英国が対米FTA検討 米国産鶏肉禁止のEU 迂回輸入農家が危惧

 英国は、欧州連合(EU)からの離脱を契機に、米国との自由貿易協定(FTA)の交渉準備を進めている。一方、米国が英国に食品安全基準の緩和を求める可能性が浮上し、EU諸国の農家や消費者は、危機感を強めている。特にフランスは、米国産鶏肉の迂回(うかい)輸入に強く反対している。
 

安全規制緩和恐れ 消費者も反発


 英国は3月2日、国民向けに米英FTAの内容を公表した。同文書では、国内農産品などを保護する一方で、広範な関税の引き下げや撤廃を明記した。EU離脱の成果をいち早くアピールするために早期の妥結を目指し、3月中に協議に入るとした。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で交渉はまだ始められていない。

 だが、米国が英米FTA交渉と並行して英国に食品安全基準の緩和を強く要請するとみて、EU各国の農業者や消費者の不安が高まっている。最も注目を集めるのが、米国産鶏肉の安全基準だ。

 英国は、これまでEUの食品安全基準の下で、米国産鶏肉の輸入を禁止していた。米国産鶏肉は殺菌工程の一環として塩素処理をするが、EUの食品安全基準では、化学薬品を使った消毒は食品への残留物を生み出し、健康を損なう危険性があるとして禁止している。英国BBC放送やガーディアン紙などは、米国側がEUの食品安全基準に対し「(危険視は)科学的証拠に基づいていない」と不満を主張していると報じた。

 フランスでは2月から3月にかけて、多くの農家・消費者団体がインターネットを通じて署名活動を展開した。ギョーム農相やマクロン大統領に、米国産鶏肉をフランスに輸入しないことを求めている。米英FTA締結後、フランスに米国産の塩素処理した鶏肉が迂回輸入される可能性があるからだ。

 パリ市で消費者団体の副代表を務めるバレンティン・フランソワさん(38)は「米国の安価な輸入品が英国からフランスなどEU域内に入って来ると食の安全が脅かされる」と危機感を強め、農相に向けた要請書への署名を集めたという。

 ロイター通信は、フランスのル・マン市郊外の養鶏農家らは、安価な米国産が迂回輸入されると鶏肉価格が下落する懸念があることを紹介。25万羽を飼養する養鶏農家のイザベル・レバルールさんは「EUのアニマルウェルフェア(動物の快適性を考慮した飼養法)基準にのっとって鶏舎の密度を下げた。苦心して生産した鶏肉価格が、塩素処理した安価な米国産で下がるのは耐えられない」と訴えたという。

 英国は、EU離脱を契機に、これまでのEU基準を守らないことが可能となった。そのため、英国最大農家組織である全国農民組合(NFU)は、日本農業新聞の質問に対し「FTAで、これまで違法としてきた食品が輸入されることは許せない。政府の動向を注視していく」(広報担当)と返答している。
 

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