集乳停止問題 制度の問題点洗い出せ

 生乳卸・販売業者が一部の酪農家からの集乳を停止していることは、畜産経営の安定という酪農制度の根幹に関わる問題だ。改正畜産経営安定法(畜安法)の課題が浮き彫りになったと言える。行き過ぎた規制緩和が原因との指摘もある。農水省は当事者間の迅速な紛争処理とともに制度の問題点を洗い出し、対応を急ぐべきだ。

 指定生乳生産者団体(指定団体)の一元集荷を撤廃し、生乳流通の自由化を促す改正畜安法が施行されてから2年となる。政府の規制改革推進会議が抜本改革を提起したことが発端だった。当初から「大多数の酪農家の負担の上に、一部酪農家の所得増となりかねない」「飲用シフトになり用途別生乳需給に混乱が生じる」など懸念の声が相次いでいた。そうした中で生乳の集荷を停止する事態が発生した。関係者からは「最初から懸念されていたことが起きた」との受け止めが強い。

 当事者である生乳卸のMMJは、契約している北海道東部の酪農家の一部の集乳を、品質の問題などを理由に停止した。国会や自民党部会、農水省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会でも取り上げられ、同省に実態把握と制度の検証、見直しなどを求める意見が出た。全国連、指定団体などで構成する中央酪農会議は25日の総会後の会見で改めて制度の点検を求めた。

 今後10年を見据えた酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)が31日、農相に答申される。この中で生産者、乳業メーカー双方の度重なる指摘を受け、指定団体の役割の重要性を強調した上で、「国は現場からの意見を踏まえ、制度を必要に応じて検証し適切かつ安定的に運用する」と明記した。今回の係争事案は単なる個別案件ではない。酪農家の生乳自由販売という制度改正後の運用の過程で発生した。制度問題として位置付けるべきだ。24日の畜産部会では生産者側から「あくまで酪農家目線での制度見直しを含め国は対応すべきだ」との指摘があったことも重く受け止める必要がある。

 酪農制度は、数時間で品質変化する生乳の特殊性を踏まえ、指定団体の一元集荷、多元販売という仕組みで、酪農家の所得を補償してきた。生乳販売自由化は需給不均衡による生乳廃棄のリスクと背中合わせだ。何度か指摘されている「いいとこ取り」は長続きせず、結局は持続可能な酪農の根幹を揺るがす。

 また、MMJが、国の補給金対象の受け皿である改正畜安法の第1号対象事業者として適格かどうかも焦点になるとみられる。指定団体と同様、同法冒頭に掲げる「需給の安定等を通じた畜産経営の安定」に責任を負う立場だ。同省は、集乳停止に至った原因を究明し、同事業者の要件に照らして精査すべきだ。

 今回の集乳停止は昨年から取り沙汰されてきた。同省はいつ事態を把握し、どう対応してきたのか。情報の透明性が欠かせない。国の責任は重い。

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