ふるさと納税大きな転機 地域を応援原点回帰へ

寄付者を集めて行った上士幌町の交流イベント。小椋JA組合長(左)らはナイタイ和牛を知人の家族に振る舞った(東京都内で)

 総務省が制度を抜本的に見直し法改正した「ふるさと納税」が、転換期を迎えている。農山村の自治体は、返礼品の魅力だけではなく、寄付者との関係を深める交流イベントなどを企画。特産品をPRしつつ、本来の目的である“地域を応援する制度”になるよう知恵を絞っている。
 

交流イベントで絆 北海道上士幌町


 2月半ば。北海道上士幌町が東京都内で開いた交流イベントには、ふるさと納税の寄付者や関係する都市住民らが集まった。横浜市の会社員、寺崎直也さん(58)、ゆかりさん(56)夫妻は8年前から同町に寄付する。

 ふるさと納税の「住んでいなくてもその地域を応援する」という趣旨に賛同し、町の特産品に魅力を感じたからだ。同省の見直しで返礼品の金額は減ったが、「ずっと寄付先を変えるつもりはない。上士幌はいつか訪れてみたい」と話す。

 イベントにはJA上士幌町や農家、牧場関係者ら70人もの同町の生産者が参加した。寄付者と交流した農家は「こういう交流はとても楽しいし、営農の励みになる」と歓迎する。

 同町の返礼品は、アイスクリームや「ナイタイ和牛」、ジャガイモなど農業の盛んな町ならではの特産品。これまで同町は人気自治体の上位に名を連ね、2016年度には寄付を年間21億円も集めた。

 だが、同省の制度見直しなどの影響で今年度は15億円程度になる見通しだ。返礼品にかけられる金額は、都府県に比べ送料の高い北海道は不利になるからだ。

 それでも、町の関係者の多くは見直しを歓迎する。竹中貢町長は「経費も削減しているので打撃はない。地方を応援するふるさと納税を持続させることが何より大切だ」と強調する。

 ジャガイモを返礼品に提供する同町の加藤照夫さん(55)は「節度を持って、より良い制度にしていくことが地域の役目。返礼品合戦になれば自治体が疲弊してしまう」と考える。

 JAの小椋茂敏組合長は「一時的に寄付額は減ってもまたすぐに戻ると思う。地域の魅力発信や交流を着実に続けてきたから大丈夫。ふるさと納税で地域が一体になっている」と話す。
 

自治体模索 関係人口育む契機に


 同省の制度見直しに、自治体は苦慮しながらも対応を模索する。

 高知県奈半利町は2018年度37億円の寄付があったが、19年度は激減し1割程度になる見通しだ。同町は「ルールの中で頑張っていくしかない。影響は大きいが保育料の無料化など続けていきたい」(地方創生課)とする。

 宮崎県都城市は、寄付額がトップにもなったこともある。法改正直後は寄付額が減額したが、現在は持ち直した。同市は「地場産の返礼品の魅力とこれまでの着実な取り組みが奏功し、寄付額は前年同月比で減っていない」(ふるさと産業推進局)と強調する。

 和歌山県湯浅町は2018年度(50億円)に比べ、今年度は5割減程度になる見通し。ミカンなどの特産品を持つ同町は「総務省の制度改正はやむを得ない。和歌山全体で盛り上げ、手を組んで頑張っていく」(ふるさと納税推進課)と知恵を絞り、近隣地域と共通返礼品などを設ける。

 同省によると、地域を応援したい気持ちで寄付する都市住民と農山村を同制度がつなげ、過疎地再生の財源にする自治体が増えている。農山村と関わる「関係人口」を育む契機とする自治体もあるという。

 一方で、方針の見直しや制度そのものに異論の声もある。ふるさと納税から除外となった大阪府泉佐野市は「効果的に寄付を集めることを考えれば、返礼品の競争は自然な流れで規制はおかしい」と同省に反論する。

 また、東京都もふるさと納税は税収を地方に移転するとして、制度そのものに反対している。
 

<メモ> 昨年6月新ルール


 ふるさと納税は古里や応援したい地域を選んで寄付する制度で、2008年に始まった。寄付すれば返礼品を受け取れる他、寄付額から2000円を引いた額が居住地の住民税などから控除される。豪華な返礼品競争の加速化に異論が出て、総務省は地方税法を改正し、2019年6月から「返礼品は調達額が寄付金の3割以下の地場産」「返礼品を含む経費の比率を寄付額の5割以下とする」などのルールを適用した。

 同省は返礼品や寄付の募集方法が適正かどうか確認し、問題のない自治体だけを対象に指定。このため大阪府泉佐野市などが指定から外れた。
 

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