基本法 JAの位置付け 総合事業 今こそ実践 福井県立大学教授 北川太一

北川太一氏

 新しい食料・農業・農村基本計画を巡る議論が、大詰めを迎えているようであるが、その中でJAは、どのように位置付けられるのであろうか。
 

政策展開に疑問


 食料・農業・農村基本法が制定される前年(1998年)12月に、農水省による「農政改革大綱」が発表された。これは、政府・与党・関係団体などの政策合意として、政策推進のための具体的指針とされたが、JAについては、次のように記述されていた。

 「金融ビッグバンなどに対応して、事業機能の一層の強化や経営の効率化が求められている中で、農業者の協同組織として、農家農民のために各種事業を行う総合事業体としての本来の役割を十分に果たし得るようにする」(傍点引用者)

 そして、JAが「地域農業・地域社会の活性化の主体」として役割を発揮するために、①担い手育成など営農・経営指導事業の充実②生産対策に資する経済事業の推進③農地の流動化、耕作放棄地の解消等への取り組み④高齢者福祉等農村地域の生活の向上のための取り組み⑤審査能力の向上、人材の育成等を通じた農協系統信用事業の強化──が挙げられている。

 もちろん、JAの広域合併と系統組織再編、信用事業(JAバンクシステム)を中心とした制度的見直しを促していることは容易に想像できる。しかし、少なくとも、JAが「総合事業体」としての役割を発揮することが、農業や高齢者福祉も含めた地域社会の活性化のために重要であるとの認識があったことは確かであろう。

 基本法制定から20年。果たして、JAはこうした「総合事業体」(総合JA)として位置付けられ、政策が展開してきたであろうか。
 

ビジョン明確に


 農協法等の改正は5回行われ、JAバンクシステムの構築、経済事業改革、さらには近年の「農協改革」など、JAグループにとっては改革に振り回された20年ではなかったか。そこで描かれているJAの姿は、農家・農民のために各種事業を行う総合事業体ではなく、基本法が掲げる一部の理念に貢献する“農業専門的事業体”としての姿にすぎないのではないか。

 こうした状況を打開するためには、JAグループが「自己改革」を超えて、自主的・主体的努力を払わなければならない。

 一つは、自らが長年にわたって掲げてきた農業振興(それは、JA綱領で示されている)の理念をいま一度確認しながら、農業および食料問題の将来ビジョンを明確にし、それに貢献し得る協同組合としてのJAの姿をリアルに描くことである。

 あと一つは、組合員の暮らしも含めた地域社会の持続的発展に向けて、協同の仲間との連帯を重視する姿勢を積極的に示し実践することである。

 20年先の2040年、農協の姿は、どのように展望できるであろうか。

 きたがわ・たいち 1959年兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程研究指導認定退学。鳥取大学助手、京都府立大学講師などを経て現職。地域農林経済学会会長を務める。主な著書として『新時代の地域協同組合』『協同組合の源流と未来』などがある。

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