[新型コロナ] 災害時の“密”防止 行政越え避難所確保 徳島2市町

避難所となる廃校でコロナ禍の避難を話す西の地地区の住民。小野地区から買った米を備蓄する(徳島県阿南市で)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、災害時の密集を避けるため避難所の増設が各地で課題となっている。徳島県美波町西の地地区は、隣の阿南市小野地区に避難所を確保し、南海トラフ地震などの災害に備える。防災をキーワードに漁村と農村が手を携え、共に地域づくりを進める。自治体の枠を越えた命を守る交流がコロナ禍の課題解決につながった。
 

関係づくりへ日頃から交流


 日本最古とされる津波碑があり、由岐湾に面する西の地地区。500人が暮らし、高齢化率は5割。1人暮らしの高齢者が増える中で、南海トラフ地震への対応が住民に共通する課題だ。集落内に避難所はあるが、地震で津波が襲来すれば避難所は足りなくなる。そこで、昔から交流してきた、山一つ隔てて歩いて行ける阿南市の小野地区と3年前に協定を締結した。

 小野地区は南海トラフ地震の影響が西の地地区に比べると少ないとされ、災害時は避難所を共有するか貸し出す考えだ。元々防災訓練や清掃活動を共に行い、地道に関係を築いてきたことが協定につながった。

 「避難所の増設や地域の防災力向上に特効薬はない。いざというときは小野地区が支えてくれる安心感は大きい」と、美波町役場に勤務し、西の地地区に住む浜大五郎さん(47)は胸を張る。


 自治体の枠を越えた漁村(西の地地区)と農村(小野地区)の連携は、防災だけでなく支え合いの関係に発展している。小野地区で栽培した米を西の地地区が定期購入したり、バーベキューなどを行ったりして交流。小野地区自主防災会の会長で、タケノコなどを作る農家の中川信行さん(71)は「普段の付き合いが災害時に生きる。助け合ってきた歴史が今も続いている」と話す。

 西の地地区は防災を軸に地域づくりを進めてきた。例えば自治会組織の西の地防災きずな会。女性ら6人が4年前に遊休施設を活用してカフェを立ち上げ、ランチを提供する。手作りの食事と語らいの場を目当てに電車に乗って訪れる高齢者もいるほどだ。

 リーダーの山田由美さん(68)は「災害時に共助の力を発揮する基盤がこの地域にある。カフェのもうけはないけど、地域のよりどころになっている」と考える。防災訓練を楽しく続けるため祭り形式にしたり、防災を学ぶ大学生を受け入れたりもする。コロナ禍の中、避難所はまだ足りず話し合いをしてきた。

 活動は、若者の心も引き付ける。西の地防災きずな会が受け入れる地域おこし協力隊で、東京都出身の渡邊雄二さん(33)は「隣の人の名前も知らない都会暮らしでは考えられない。過疎・高齢化は進んでも地域の強さ、優しさを感じる」と実感する。

 政府は自治体に密集を避けるため避難所の増設を求めるが、施設の確保や運営スタッフの不足などの課題もある。

 名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫センター長はコロナ禍の避難所増設について「漁村と農村、都市と農村、JAと漁協など災害の危険性が異なる地域の連携が重要だ」と指摘。日頃から顔が見える関係づくりや地域の協働が鍵を握ると話す。さらに「命を守る防災を入り口につながれば、農作物の購入や農業体験の受け入れなどにも発展する。防災は地域づくりでもある」と強調する。
 

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