[新型コロナ] 人手不足解消へ「特定技能」1年 手続き煩雑「桁違い」 苦労の連続…定着するか

特定技能で働くコソルさん(左)。通訳や共に働く日本人の支えで、地域に溶けこんで選果場で働いている(熊本県阿蘇市で)

 外国人が就労する新たな在留資格「特定技能」が始まって1年。選果場の人手不足などに悩むJAでの受け入れも少しずつ始まった。人手不足解消に期待は高いものの、先進的に受け入れる農家やJAですら、手続きの煩雑さや許認可の遅さなど多くの課題を訴える。地域間格差の問題も浮上。コロナ禍のあおりも受け「特定技能は定着はしないのではないか」といった懸念する声が上がっている。

 特定技能の外国人18人が働く熊本県のJA阿蘇。選果場でカンボジア人のサー・コソルさん(27)が「熊本の皆さん、とても心優しく対応してくれる。給料は2人の弟の大学の進学費に送金するの」と流ちょうな日本語で説明しながら、慣れた手付きでイチゴの選果作業に励む。農作業や選果は楽しく、JAが用意した宿舎も快適だという。

 JAで通訳として雇用されるカンボジア人のチット・リティさん(34)は「ここで転職したい特定技能の外国人はいない。お金だけではなく、働く環境や暮らしやすさが素晴らしい」と話す。

 JAでは、特定技能の作業はアスパラガス、トマト、イチゴなど選果場が中心で、育苗センターの農作業もある。11月の農閑期の仕事確保が今年の課題だが、就労した外国人は、人手の少ない選果場の即戦力として働き、農場でも実習生のリーダー役として活躍する。JA営農企画課の副田慶太さん(38)は「実習経験がある特定技能の人たちは本当によく働いてくれる」と感謝する。

 昨年10月から特定技能を受け入れてきた同JA。特定技能の受け入れ数は全国のJAの中でもトップクラスだ。選果場の人手不足が悩みだった中、熊本地震で交通網が寸断し拍車が掛かった。技能実習生では選果場で働くことは難しいため、特定技能に注目。10年以上前から技能実習生の監理団体を担い、通訳も雇用するなど受け入れ環境の基盤はあった。

 しかし、実績がある同JAでも、特定技能の申請は苦労の連続で、何度も各方面に掛け合った。JA管内の組合員も9人の特定技能を受け入れ、合計27人の申請を担った副田さんは「技能実習生とは桁違いに手続きが煩雑。許可申請の壁が高い。専任体制をつくらなければ受け入れは難しい。今のままでは特定技能は定着しない」と厳しさを実感する。さらにコロナ禍が直撃。7月に2人の受け入れを計画していたが、入国が難しい情勢だ。

 手続きや生活支援などを担う登録支援機関になったJA熊本中央会によると、JA阿蘇も含め2JAが特定技能を受け入れ2JAが準備を進める。ただ、コロナ禍で先行きは不透明という。
 

専任担当者配置が必要


 特定技能は、研修が主目的の実習生とは異なり、就労のため作業内容の幅が広く、肉用牛などでも受け入れることができ、期待が高かった。しかし制度開始から1年、当初の政府想定より受け入れは進んでいない。

 北海道によると現在、登録支援機関となるJAは三つ。人手不足の中で特定技能への期待が高いものの、新型コロナウイルスの影響で予定通り入国できない事態が発生している。JA北海道中央会は、コロナ終息後の受け入れ拡大に向けて、「制度の理解醸成、申請時の書類など事務的な負担の軽減が課題」とみる。

 特定技能として6人を雇用する鹿児島県JAあおぞらでは、専属の担当者を置いて入管の手続きや生活支援などを担う。JAは「選果場などで想像以上に頑張って働いてくれている」と話す。雇用は専属の担当者を置いているからこそ受け入れができたという。
 

評価調書巡り地域格差も


 地域間格差の課題もある。実習生から特定技能に移行するには、技能検定などの試験に合格しているか、前実習先などに書いてもらう評価調書が原則必要だ。ただ、ある監理団体は「他の地域の評価調書を欲しいと頼んでも全て断られる。特定技能より技能実習生を受け入れた方が良い」、野菜産地の農家は「3年の実習生を多く受け入れる地域に特定技能が偏る」と不満を漏らす。

 出入国在留管理庁は「現場の課題を踏まえ、相手国との調整、手続きの煩雑さの解消や制度の周知に力を入れたい」と話している。
 

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