[あんぐる] 絶壁で育む“一服” 奥長島のだんだん茶畑(静岡市)

絶壁のような斜面に築いた「奥長島のだんだん茶畑」。緑色と白色のコントラストが映える(静岡市で)

 「静岡茶発祥の地」と伝わる静岡市葵区足久保地区。同地区にある奧長島集落で最奥に位置する高低差約30メートルの急斜面に、茶の木と石垣で描かれた、しま模様が現れる。50年ほど前、地元農家が約10年かけて築いた「奥長島のだんだん茶畑」だ。荒廃の危機を迎えたこともあったが、地元住民やボランティアが地域を代表する農の景観を守り続けている。

 面積約30アールの茶畑の持ち主は、同地区に住む福島京子さん(79)。1966年から家族総出でミカンからの改植に取り組んだ。近くを流れる足久保川の河原から一輪車で石を運び、背負って山を登り、一つずつ積み上げた。「朝から日が暮れるまで毎日、石垣を造った。若かったから大変だとも思わなかったけど、よくやったものだと思うね」と振り返る。完成後は、日当たりの良い東南向きの立地を生かし、品質の良い茶を生産した。

 しかし、2005年に夫の正さんが69歳で亡くなり、14年には京子さんも管理が難しくなった。茶畑は存続の危機を迎えた。
 
福島さん家族が約10年がかりで積み上げた石垣
 
 保全活動に立ち上がったのは、会社勤めをしながら趣味で茶を栽培し、福島さんとも交流があった勝山育子さん(66)。「苦労して造った茶畑を荒れ地に戻したくない」と管理を引き継いだ。17年にはボランティアを募って「奥長島のだんだん茶畑まもり隊」を結成。現在はメンバー10人とともに、枝切りや除草などをして景観の維持に取り組む。

 また、収穫時期の5月には都市住民を対象とした手摘み体験を催す。体験に参加したことのある浅沼みちるさん(41)は「静岡市内に住んでいるからには、一度は茶摘みをしてみたかった。無心になってできる作業なのでストレス解消にもなる」と笑顔を見せた。

 勝山さんらは今後、畝やあぜの幅を広げる考えだ。経験の浅いボランティアでも作業しやすく、機械収穫を安全に行えるようにするのが狙い。将来に引き継いでいく準備にも余念がない。(富永健太郎)

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