[農村NEXT 変革のパートナー](4) 都市生活者 “小さな生き方”共感 

ヤギを飼育する萬田さん(左)と小農を学ぶ仲間。萬田さんは専業農家やその家族だけでなく、幅広い層に小農の価値が浸透してきたと感じる(鹿児島県霧島市で)

顔見える関係 自然との共存


 規模だけを追い求めず、自分が管理できる範囲で稼ぎ、地域や都会の人とつながる。「小農」と呼ばれる農業の在り方に都市生活者らのファンが増えてきた。2015年に誕生した「小農学会」の共同代表を務める、鹿児島大学名誉教授の萬田正治さん(76)の解説によると、経営面積の大小ではない。「小農は暮らしや生き方、地域とつながっている。そして現代の小農は、家族や専業農家だけでなく、主婦や都会の消費者ら食に関わる全ての人が関わって成り立つ」。萬田さんはこう考える。

 持続可能な農業の在り方を研究してきた萬田さん。第一線を退いた今は、現場からその在り方を追求しようと鹿児島県霧島市の集落に住み、1ヘクタールの田んぼや10アールの菜園を耕し、ヤギや鶏を飼育する。

 昨春、萬田さんが開講した「霧島生活農学校」。専業農家だけでなく、主婦や学生、兼業農家、都市住民ら年間74人が学ぶ。「小農の小農による小農のための学校」がコンセプトで、米作りや座学、農業実習など幅広く学ぶ内容。農業技術や経営発展のノウハウだけでなく、小農の精神性や多面的機能の価値を次世代に残すことが設立の意義だ。

 同市の主婦、梶原フミ子さん(62)も同学校で学ぶ一人。「家族や仲間と、収穫や食べる喜びを分かち合う。金もうけが最終目的ではなく、持続的で幸せな生活を送りたいから農業をするという考えに共感する。食べる物を顔が見える範囲で共有して自然にあらがわないのが、私が考える小農」

 梶原さんは若い時、高齢者福祉施設で働いていた。時間で区切った働き方、機械的に食事の世話をこなす仕事に、疑問があった。その疑問は、小農を尊ぶ思いにつながる。だから今は、毎週のように学校を訪れ、萬田さんや仲間と語り合う。

 農村は理想郷ではない。家畜を飼育すれば毎日の仕事があり、農地を襲う災害は防ぎようがない。萬田さんは農業の本質的な厳しさも実感するものの、作物の成長など小さな幸せをかみ締める日々を送る。

 梶原さんのように小農に共感する人は、「農的暮らし」や定年帰農も含め、農業に関心を抱く都市生活者や若者に増えてきた。萬田さんは、こうした仲間が新時代の小農のパートナーだとみる。「過疎化、高齢化と言われても農村はしぶとい。政府は規模拡大を進めるが、小農に社会の展望を見いだす専業農家以外の人が多く、手応えがある」と萬田さん。小農学会も会員が200人を超え、JA職員や都市に住む消費者の賛同が目立つ。

 1・2ヘクタールの棚田で米を作る同県姶良市の門田信一さん(62)も同学校に関わる。農家がもてなす交流ではなく、棚田オーナー制度や直売などで都会との関係づくりを模索する。「都会の消費者と交流することで、里山が維持できる。里山を支えるのが小農。家族や住民だけでなく、仲間を増やせば小農はもっと広がる」。門田さんは確信する。
 

持続性を重視 林業にも波及

 
 大規模経営が一般化する林業でも、小農に通じる「自伐型林業」が広がる。木材の伐採や搬出を自ら行う環境保全と採算性を両立した林業だ。

 初期投資も低く持続的であるとして、田園回帰の流れを追い風に実践者は全国で推定2000人に上る。目先の金や結果だけを追い求めがちな時代。長期的な視点で山を思いながら稼ぐ林業に、他人の山を借りて自伐型林業を担う移住者や若者が目立つ。

 自伐林業を支えるのも、実践者だけではない。自伐型林業推進協会の上垣喜寛事務局長は「僕らが展開していることは、林業の枠にとどまらない。どうやって地方で暮らしを成り立たせるかという課題に向き合う小農と深く結び付く」と考える。

 福祉やスポーツ分野との連携を進め、都市住民、デザイナー、研究者ら多くの“応援団”とつながり、広がっていく自伐型林業。上垣事務局長は見据える。「規模拡大を推進する政権を、現場からの行動ではね返したい」

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