は外出自粛による客足減が響き、落ち込みが大きくなった。……
次ページに食料品を扱う業界の売上高に関する表があります。
2021年02月28日
2
コロナ禍で需要減 豚レバーで薫製 消費拡大へ 家庭向け人気 千葉県食肉公社
新型コロナウイルス禍による需要減少で廃棄処分されていた豚レバーが、薫製加工をした商品として人気を集めている。食肉出荷・加工を手掛ける千葉県食肉公社(千葉県旭市)が、独自の熟成法と薫製で味を改良した「豚レバースモーク」を道の駅などで販売。緊急事態宣言の解除を見据え飲食店ではメニュー開発も進んでおり、地域を挙げて消費拡大に向けて動き始めた。
豚レバーは串焼きやレバニラ炒めの材料として、居酒屋やレストランを中心とした外食産業に需要があった。しかしコロナ禍で外食需要が低迷。同公社では最大約9割が廃棄処分になったという。
「一般家庭向けに豚レバーを使えないか」。同公社の若松重伸取締役営業部長らは、昨年7月ごろから新商品の開発に着手。独自の調味液に漬けて零下2~0度前後で氷温熟成し、桜チップでいぶして香り付けをした「豚レバースモーク」(約100グラム330円)を作った。若松部長は「ねっとりとした食感を味わってもらいたかった。豚レバースモークを通じて消費を拡大したい」と期待する。
千葉県は豚の飼養頭数が全国5位の60万3800頭(2019年2月1日時点)と豚は身近な存在だが、若松部長によると「豚レバーのスモークはなじみがない」という。昨年11月、千葉市の商業施設でテスト販売をしたところ、見込みの20個を大幅に上回る約100個を売り上げた。
今年1月に旭市の道の駅季楽里あさひや旭食肉協同組合本店の他、県内の道の駅や直売所で販売を始めたところ、評判を聞き付けた客が相次ぎ、売り切れの店も出た。季楽里あさひの江本伸二駅長は「これまで聞いたことのない商品だったが、いまではスモーク目当てで来店する人もいるほどの人気だ」と驚く。
メニュー開発 飲食店も意欲
市内では新たな豚レバーメニューの開発も進む。ハンバーグとケーキの専門店「キッチンツナグ」は、ハンバーガーに豚レバースモークを加えるなどメニュー開発に余念がない。2月からメニューで目立つように「旭市豚さんのレバーパテ」「スモークレバー」と記載したところ、店内や持ち帰りで注文する客が増えたという。豊田維代表は「コロナ禍で来店客は減っているが、豚レバーのメニューは反応が良い。今後も新たなメニューを出して千葉から豚レバーを広めたい」と意気込む。
同公社では学校給食への提供を目指し、ソーセージなども開発中だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年02月27日

3
[災い転じて](下) 仙台牛「1頭買い」提案 売り場並ぶ希少部位
仙台市若林区の会社員、佐沼俊輔さん(38)は9月下旬、「ザブトン」と呼ばれる牛肉を近所のスーパーで購入し、宮城県石巻市の実家を訪ねた。20代の頃、母と初めて口にし、そのおいしさにほれ込んだが、市中のスーパーや精肉店ではなかなか手に入らなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で定期的な帰省がままならない中、大好物のザブトンで母と久しぶりに食事をすることを喜んでいた。……
2020年10月29日

4
[人手不足の産地](1) 実習生来ぬ春 群馬県嬬恋村
投光器が照らす中、今季の収穫が始まった松本さんのキャベツ畑(群馬県嬬恋村で=釜江紗英写す)
「公共の使命」果たす
7月7日午前3時半すぎ、標高1200メートルの群馬県嬬恋村田代地区は、梅雨前線の影響で昨夜から降り続いていた雨が上がり、流れる雲の切れ間から天の川がのぞいた。代替わりで今季から陣頭指揮を執る4代目農家の松本裕也さん(34)が投光器のスイッチを入れた。暗闇に沈んでいたキャベツが照らされた光で色を取り戻し、10月まで続く収穫が始まった。
松本さんの他、父秀信さん(75)、母ゆき子さん(72)、新型コロナウイルス禍で入国できなかった外国人技能実習生2人に代わって雇用した望月由香利さん(54)と竹原由祐さん(30)の計5人が畑に入った。望月さんはコロナ禍で休業状態となった村内のリゾートホテル従業員。派遣社員の竹原さんも長野・軽井沢の保養施設が臨時閉鎖され、嬬恋にやってきた。
刈る、並べる、箱に詰める。5人の息がぴたりと合い、途中から降りだした雨の中でも作業は黙々と進んだ。2時間後、夜明けとともに深緑に輝きだした広大な畑を見渡しながら、松本さんは「今年もこの日を迎えられた」ことに感謝した。
作付け危機
4カ月前の春先、世界同時危機の荒波は嬬恋村にも押し寄せた。各国は自国保護のため国や地域間の移動を制限し、政府も外国人の入国規制に乗り出した。外国人技能実習生へのビザ発給は止まり、農業分野だけで2400人が来日できなくなった。その1割分の受け入れを予定していたのが同村の農家だった。
2018年から毎年、中国からの実習生2人を雇ってきた松本さんも、河北省に住む40歳前後の男性2人の来日を待っていた。昭和期に山林を開墾した8ヘクタールを営むには、両親と実習生を加えた計5人が必要だった。実習生の監理団体から「ビザが出ない」と連絡があった時、松本さんは「今季の作付けは5ヘクタールが精いっぱいか」と悩んだ。
キャベツはタマネギやハクサイなどと並び、国が定める重要野菜4品目の一つだ。同村は安定供給の指定産地となっており、キャベツ農家は、収穫が終わると来季の生産計画を立てる。同村で栽培されるのは、7月から10月に出荷される夏秋キャベツで、そのシェアは全国の5割を超えている。
巨大産地は食料の安定供給という「公共の使命」を負う。生産量が計画から大幅ダウンすれば、国内の需給バランスは崩れ、価格は高騰し、食卓への影響は計り知れない。松本さんの悩みは個人の領域を超えていた。
行政後押し
同じ頃、3月23日。村役場1階の村長室にJA嬬恋村の関喜吉専務と嬬恋キャベツ振興事業協同組合の干川秀一理事長が駆け付け、緊急会議が持たれた。2人は熊川栄村長に、実習生のうち入国できたのは4割にすぎず、6割に当たる計221人が入国できない見通しだと伝えた。
村のキャベツ農家361戸のほとんどは家族経営で、耕作面積が広いほど実習生に支えられている。収穫が始まる6月末までには入国規制も緩和されるのではとの楽観論もあったが、熊川村長の決断は早かった。村独自の支援策として5000万円の異例の予算化を決め、JAや協同組合などと人手不足を解消する有効な使途を詰めるよう農林振興課に指示した。
農水省が調査を開始した1970年以降、夏秋キャベツの出荷量が常に全国最多の同村は今秋、「日本一連続50年」を迎える。その節目に、生産縮小の選択肢を突き付けられる事態が幕を開けた。
3カ月後の6月末、嬬恋キャベツが群馬県産として全国の市場に届き始めた。昨年と同じ価格水準で販売され、食料の安定供給という公共の使命は果たされた。
2020年07月15日
5
[災い転じて](上) 観光地の新戦略 宮城県蔵王町 都市離れ仕事…「すてき」
「ここに来て本当によかった」
新型コロナウイルス感染拡大に伴う全国緊急事態宣言が解除された直後の6月、仙台市の自宅で不動産会社の事務を受託している佐藤亜矢子さん(48)は、蔵王連峰の懐に抱かれた宮城県蔵王町で暮らしていた。……
2020年10月28日

6
緊急事態延長で飲食限界 倒産増加 止まらず
新型コロナウイルス感染症対策で政府が10都府県の緊急事態宣言を3月7日まで延長したことで、飲食店などの外食業界にとどまらず、食材の卸業者や生産農家への一層の打撃は避けられない。2020年の企業の休廃業と飲食業の倒産は2000年以降最多に上り、緊急事態宣言延長で外食業界は限界が迫っている。
東京商工リサーチによると、20年に休廃業・解散した企業は、2000年の調査開始以来最多の4万9698件だった。……
2021年02月05日

7
緊急事態下、切り花低迷 葬儀縮小し輪菊平年の半値
政府の緊急事態宣言再発令を受け、業務や仏花で使う切り花の相場が大きく下落している。主力の輪菊は平年の半値近くで、カーネーションやスターチスなど他の仏花商材も低迷する。都内卸は「葬儀の縮小が加速して業者からの引き合いが弱く、小売店の荷動きも鈍い」とし、販売苦戦の長期化を警戒する。
日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)を見ると、年明けから軟調だった輪菊の相場は、東京など4都県で緊急事態宣言が発令された後の11日以降、一段と下げが進んだ。11都府県への拡大が決まった13日には1本当たり28円と、昨年4月の宣言発令時以来、9カ月ぶりに30円を割った。15日は35円とやや戻したが、平年(過去5年平均)比28円(45%)安と振るわない。
15日の市場ごとの相場も、前市から小幅に反発した東京こそ39円だったが、大阪と名古屋で27円となるなど、大消費地を抱える宣言発令地域での低迷が目立つ。
輪菊の主産地のJA愛知みなみは「上位等級の値が付かず、平均すると平年より1本当たり30~40円安い。需要の落ち込んだ状況が続けば、来年度は定期契約で販売できる量が減り、作型の変更も検討しなければならない」と訴える。
黄菊の主産県のJAおきなわも「直近まで冷え込みが強く、例年より出荷量が少ないのに相場は上向かない」と、白菊の低迷が黄菊にも影響していると実感する。
スーパーの加工束向けも低調だ。「花持ちする時季で、店の仕入れも進まない」(都内卸)。スターチスは平年比3割安、カーネーションやLAユリは同2割安など、仏花の相場低迷が深刻だ。切り花全体の平均価格も56円と過去5年で最安水準で推移。入荷量は平年以下だが、行事の中止や縮小で需要が減少し供給過多となっている。
別の都内卸は「輪菊は供給量が落ち着けば相場をやや戻す。しかし需要は当面戻らないので、安値の展開は避けられない」と、苦しい販売環境を見通す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月16日

8
クラスター発生2カ月 北海道・旭川厚生病院 地域医療の要 再開へ 組合員、住民ら安堵
新型コロナウイルスで全国最大規模の311人の感染クラスターが発生した北海道旭川市のJA旭川厚生病院が、診療を再開した。国立感染症研究所や保健所などの指導で徹底した感染対策を講じ、終息したと判断された。外来は予約制で対応し、2月から施設内健診も再開する。道北地帯の地域医療の要だっただけに、JA組合員や地域住民は安堵(あんど)している。(尾原浩子)
ホテル通勤、「風評」耐える
同病院は旭川市だけでなく、道北各地の自治体から住民らが頼りにする地域の基幹病院だ。医師や看護師らおよそ1000人の医療スタッフが働く。市内の他病院で感染が広がり、転院患者を受け入れるなど、コロナ禍の地域医療を守るために対応してきた。
専門家が「最高レベルの感染対策」をしてきたと評価する同病院だったが、昨年11月20日に陽性者を確認した。その後感染に歯止めがかからず、外来を停止するなど診療制限をせざるを得ない異例の事態となった。中でも、道北各地から多くの人が頼りにしていた産婦人科の外来診療と、年間800件を担ってきた分娩(ぶんべん)の休止は地域医療に深刻な影響を与えた。
同病院は対策本部を立ち上げ、国や北海道のクラスター対策班、保健所、近隣病院やJA北海道厚生連の他の病院の協力を得て、事態の収束を目指した。
その間、病院の職員は苦しい生活を強いられた。一部の職員は感染拡大を防ぐため自宅に帰らず、同厚生連が契約したホテルから通った。家族に会えない中でも使命感で医療に従事し、涙を流しながら働く職員もいた。職員自身が陽性者でないにもかかわらず、家族や子どもが職場や保育園に通えなくなるなど、厳しい状況が続いたという。
12月下旬には感染拡大の歯止めにめどが付いた。同月22日には旭川医大との連携で救急母体搬送、新生児救急搬送の一部再開に踏み切った。同月30日以降は陽性者の発生はなく、1月26日、森達也院長が記者会見で終息を宣言した。
北海道厚生連 中瀬省会長に聞く 懸命の対策効かず ウイルスと壮絶な闘い
JA北海道厚生連の中瀬省会長に28日、終息までの経緯や受け止めを聞いた。
JA北海道厚生連の中瀬省会長
──クラスターが発生した理由は。
発生した理由はまだ分かっていない。しかし、感染者を最初に確認した時はほぼ満床状態で、市内の他の医療機関でもクラスターが発生していた。転院も難しく、陽性患者と感染していない患者を分けるのが困難だった。
目に見えないウイルスの感染防止は非常に難しく、国立感染症研究所や保健所の指導を受けながら対応したが、感染者数が多いこともあり、感染に歯止めがかからなかった。クラスターが発生した時点で一部の診療を残し、診療を休止した。北海道厚生連のネットワークで他の厚生病院、本部からも応援スタッフが対応に当たった。
感染拡大は医師や看護師が悪いわけでは決してない。森院長が会見や会議で「申し訳ない」と謝罪する姿を見て、とてもつらかった。ある職員が泣きながら感染症の専門家である恩師に「どこが悪かったのか」と訴えていたと聞いて、自分も涙が出た。一生懸命やっているのに、それでも抑えきれない。ウイルスとの闘いは壮絶だった。
──診療再開をどう受け止めますか。
診療制限で地域住民ら多くの人に迷惑をかけ、本当に申し訳なかった。ゾーニング対策や検査の拡充など徹底し終息に至り、ここまで来られた。
私はもち米を作る農家で、病院に精通しているわけではない。今回、命を預かる病院職員の使命感と存在の大きさを、改めて知った。毎日の朝夕のウェブ会議で、森院長、看護部長、事務部長らがどうやって終息させるかを真剣議論しているのを聞き、心が震えた。病院は単なる建物ではなく、たくさんの立場の人が集まって地域医療を守っていることを痛感した。
地元(JA北はるか)から病院までは車で2時間かかるが、診療再開で地元の組合員から「ほっとした」「待ち望んでいた」と聞き、本当にこの病院は道北の地域を守っているのだと痛感した。まだ受け入れの制限はしているが、再開を伝えられてよかった。
上川地区13JAの組合長会をはじめとする全道各地のJA、組合員、子どもたち、地域住民、職員OB、厚生連にお世話になったという患者、関係者ほか、多くの人から支援を頂いた。物資や寄せ書きなど、温かい支援に心から感謝している。
──改めて国や組合員に伝えたいことは。
厳しい状況だが、国や道、自治体からの支援のおかげで経営が成り立っている。長期戦なので、息の長い支援を国や道などにお願いしたい。
組合員や住民には、ちょっと油断すれば感染が広まることを知ってほしい。多人数の会食を控え、マスクや手洗いは徹底し、みんながちょっとずつ辛抱する。流行させないという努力をみんなですることが、コロナ対策の一歩になる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月29日

9
学給に和牛続々登場 需要新たに3000トン コロナ対策の農水省事業活用
全国各地の小・中学校の給食に和牛が相次いで登場している。新型コロナウイルスの影響で冷え込む消費を喚起しようと、農水省の学校給食提供推進事業を活用した取り組み。同省によると、活用される牛肉は最大3000トンに上る見通しだ。数億円規模の需要が生まれた産地や、年間生産量の1割に上る販路を確保した産地など、各地で一定の成果を上げる。ただ、依然として在庫が積み上がり、継続的な対策が欠かせない。(北坂公紀)
同事業は、新型コロナウイルス対策として4月に成立した2020年度第1次補正予算で財源を確保した。学校再開に合わせて、5月から順次、提供が始まった。
兵庫県では10月から、最高級ブランド和牛「神戸ビーフ」が小・中学校の給食に登場した。サイコロステーキや焼き肉、牛丼などメニューはさまざまで、来年3月にかけて県内1086校で約60トンが提供される。「神戸ビーフ」の年間生産量(約1500トン)の4%に当たり、取引額は加工費なども含めて6億円に達するという。
牛肉を手配する兵庫県食肉事業協同組合連合会は「ロースやヒレなど、ステーキ向けの高級部位も提供する。両部位は外食需要の低迷で特に影響を受けており、在庫解消への効果は大きい」と期待を寄せる。
同事業で牛肉のまとまった販路を確保したのは石川県だ。同県では7月から、県のブランド和牛「能登牛」の提供を開始。約30トンが消費される見通しで、「能登牛」の年間生産量の1割に上る規模となる。県は「新型コロナ禍で和牛消費が落ち込む中、新たに需要を創出する同事業は有意義だ」と強調する。
他にも、「鳥取和牛」を提供する鳥取県は「訪日外国人の需要が見込めない中、(同事業で)大きな効果が出ている」と説明。「米沢牛」などを提供する山形県は「(給食で使う牛肉の)取引額は1億円を超え、地域への経済効果は大きい」と指摘する。
同省は、同事業の対象人数を約1000万人と想定。上限の1人300グラムを単純に掛け合わせると、同事業で最大3000トンの需要が生まれる計算となる。
新型コロナの影響で和牛の在庫は積み上がっている。国産牛肉の冷凍在庫量は、前年同月を4割(3000トン)上回った5月から減少傾向にあるが、依然として2割上回る水準にある。
同省は「(同事業で)在庫解消に一定の効果が期待できる。子どもへの食育にもなり、将来的な和牛の需要開拓にもつながってほしい」(食肉鶏卵課)と、期待を寄せる。
<ことば> 学校給食提供推進事業
食材費の掛かり増し分を助成することで、学校給食での国産農畜産物の利用を後押しする事業。牛肉は100グラム1000円を上限に助成し、1人当たり計300グラムまで対象となる。当初は提供回数を3回までとする要件があったが、見直しでなくなった。地鶏や果実、水産物も対象となる。国産農林水産物等販売促進緊急対策事業(予算額1400億円)の一環。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2020年11月04日

10
実習生ら対象 外国人入国停止 人手不足深刻化も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は14日、ビジネス関係者らに例外的に認めていた外国人の新規入国を一時停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれており、昨年11月から今月10日までにベトナム、中国などから実習生約4万人が入国していた。入国制限で生産現場の人手不足に拍車がかかる可能性があり、農水省は影響を注視している。
農水省 支援活用促す
政府は、コロナの水際対策の入国制限を昨年10月に緩和し、全世界からのビジネス関係者らの入国を再開。感染再拡大を受けて12月28日には一時停止したが、中国や韓国、ベトナム、ミャンマーなど11カ国・地域のビジネス関係者らの入国は例外的に認めていた。だがこの措置も14日から、宣言解除予定の2月7日まで停止した。
この例外措置の対象には技能実習生も含まれる。出入国在留管理庁の統計によると、例外措置で入国したのは、昨年11月から今年1月10日までに10万9262人。うち技能実習生は4万808人で、全体の37%を占める。留学などを上回り、在留資格別で最多だった。
国別に見ると、ベトナムが3万6343人、中国が3万5106人で、うち技能実習生はベトナムが2万911人、中国が9322人。農業分野の技能実習生も含まれるとみられる。11カ国・地域に限定後の12月28日~1月10日にも、技能実習生として計9927人が入国している。
農水省は、農業にも影響が及ぶ可能性があるとみる。昨年3~9月は2900人の技能実習生らが来日できず、人手不足が問題となった。今年の見通しは不透明だが、「外国人を受け入れている経営は全国的に多い」(就農・女性課)として状況を注視する。一方、同省は技能実習生の代替人材を雇用したり、作業委託したりする際の労賃などを一定の水準で支援する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を3月末まで延長。農家らに活用を呼び掛ける方針だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月15日
