食道楽の彼らしい

 食道楽の彼らしい。〈鮎(あゆ)はあれど鰻(うなぎ)はあれど秋茄子(あきなすび)〉。きょうは、正岡子規の命日「糸瓜(へちま)忌」である▼先の句は、松山・愚陀仏庵(ぐだぶつあん)に夏目漱石と同居中の様子を詠む。彼は漱石のお金で勝手に鰻などを出前した。あれやこれやと味比べをし、やっぱり旬の秋茄子だよなと結論付けるちゃめっ気ぶり。子規が学生時代に漱石と出会ってから、今年で130年になる。日本文学の二つの巨星は今なお輝き続ける▼子規に触れる喜びはこの上ない。全てに新たな発見があり、学びがある。枯れることのない言の葉の“泉”を備えた人だった。〈糸瓜咲て痰(たん)のつまりし仏かな〉。「糸瓜忌」の由来となった絶筆3句の一つ。あすは彼岸の入り。子規の命日とも連なる。暑さ寒さも彼岸まで。同じ〈しき〉と読む、子規の命日と四季の移ろいが重なり、大気が入れ替わる▼〈牛飼がうたよむ時に世の中のあたらしき歌おほいに起る〉。伊藤左千夫のこの短歌は、師の子規に大いに激励される。歌人・左千夫の誕生である。左千夫は都市近郊で増えていた搾乳業を営んでいた。歌は明日へと歩む牛飼いの誇りをも表す▼そして、子規が〈一ヒ(さじ)のアイスクリムや蘇(よみがえ)る〉と詠んだのは120年前。牛飼い、アイスクリームの文字を見ると、子規と朝ドラ「なつぞら」が結び付く。
 

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