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基本計画 多様な農業後押し 小規模を再評価 農水省が課題整理
農水省は23日の食料・農業・農村政策審議会企画部会の会合で、食料・農業・農村基本計画の見直しに向けた課題をまとめた。大規模な担い手の育成だけでなく、小規模農業も含む多様な農業を後押しする必要性を強調。中山間地域を念頭に小規模な経営体や兼業農家、家族経営を地域政策の面から再評価し、これらの経営継承を支援する方向性も示した。
政府は有識者から成る同部会で見直し案を検討。来年3月末に新たな計画を閣議決定する。
同省は、これまでに会合で上がった意見から課題を整理。……
日米協定最終試算 自給率も「維持」 対策実効性が焦点
農水省は23日、日米貿易協定発効後の農林水産品への影響試算の最終版を公表した。生産額の減少などの数値はそのままだが、国内対策によって「引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持される」と明記。食料自給率も維持されると見込んだが、具体的な根拠や道筋は不透明だ。2019年度補正予算案などに盛り込んだ国内対策を現場に浸透させ、影響を回避できるかが焦点になる。
同省は10月に試算の暫定版を出していた。これを踏まえ、国会は日米協定を審議し、12月に承認。同省は審議で「国内対策の効果で国内生産量が維持される」と答弁してきた。
国内対策を盛り込んだ予算案を閣議決定したことを踏まえ、試算を確定させた。
農林水産品で最大1100億円、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)の影響を合わせると同2000億円とする生産減少は、最終版でも変更はない。
補正予算案では、日米協定などの対策に3250億円を計上。和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」などを盛り込んでいる。
自給率はカロリーベースの37%、生産額ベースの66%がそれぞれ維持されると見通し、水田や畑作の作付面積や多面的機能も失われないとした。
国会審議で野党は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)など、他の協定の影響も含めた試算の提出を要求していた。同省は、こうした新たな試算を「予定していない」(政策課)としている。
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豚コレラワクチン 推奨地域追加の8都府県 まず一安心…でも 怖い感染イノシシ
農水省が豚コレラ(CSF)の予防的ワクチンを接種できる推奨地域を拡大した。新たに対象となる8都府県の養豚農家からは、ワクチンの接種を歓迎する一方、野生イノシシの感染が広がっていることなどから、衛生管理の徹底へ気を引き締める声が相次いだ。
防疫 気引き締める
今回、推奨地域となった千葉、茨城、栃木の各県は豚の飼養頭数で全国の5、6、7位を占める畜産県だ。
[茨城]
茨城県養豚協会会長の倉持信之さん(67)は、「県内の養豚農家は、ひとまず安心したと思う」と話す。自身、坂東市で母豚600頭を飼育する一貫経営を行う。防疫対策も万全を期す考えだが費用もかさむため、「国や県に支援してもらいたい」と要望する。
[栃木]
「10月から県に要請していたので、念願かなって喜んでいる」と話すのは栃木県養豚協会会長の星正美さん(67)だ。那珂川町で母豚150頭、人工授精用の雄80頭の種豚を飼育する。「(非接種地域への移動が制限される)種豚と人工授精用精液の流通に支障がないよう、万全な対策を講じてほしい」と話す。
[千葉]
千葉県でナイス・ポーク・チバ推進協議会会長を務める旭市の岩岡喜久男さん(62)は、母豚500頭を飼育し年間1万2000頭を出荷する。「ワクチンで豚コレラを防げるなら防ぎたい。接種にかかる費用負担も、国や県に引き続き要望をしたい」と話す。
[東京]
「トウキョウX」の生産地、東京都。TOKYOX生産組合の澤井保人組合長は、ワクチン接種の推奨地域となったことに「まずは一安心」と胸をなでおろす。非接種地域には種豚の移動ができなくなるが、ワクチン接種を見越して他県の生産地には原種豚を生産できるよう別系統の導入などを呼び掛けていた。推奨地域となった県での生産もでき「今後はやってみないと分からない部分もあるが、トウキョウX自体の生産はおおむね大丈夫」との見方を示す。
[神奈川]
隣接する山梨県で豚コレラが発生した神奈川県養豚協会理事長の山口昌興さん(58)は、清川村で母豚700頭を飼育し年間1万4000頭を出荷する。「発表を聞いて『ようやくワクチンを打てる』という思いだ。ただ県外では野生イノシシの感染が広がっているのでそれを封じ込めることが大事。農場の衛生管理を徹底し豚を守りたい」と気を引き締める。
[新潟]
新潟県は来年1月中旬をめどにワクチン接種を始める。約2カ月で初回接種を終える予定で、県内約13万5000頭が対象となる。県は1頭当たり330円かかる接種手数料を初回について全額免除する方針だ。
県養豚協会会長で600頭を飼養する新発田市の相馬政春さん(64)は「接種できるよう国に要望していたので大歓迎。しかし、近年イノシシが増え、油断はできない。防疫措置を継続したい」と、気を引き締める。
西日本では、京都と奈良の2府県が新たに接種推奨地域に加わる。
[京都]
京都府は現在、国に提出する接種プログラムの作成を進めている。府は「隣県での豚コレラの発生を受け、府内生産者からワクチン接種を求める声が上がっていた。年内か年明けにもプログラムを提出したい」(畜産課)と話す。
同プログラムでは、府内43施設で飼育される約1万1000頭が初回接種の対象となる見通し。九つの養豚場の約1万500頭が大部分を占める。府は「府内の全養豚農家からは既に、ワクチン接種への合意を得ている。1月中の接種開始を目指したい」と話す。
[奈良]
奈良県は「県内で豚コレラが発生する前に、感染拡大防止に向けた対策ができる」(畜産課)と好意的に受け止める。
県内では15施設で飼育される約5800頭が初回接種の対象となる見込み。七つの養豚場の約5750頭がほとんどを占める。県は1月にも、豚コレラ発生県に接する県北部から接種を始める方針。県は「農家負担の軽減に向け、ワクチンの接種費用などの支援も考えたい」と話す。
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繭ネズミにちゅー目 干支人形 縁起良く 新潟県村上市
新潟県村上市の養蚕農家の女性たちでつくるシルクフラワー工房は、来年の干支(えと)のネズミの人形を作り、新年の準備に入った。1匹のネズミは繭2個から作る。くるりと巻いたしっぽが愛らしい。同工房の横井栄子代表は「干支の始まりにふさわしい縁起の良い置物にできた。制作は3巡目に入り、干支をそろえて楽しむファンも多い」と話す。
同工房は蚕を飼育して繭を作る女性の組織で、「養蚕の灯を消したくない」と、シルクフラワーとしてブーケや花クラフト作品も手掛ける。
干支の人形を作り始めたのは1996年。そこから数えて2巡し再びねずみ年となった。メンバーが人形のデザインを工夫しながら作り続けてきたという。
ネズミは白を基調にし繭の丸みを使ってかわいらしさを出し、しっぽにも個性が出るようにした。JAにいがた岩船女性部からも制作依頼が舞い込み出張教室を開いている。横井代表は「養蚕のことを知ってもらうと人形が一層いとおしく見える」と思いを語る。
人形はネズミ1匹550円、ケース入り1560円と2200円の2種類。問い合わせは同工房、(電)0254(72)0387。
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畜産クラスター事業 都府県要件を緩和 中小支援へ配慮 農水省
農水省は、畜産地帯で機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業の支援要件を緩和することを決めた。これまで飼養頭数などを地域平均以上にする農家を支援対象にしていたが、中小規模の農家が支援を受けやすくなるよう、都府県、北海道それぞれの平均規模以上という要件を新設した。日米貿易協定の発効などを見据えて、増頭・増産につながる生産基盤の底上げを目指す。
同事業は地域ぐるみで畜産・酪農の収益力向上に取り組む産地を支援する。農家やJA、市町村などでつくる地域協議会が、売り上げや所得の向上、生産コスト削減などの目標を盛り込んだ畜産クラスター計画を策定。国は、計画に位置付けられた担い手に対し、施設整備や機械導入の費用を2分の1以内で補助する。
課題だったのが、規模要件だ。現状では支援を受けて施設整備や機械導入に取り組んだ後、地域の平均規模以上の経営にする必要がある。大型経営が多い地域では平均規模も大きくなり、中小・家族経営が支援対象になりにくい。
2019年度補正予算案に盛り込んだ同事業では、都府県、北海道それぞれの平均規模以上に増やせば支援対象にする。もともと中小規模が多く、平均規模が小さい地域もあるため従来の要件は残し、選択できるようにする。
政府は、日米協定の発効を見据え、国内対策の指針となる「TPP(環太平洋連携協定)等関連政策大綱」を改定。「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を打ち出した。これに基づき、同事業の要件を緩和した。大型経営や大規模化だけに依存せず、中小規模を含めて、地域の生産基盤底上げを目指す。
収益性向上に向けた調査事業や、経営継承支援対策も含めて、19年度補正予算案に関連財源として409億円を計上した。
中山間地、輸出拡大、環境などの優先枠はそれぞれ継続する。
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養豚で働く実習生へ 防疫の重要性 母国語冊子で訴え まずベトナム語 「分かりやすく」事業協同組合
日本養豚事業協同組合は、養豚場で作業する外国人実習生に家畜防疫の意識を定着させるため、作業内容や目的をイラスト入りで対訳した冊子を作った。実習生が多いベトナム語版を発行し、中国語版、ミャンマー語版を作成中。養豚場だけでなく、アフリカ豚コレラ(ASF)などの侵入を防ぐため海外から肉を持ち込んではいけないことや、罰則があることなどの注意も盛り込んだ。研修や日々の作業に役立ててもらう。
冊子では防疫作業の他、肥育豚舎や繁殖豚舎など生育ステージごとの管理方法、日常での注意点など24項目について、イラスト付きで解説。外国語に対応する日本語も、併せて掲載した。
豚舎の入り口ごとに長靴を履き換えることや、消毒はふんや食べ残した餌などを除いてから行うこと、豚の異常はすぐに報告することなどを列記。故郷の友人と食事をする際などには日本で販売している豚肉を使い、「故郷から肉や肉製品を持参、郵送しないで」と呼び掛ける。
A4判、10ページで、フルカラー。農場で日常的に使ってもらうことを目的に、汚れが拭き取りやすい紙を採用した。巻末には主に使う用語を振り仮名付きの日本語とベトナム語、英語、中国語で並べて紹介する。
同組合の松村昌雄理事長は「分かりやすさを重視して、必要なひと通りの作業を網羅した。農場の衛生レベル向上へ活用してほしい」と話す。
同組合の会員以外にも、1部330円(送料別)で提供する。問い合わせは同組合、(電)03(6262)8990。
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20年度予算案 水田活用交付金 高収益作物に重点 野菜、果樹へ転換促進
政府は、2020年度農林水産関係予算案のうち、転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金3050億円(前年比165億円減)の配分を見直し、野菜や果樹などの高収益作物や輸出米に重点化した。飼料用米などの作付けが減ったことを踏まえた対応だが、野菜や果樹だけでは米の需要減に見合う転作拡大は難しい。並行して飼料用米や麦、大豆などの戦略作物への転換を推進できるかが課題となる。
減額の飼料用米作付け増なるか
19年度は当初、同交付金に3215億円を計上していたが、飼料用米の作付けが減少して予算を使い切れず、2961億円に減額補正された。そのため、20年度予算は、減額後に比べれば89億円増えたことになる。
今回の予算編成では、これまで大幅な拡大を見込んでいた飼料用米など、全国共通の戦略作物の作付面積を堅く見積もり、配分額を150億円削減。地域で決める加算措置や多収品種への配分も73億円減らす。一方、高収益作物の拡大に対する支援を手厚くし、配分額を58億円増やす。
ただ、飼料用米をはじめ主要品目の交付単価は維持する。予算上の配分は「あくまで見積もりで実際に交付される金額とは異なる」(農水省)。例えば、飼料用米などが予算配分以上に拡大した場合でも高収益作物の予算の一部を飼料用米に回すことも可能だという。
政府は18年産から国による主食用米の生産数量目標の配分を廃止し、産地主体の需要に応じた生産に移行した。だが、飼料用米の作付面積は17年産の9万2000ヘクタールをピークに減少。18年産は8万ヘクタール、19年産は7万3000ヘクタールまで減った。
こうした中、財務省の財政制度等審議会は11月、飼料用米の財政負担の圧縮へ「高収益作物への転換支援にシフトすべきだ」との建議を提出していた。
自民党は7月の参院選公約に、飼料用米などの本作化に向けた「水田フル活用の予算は責任を持って恒久的に確保する」と明記。だが、飼料用米や麦、大豆などの作付け減少が続けば予算削減圧力が一層強まるのは必至だ。政府と産地を挙げて作付け増へ反転させられるか。20年産が、米の需給安定と畜産農家への国産飼料の安定供給に向けた正念場となりそうだ。
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宇沢弘文の農業・農村論 「農社」の理念今こそ 早稲田大学教授 片山善博
本年の城山三郎賞は、佐々木実氏の『資本主義と闘った男-宇沢弘文と経済学の世界』(講談社)に決定した。城山三郎賞は、故城山三郎にちなんで小説、ノンフィクションなどの中の名著を顕彰するもので、角川文化振興財団が主催する。
この時期、城山三郎賞を通じて宇沢弘文に光が当てられたのはとても喜ばしい。宇沢は米国のシカゴ大学やスタンフォード大学などで数理経済学者として令名をはせ、帰国してからは東京大学経済学部教授などを務め、その間数多くの業績を挙げた。
これまで必ずしもよく知られていないが、宇沢は農業や農村に深い関心を寄せ、貴重な認識や提言を残している。
効率性で語れぬ
まず、農業は自然に人工的改変を加えて生産活動を行うが、工業部門とは異なり、大規模な自然破壊を伴うことなく、生物との直接的関わりを通じて生産がなされる点に基本的な特徴があるとの認識を示す。
また、とりわけわが国の農業は自然環境を保全する機能を持つとともに、農村が存在することによって、社会全体の安定性を維持する上でも中核的な役割を果たしてきたという。そうした認識に立って宇沢が特に強調したのは、こんな特徴を持つ農業を工業など他の分野と同列に取り扱ってはならないということだった。しゃにむに効率性基準を適用することの誤りと愚かさである。
宇沢は、農村は「社会的共通資本」だと言う。社会的共通資本とは、人々が日々の生活や生産活動のために欠かせない社会全体の共有資産のことである。それには水や空気などの自然環境、道路などのインフラ、そして教育や医療などのシステムが含まれる。
この社会的共通資本は権力による官僚制的統制の下においてはいけないし、市場原理にさらしてもいけない。豊富な経験や見識、それに専門的知見を備えた人たちによって管理・運営されなければならないと説く。
文化水準も維持
社会的共通資本としての農村は、一国の社会的、文化的水準を高く維持するためには不可欠だと宇沢は言う。農村で生まれ育った若者の人数が常に一定水準に保たれ、都市で生まれ育った若者と絶えず交流することによって、優れた文化的、人間的条件を生むというのである。これは国家にとってとても重要である。
こうした考えの基に、宇沢は新しい農村づくりとして「農社」を構想したことがある。農社は、自由で進取な性格を持ち、農業を中心に加工、販売、研究開発などを幅広く手掛ける組織のことである。
もちろん、農社を含めて宇沢の言説は理想に過ぎるとの批判はあろう。ただ、農業や農村が行き過ぎた資本主義と新自由主義の猛威の中で効率主義や利益至上主義にさらされている今日、宇沢の理念や思想には学ぶべき点がすこぶる多いように思う。
この際、『資本主義と闘った男』と共に、宇沢自身の著作である『社会的共通資本』(岩波新書)などを読まれることをお勧めする。
かたやま・よしひろ 1951年岡山市生まれ。東京大学法学部卒、自治省に入省し、固定資産税課長などを経て鳥取県知事、総務大臣を歴任。慶応義塾大学教授を経て2017年4月から現職。著書『民主主義を立て直す 日本を診る2』(岩波書店)。
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都府県増産てこ入れ 乳牛購入や就農相次ぎ支援事業 酪農乳業団体も 政府も
都府県の生乳生産量を増加に転じさせるため、政府や酪農乳業団体が、来年度の事業で生産基盤強化に向けた特別支援策に乗り出す。酪農従事者を十分に確保しながら、1経営体当たりの乳用牛飼養頭数の増加を促す。堅調な牛乳・乳製品需要に応えられる生産基盤の確立と、需給の安定化を進める。
Jミルクによると、生乳生産量は1996年度の866万トンをピークに減少し、2018年度は728万トンになった。19年度は北海道がけん引し、全国で前年度比0・5%増の732万トンと4年ぶりに増産する見通し。だが、都府県は同1・9%減の325万トンと7年連続で減少。全国に占める割合も約44%にまで落ち込む見込みで、都府県酪農の基盤強化が急務だ。
Jミルクは17年度から3年間、酪農乳業産業基盤強化特別対策事業(計15億円)を展開。乳用牛の輸入支援や育成生産基盤の強化を図ってきた。同事業を来年度から5年間(計25億円)延長し、家族酪農と都府県の生産振興を主目的とした内容に転換。研修などを通じ、新規就農者の技術習得や酪農家のネットワークづくりも支援する。
酪農家でつくる中央酪農会議(中酪)も19日、来年度からの新事業で新規就農関係者のための情報提供サービスを始めることを発表。地域別、団体別で実施する支援事業を取りまとめ、希望者が事業に参加しやすい環境づくりに力を入れていく。
政府は、19年度農林水産関係補正予算案に、都府県酪農を対象にした乳用後継牛の増頭奨励金を組み込んだ。離農に歯止めをかけ、中小経営の規模拡大を促すため、購入牛1頭当たり27万5000円を交付する。20億円を計上し、約7000頭の後継牛を、余力のある北海道から調達する。環太平洋連携協定(TPP)など相次ぐ大型貿易協定の対策費として計上した。
業界関係者は「増頭支援事業が強化されることで、当初予想より早く、都府県酪農が増産に転じる可能性が高くなった」と期待を寄せる。
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AI契約で指針 ノウハウ流出防止へ 農水省
農水省は、AIを搭載した農業支援ソフトやロボット農機の開発に協力する農家の技術流出を防ぐため、農家とメーカーが結ぶべき契約のガイドライン案を作った。AIの利用目的や期間、農家への対価を契約書に明記するよう示した。流出対策には、利用地域の制限や流出時の損害賠償などを盛り込んだ。農家の不安を払拭(ふっしょく)し、AI農機などの開発・普及を加速させる。
AIは自動収穫ロボットや病害虫診断、農業技術習得支援システムなどに使われる。開発には栽培ノウハウ・技術をデータとして取り込む必要がある。しかし農家には、開発に協力したAIが意図しない使われ方をされたり、基礎となったノウハウが海外流出したりする懸念があった。
案は契約時の確認ポイントを網羅。利用範囲を明確にし、競合産地にノウハウが漏れないよう守秘義務の対象にする。提供する農家への対価の支払いも盛り込んだ。メーカーが使う契約書のひな型も、農家向けと国や地方公共団体向けの2種類を用意した。
ガイドライン案は同省の有識者検討会で了承された。同省知的財産課は「国の事業によるAI技術開発はガイドラインに即した契約を結ぶよう促し、普及を進めたい」としている。早ければ来年1月中にパブリックコメント(意見の公募)を行い、年度内に策定・公表する。
農業のスマート化は「栽培データの収集」と「AIによるデータ利用」が欠かせない。同省は農家の栽培ノウハウを知的財産と位置付け、昨年12月に収集に関する「データ契約ガイドライン」を策定。今回のガイドラインで、AIに関するデータの収集・利用両面でそろうことになる。
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複数の直接支払制度統合 中小農家 支援厚く 韓国
韓国は2020年度から、複数の直接支払制度を統合した公益型直接支払制度を始める。これまでの直接支払制度では、米農家や大規模農家に偏る弊害があった。農業、農村の多面的機能の維持に貢献する中小農家への支援効果も薄れているため見直した。
韓国はこれまで、農家の所得安定を目的に①水稲面積②水稲の価格下落③畑作④条件不利地⑤環境に優しい親環境⑥高齢者を対象とした経営移譲⑦景観保全──の直接支払制度があった。
しかし、これらの直接支払金の8割が米農家に集中し、他品目の農家とのバランスが良くなかった。米農家への直接支払金を見ると、6・7%を占める大規模(3ヘクタール以上)農家に38・3%が支払われた。一方で72・3%を占める小規模(1ヘクタール未満)農家には28・8%しか支払われていない。
そこで政府は20年度から、直接支払金制度を統合し、公益的な機能を重視する直接支払制度に切り替える。作物別、規模別の不均衡を改善するのが狙い。特に多面的機能の保全では、中小農家の役割が大きいとして、規模が小さいほど手厚く支援する。
農水省に当たる農林畜産食品部の20年度の予算は、前年比7・6%増の約1兆6000億円と、例年にない巨額を確保。その中に新制度への転換財源として2400億円を盛り込んだ。
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過疎地「連携」4割 医療など課題解決へ 総務省調査
総務省は、過疎地域の817市町村を対象に、それぞれの連携状況を調べたアンケートの結果をまとめた。地域活性化に向け、他の市町村と連携して事業を実施する予定がある市町村の割合は4割程度に上った。自治体の枠組みを超え、医師確保や鳥獣被害対策、特産品開発などの課題解決を進める動きが一定程度広がっている。
アンケートは今夏、817の過疎関係市町村を対象に実施した。「過疎地域振興のために今後実施、拡充すべき他の市町村との連携事業はあるか」と聞いたところ、「ある」は305市町村(37%)、「ない」は512市町村(63%)だった。
あると回答した自治体の事業内容は、「地域公共交通」が最も多く、次いで「医療」、「交流、移住」、鳥獣被害や特産開発など「産業振興」が続いた。ないと回答した市町村の主な意見は「重要だが具体的な予定がない」「近隣市町村と状況が異なる」「連携にメリットがない」などだった。この他、既に「連携している」との声もあった。
連携する際の課題を聞いたところ、「事業の中心となる市町村の事務的・人的負担」が最も多かった。この他、自治体によって事業の必要性や認識の差に隔たりが大きいといった課題が出た。自由記述では「調整役を県が担ってほしい」といった要望があった。
同省は2021年3月末で過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)が期限を迎えることを踏まえ、過疎地域の課題解決に向けて自治体間の広域連携に着目。今後は、アンケート結果を踏まえ、どのような分野での連携が必要となるかや、連携を後押しするための都道府県の役割などを整理し、新たな過疎法制定の議論の参考にしたい考えだ。
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米アイス ハラール対応済み ドバイへ JA常陸が初輸出 茨城
茨城県のJA常陸は、地元産の米を原料に作った「米醗酵アイス」をアラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ輸出した。JA全農いばらきによると、東京港で船積みし12月上旬にドバイに到着。日本食品を扱う現地スーパーで近く売り出す。同国への食品輸出はJAグループ茨城で初。
JA常陸直販課と全農いばらき輸出推進室は、都内で4月に開かれた「プレミアム・フードショー」に参加し、米醗酵アイスを出品。ドバイのバイヤーが高い関心を示した。JA側が「常陸太田市産の米(コシヒカリ)と豆乳で作った動物性脂肪分ゼロの、オンリーワンのアイス」とアピールし、10月に輸出が正式に決まった。
米醗酵アイスは「コシヒカリ」を発酵させたピューレを使い、牛乳や卵の代わりに豆乳を使用している。内容量1個80ミリリットルで、バニラ味、小豆味、古代米味、栗味の4種がある。ドバイ向けに船積みしたのは5ケース(1ケース80個)。ムスリムの食事戒律「ハラール」の認証は数年前に取得している。
ドバイは中東屈指の国際都市で観光業も盛ん。JA常陸と全農いばらきは、「米醗酵アイスが現地で受け入れられ、輸出が増えることを期待している」としている。
JA常陸は11月にも「ゆずこんにゃくゼリー」のフランスへの輸出を実現している。
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[活写] 令和の迎春 間もなく出番
長野県安曇野市で、稲作農家らが門松作りに追われている。
大きめの空き缶に地元産水稲「コシヒカリ」のわらなどを巻いて土台を作り、切った竹筒や松の枝などを挿して固定。扇や紅白の幣束で飾って仕上げる。高さは60センチと150センチの2種類。12月上旬から作業を始め、27日までに300個を地域の企業や家庭に届ける。
安曇野シルバー人材センターに所属する農家らが、冬の仕事として21年前に始めた。今年は、10人がJAあづみのライスセンターの倉庫で作業に励んでいる。代表の降幡昭男さん(79)は「来年は災害もなく平穏な年になるよう、願いを込めて作っています」と話す。(富永健太郎)
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[未来人材] 37歳。東京から移住、炭職人に 憧れの道で文化継承 井上鎮夫さん 宮城県七ケ宿町
町の9割を森林が占める豪雪地帯の宮城県七ケ宿町。雪が町を覆う中、黒く染まった手で汗を拭う炭職人がいる。東京から移住した井上鎮夫さん(37)だ。炭焼きに心を奪われ、縁もゆかりもないこの地に移住。ブランド化した「七黒炭」で、かつての炭焼き産地を新参者が盛り返す。
「一般の炭より堅く、断面が均等。燃焼時間が長く、爆跳しにくい」。井上さんがそう言って特徴を説明する炭は、県内キャンプ場や道の駅に出荷する。2019年11月には県の農林産物品評会特産物部門で県知事賞に輝いた。「高齢化で職人は4戸まで減った。この文化を途絶えさせたくない」と話す。
東京で生まれ育った。高速道路の設計に携わり、残業が多く終電で帰る毎日。14年に結婚したが、妻との時間を取れず寝に帰る日々だった。「電車に揺られる度に心が削られた。何のために働いているのか。自問自答していた」と振り返る。
気付けば30代半ば。改めて人生について考えた。「自分の手で道を切り開きたいと思った」と井上さんは言う。妻と話し、田舎で暮らそうと決めた。募集していた町のインターンシップに参加して、15年に移住を決めた。
井上さんは「炭職人と出会って人生が変わった」と話す。町では背中を丸めてつえを突いているのに、山に入れば腰をぴんと伸ばし、チェーンソーをかついでササッと木を切る職人。そんな姿を見て「“かっこいい”。体が震えた」。
自分の時間を犠牲にして、お金を稼ぐために働いてきた。息苦しかった。「職人は好きな山、炭について一日中考えていた。自分も好きなことに一生懸命になりたい」。憧れを実現しようと決意した。
井上さんに教える新山弘さん(87)は「何でも吸収する素直な努力家。後継者がいなくて炭焼きは終わりだと思っていた。町の希望だ」と評価する。
井上さんは「新山さんにはまだまだかなわないし、冬の厳しさには慣れない」と苦悩する一方で「妻と息子とゆっくりご飯を食べられるのが、この上なくうれしい」と幸せをかみしめる。(高内杏奈)
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農業労働力 想定外の減 新たな人材どう確保 高齢離農響き7万人のずれ
新たな食料・農業・農村基本計画の議論が進む中、農業就業者数の減少が課題になっている。農業就業者数は196万人で、現行計画の「農業構造の展望」の政府想定を7万人下回っている。高齢農家の大幅な減少が主因。農業法人の雇用者は想定以上に増えたが、他産業との労働力争奪戦で今後の雇用増はあまり期待できない。将来にわたって農業生産の維持に必要な労働力をどう確保するかが焦点になる。
農業就業者数は、販売農家の世帯員のうち主な仕事を農業とする「基幹的農業従事者」と、農業法人と7カ月以上の雇用契約を結ぶ「常雇い者」(外国人技能実習生を含む)の合計。同省が農業の労働力を表すものとして5年に1度の農林業センサスを基に独自に算出している。
最新の2015年の農業就業者数は196万人で、5年間で23万人減り、同年の政府想定を7万人下回る。79歳以下は想定より4万人多かったが、80歳以上が想定を11万人も下回ったためだ。
一方、同省は、農業生産の維持に必要な農業就業者数を約90万人としており、現行の食料・農業・農村基本計画の「農業構造の展望」では、25年に69歳以下で101万人の確保を掲げる。
69歳以下の農業就業者は10年で124万人。従来の減少傾向が続けば25年に87万人になる見込みだったが、毎年、新規就農者を倍増させて減少を抑える目標を立てた。15年時点では想定より1万人多い112万人で、同省は「新規就農の施策が一定効果を発揮した」(経営局)とみる。ただ、基幹的農業従事者は想定より2万人少なく、常雇い者が想定より3万人多く、常雇用の増加で補った形だ。
今後、他産業との雇用の奪い合いが激化する可能性がある。実際、別の統計では17年に農業の常雇い者数は減少に転じており、農家の減少を雇用増で補い続けるのは難しい情勢だ。
また、農業生産の維持に必要とされる90万人は、担い手に農地の8割の集積することを前提にしている。だが15年の集積率は52%、18年でも56%にとどまる。農地を誰がどう担い、労働力をどう確保するか。現場実態に即して構想を練り直す必要がありそうだ。
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8都府県 追加指定 豚コレラワクチン接種
農水省は20日、豚コレラ(CSF)の予防的ワクチンを接種できる推奨地域に、新たに8都府県(茨城、栃木、千葉、東京、神奈川、新潟、京都、奈良)を加えることを決めた。既に接種する12県と合わせて20都府県が推奨地域になった。感染した野生のイノシシの確認範囲が広がっていることや、人や物の移動によるリスクを踏まえた。
同日の牛豚等疾病小委員会で決めた。同委では野生イノシシの感染地域が1年間で東へ200キロ、西へ60キロ広がっていることを懸念。感染イノシシの拡大状況を踏まえ、今後、野生イノシシへの感染が想定される地域は、先行して推奨地域とすべきだとした。
ワクチンは12月中に250万頭分が製造され、今後も増産があるため、十分な数が確保できる見通し。栃木、茨城、千葉の3県は、来年2月からの接種で調整を進める。予防効果を高めるには、接種はイノシシからの感染リスクが高い地域から進める必要があるためだ。
東京、神奈川は同日、接種プログラムを国に提出。東京は島しょ部を除く全域、神奈川は全域に接種する内容で、同委が承認した。
江藤拓農相は20日の閣議後会見で、豚コレラ対策の飼養豚へのワクチン接種推奨地域の拡大を受け「ワクチン接種後もCSFの感染リスクは常に存在する」と指摘。関係府県と連携し、「飼養衛生管理基準の徹底を現場に周知徹底する」と強調した。愛知県のワクチン接種農場で豚コレラが発生したことについて、当該農場の周辺農場に感染が広がっていないか調査するよう同県に指示した。
イノシシ向け空中散布開始 2月まで17都府県
農水省は20日から、豚コレラ対策として野生イノシシ向けの経口ワクチンについて、自衛隊のヘリコプターで散布を始めた。同日は栃木県日光市など県内の約5000ヘクタールに2500個を散布。ウイルスの拡散を防ぐ「経口ワクチンベルト」を構築する一環。
同日はヘリコプターに自衛隊員の他、同省と県職員、イノシシの専門家が同乗。1平方キロ当たり50個を目安に、イノシシが生息していると見られる地形を見極めながら、地上から高さ約50メートルの位置から散布した。
冬季(12~2月)に約20万個を、17都府県(茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、新潟、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、京都)で散布・設置する計画。
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配合飼料700円上げ 全農1~3月
JA全農は20日、2020年1~3月期の配合飼料供給価格について、前期(10~12月期)に比べ、全国全畜種総平均で1トン当たり約700円値上げすると発表した。値上げは、19年1~3月期以来の4期ぶり。円安や国際的な海上運賃の上昇が続くことなどが見込まれるため。
トウモロコシのシカゴ相場は9月の1ブッシェル(約25キロ)380セント前後から、一時400セント前後まで値上がりした。……
A-FIVE廃止へ 新規投資 20年度末終了 農水省
農水省は20日、同省所管の官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)を廃止すると発表した。2020年度末で新規投資業務を終了し、早期解散を目指す。廃止の理由について、江藤拓農相は同日の閣議後会見で、「計画通りの累積損失を回収し、収益を確保することは困難と判断した」と述べた。
2020年度当初予算案では、関連予算の要求を取り下げ、今後、新たな予算要求はしない方針。……
放棄地でラベンダー 癒やしの畑 新潟で広がる
耕作放棄地を活用し、無農薬でラベンダーを育てる取り組みが新潟県で広がっている。アロマセラピー講師や生産者ら有志でつくる「新潟ラベンダー物語」は、新潟市など県内各地でラベンダーを栽培。景観を守るだけでなく、精油(エッセンシャルオイル)など多彩な商品を開発し、イベント・セミナーを通して魅力を発信する。福祉施設とも連携し、精神障害者らに土や花の香りに触れてもらうことで心身を癒やし、就労率向上にもつながっている。(雫石征太郎)
栽培で体調回復
「どのくらいの長さで切ればいいの」「まだ香りが残っているね」。12月中旬、新潟市の畑で、会員が談笑しながら剪定(せんてい)作業に汗を流していた。高齢で耕作できなくなった畑の所有者との仲介役となった同市の農家、諸橋弥須衛さん(79)は「都市部から人が来て花を育ててくれて、地域住民も喜んでいる。これからも続けてほしい」とエールを送る。
ラベンダー栽培は、遊休地を活用しようと2014年からスタートし、現在約20人の会員が活動している。自治体や福祉事業所にも賛同の輪は広がり、耕作放棄地の他、公園やワイナリーなど県内で1000株以上のラベンダーを植えている。
長岡市の就労移行支援事業所「Oneながおか」は、近隣の耕作放棄地15アールを借り、ラベンダー250株を栽培する。同事業所の保坂宏美副施設長は「ラベンダーの香りの効果で、作業する利用者の集中力が高まり、よく眠れるようになった。体調が回復して、就職率の向上にもつながっている」と評価する。
県内企業と連携
新潟ラベンダー物語は精油だけでなく、蒸留水や匂い袋、文具などを製作する他、新潟麦酒と共同でラベンダーのビールも販売。匂い袋には、新潟の伝統織物「亀田縞(じま)」「十日町紬(つむぎ)」を使うなど、さまざまな業種と連携しながら6次産業化に取り組む。
販売収益は畑の維持管理費に充てる。ラベンダーの魅力を発信するため、「ラベンダーフェスタ」「アロマの日」といった催しを毎年企画。会員が講師となりアロマセラピーの活用法などを紹介するセミナーを開催する。毎回500人程度が新潟市内外から訪れる。
11月には、環境省が環境や社会を良くする取り組みを表彰する「グッドライフアワード」で実行委員会特別賞「環境と福祉賞」を受賞。「消費者のニーズではなく、社会のニーズに沿った取り組み」と評価を受けた。
新潟ラベンダー物語の真木美智代代表は、うつ病による休職者増加が社会的な問題となる中、アロマセラピーと園芸活動の必要性を指摘。「ラベンダーには人と人、心と心を結ぶ力がある。畑が自分を取り戻す癒やしの場になれば」と活動に意欲を燃やす。
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