[2019参院選] 7党党首ら地方演説 農政論戦 深まらず
2019年07月15日

参院選の選挙戦が激しくなる中、与野党7党の党首らは地方で何を訴えているのか、日本農業新聞は前半戦の各党首らの演説を分析した。農村部が多い改選数1の「1人区」では農政にも言及。ただ、与党は輸出など成果のPRが中心で日米貿易協定交渉などに触れることは少ない。野党は安倍農政を批判し、戸別所得補償制度の復活を訴えるが、熱の入れ方には差がある。年金や経済などに比べ農政は十分に争点化されていない。21日の投開票日に向けて、後半戦ではより深い論戦が求められる。
「大切なことは、しっかりと農家の手取りにつながっていくことだ」
安倍晋三首相(自民党総裁)は10日、山形県酒田市でこう声を張り上げた。地方の街頭演説では、まず地元農産物をPR。生産農業所得の増加や農林水産物・食品の輸出拡大を「攻めの農政」の成果として訴え、農家の所得向上を訴えるのが恒例。酒田市では米どころを意識し、米の中国への輸出拡大へ「制約は何とか突破していきたい」と意欲を示した。
安倍首相の演説時間は約18分。農政に割いたのは1分半だった。外交では、トランプ米大統領との蜜月関係を強調する一方で、農家が懸念する日米貿易協定交渉には触れなかった。
公明党の山口那津男代表は12日、福岡県北九州市で演説。農政への言及はなかった。
立憲民主党の枝野幸男代表は12日、新潟県長岡市で演説し「農業は単なる金もうけではなく、土地や水、緑を守り、国民の安全・安心な食料を支えている」と強調。戸別所得補償制度の復活・充実で農業経営を下支えすると訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、福島県川俣町の演説で、日米貿易協定交渉を取り上げた。5月の日米首脳会談冒頭、トランプ米大統領が8月に成果を発表できると発言したことを挙げ、「密約があるに決まっている」と指摘。8月には牛肉関税の引き下げなどの日本の譲歩が明るみに出る可能性があるとし、「うそをついたり隠したりする政治を変えて、正直な政治を取り戻す戦いだ」と訴えた。
社民党の福島みずほ副党首は11日、群馬県のJR高崎駅前で「農業や林業など第1次産業を守ることも大きな課題」と強調。安倍政権が進めた環太平洋連携協定(TPP)や種子法廃止などを問題視し「国民の生活が見えていない」と批判した。
野党の中で、農政に最も時間を割いたのは玉木氏。約7分間の4分の1に当たる1分43秒を充てた。枝野氏は稲作地帯での演説だったが、約9分中、言及はわずか38秒。福島氏も約19分中、52秒にとどまる。野党は農政で主張が近いが、一致して与党との対立軸にするまでには至っていない。
共産党の志位和夫委員長は10日に高知市、日本維新の会の松井一郎代表は11日に大阪府河内長野市で演説。農政に関連した発言はなかった。
与党 輸出拡大 成果PR
「大切なことは、しっかりと農家の手取りにつながっていくことだ」
安倍晋三首相(自民党総裁)は10日、山形県酒田市でこう声を張り上げた。地方の街頭演説では、まず地元農産物をPR。生産農業所得の増加や農林水産物・食品の輸出拡大を「攻めの農政」の成果として訴え、農家の所得向上を訴えるのが恒例。酒田市では米どころを意識し、米の中国への輸出拡大へ「制約は何とか突破していきたい」と意欲を示した。
安倍首相の演説時間は約18分。農政に割いたのは1分半だった。外交では、トランプ米大統領との蜜月関係を強調する一方で、農家が懸念する日米貿易協定交渉には触れなかった。
公明党の山口那津男代表は12日、福岡県北九州市で演説。農政への言及はなかった。
野党 日米密約 懸念訴え
立憲民主党の枝野幸男代表は12日、新潟県長岡市で演説し「農業は単なる金もうけではなく、土地や水、緑を守り、国民の安全・安心な食料を支えている」と強調。戸別所得補償制度の復活・充実で農業経営を下支えすると訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、福島県川俣町の演説で、日米貿易協定交渉を取り上げた。5月の日米首脳会談冒頭、トランプ米大統領が8月に成果を発表できると発言したことを挙げ、「密約があるに決まっている」と指摘。8月には牛肉関税の引き下げなどの日本の譲歩が明るみに出る可能性があるとし、「うそをついたり隠したりする政治を変えて、正直な政治を取り戻す戦いだ」と訴えた。
社民党の福島みずほ副党首は11日、群馬県のJR高崎駅前で「農業や林業など第1次産業を守ることも大きな課題」と強調。安倍政権が進めた環太平洋連携協定(TPP)や種子法廃止などを問題視し「国民の生活が見えていない」と批判した。
野党の中で、農政に最も時間を割いたのは玉木氏。約7分間の4分の1に当たる1分43秒を充てた。枝野氏は稲作地帯での演説だったが、約9分中、言及はわずか38秒。福島氏も約19分中、52秒にとどまる。野党は農政で主張が近いが、一致して与党との対立軸にするまでには至っていない。
共産党の志位和夫委員長は10日に高知市、日本維新の会の松井一郎代表は11日に大阪府河内長野市で演説。農政に関連した発言はなかった。
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生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい
生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい。今、フランス印象派の名品が来日中である▼英国が世界に誇る印象派の殿堂、コートールド美術館。あすまで東京都美術館で特別展を開いている。めったに国外に出ない傑作が多い。特にセザンヌの作品は故郷・南仏題材の物を中心に充実している。最晩年の未完の作「曲がり角」に驚く。画家の一徹さと執念が漂う▼来年、没後130年のゴッホ。オランダからパリに来て印象派に出会い、光と色彩の画風に変わる。死の前年の作「花咲く桃の木々」は穏やかで優しい。うろこ雲の空は点描画家スーラの影響か。農民の日々の営みを温かさを込め描く。浮世絵に刺激を受けたゴッホは、この作品にまだ見ぬ日本への憧憬(しょうけい)も重ねた▼印象派と言えば、モネと共に有名な〈幸せの画家〉ルノワール。今年で没後100年となり各地で特別展が相次ぐ。「靴紐(ひも)を結ぶ女」は、独特のふっくらとした女性が印象的で全体が赤みがかった色彩に。最後の情熱が絵に反映したのだろう。今回の特別展の目玉は印象派の父・マネの最晩年の傑作「フォリー・ベルジェールのバー」。絵には幾多の仕掛けや大胆な試み。印象派が花開く“起爆剤”となる▼圧巻の作品群に〈眼福〉の字が浮かぶ。そして感動が募る。
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2019年12月14日

イノシシ捕獲に手引 環境、農水省 ウイルス拡散を防止
環境省と農水省は、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)対策として野生イノシシの捕獲に関する防疫措置の手引を作成した。国がイノシシ捕獲の手引を作成するのは初めて。野生イノシシの捕獲を強化する必要がある一方で、捕獲でウイルス拡散の恐れがあることから、狩猟者に防疫の手法を徹底する。
手引では、これまで農水省がイノシシ捕獲に関して通知していた文言や特定家畜伝染病防疫指針などを踏まえ、捕獲作業の事前準備から帰宅後の対応までを写真と共に掲載した。
現地に到着し、わなの設置や見回りをする前に手袋や長靴を装着するなど、作業ごとのポイントを解説。手袋は二重に装着し、内側のゴム手袋は洋服の袖口を覆うように着用するなど詳細に注意を呼び掛けた。
防護服や靴底の泥落としに使うブラシなどの持ち物チェックリストも併記している。環境省は「イノシシを捕獲する中で、豚コレラが拡大してしまうことを防ぐため、あらゆる捕獲に関する防疫手法をまとめた。手引を参考に、各地域で必要な防疫対策をしっかり行ってほしい」(野生生物課)と呼び掛ける。
手引は、アフリカ豚コレラが発生した際にも活用できる。
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2019年12月13日

花の水揚げ正確に 絵文字17種配送ラベルに印字 オークネット・アグリビジネスが開発
インターネットによる花き取引事業を展開するオークネット・アグリビジネスは、切り花の特性に適した水揚げ方法を示すピクトグラム(絵文字)を開発した。同社によると、花き業界では初の試み。商品の配送ラベルに印字し、ひと目で理解できるようにする。知識や経験を問わず、小売店の従業員が誰でも正しい水揚げができるようにし、消費者への長持ちする花の提供につなげる。
切り花に水を吸わせる水揚げは、品質維持に欠かせない工程。水や湯を使う、茎を割る・たたく・焼くなど、さまざまな方法がある。品目や品種、スプレイ咲きかスタンダード咲きかなど、商品ごとに方法も異なる。
同社は、衣服の洗濯表示マークに着想を得て、絵文字開発に着手。尾崎進社長は「正しい方法を分かりやすく伝えれば、誤った方法による商品ロスや、店員の教育負担も減る」と、ニーズを語る。
ひと目で方法を連想できる絵文字を、17種類作った。同社が扱う約140商品を対象とし、商品配送ラベルに印字する。同じく印字した2次元コード(QRコード)を読み取れば、湯揚げにかける時間、水揚げ後の水管理など、より詳しい情報を得られる。
千葉県の生花店「U・BIG花倶楽部(くらぶ)」は、絵文字を参考にブバルディアで水揚げを実験。従来は空切りしていたが、茎を焼いた上で湯に漬ける方法に変えた。「水の含み具合に差が出たためか、葉に張りが出た」と効果を実感する。
開発に当たり、札幌市で生花店「フルーロン花佳」を経営し、各地で品質管理の講習を開く薄木建友氏が監修を務めた。薄木氏は「農家も小売り側の水揚げの仕方が分かれば、出荷時の管理の参考になる」と、産地にも有益な情報となることを期待する。
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2019年12月13日
JA事務効率化 デジタル化で職場改革
働き方改革が問われている。JAも企業と同様に、労働生産性と従業員満足度を高めていかなければ、経営の安定も意欲ある職員の確保も難しい。そのためにはまず、日常業務の効率化が必須だ。改善効果の高いロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を活用し、働きがいのある職場づくりを進めたい。
JA職員の仕事実態を見ると、紙と電話とファクスへの依存度が高い。これに対し企業の世界では、情報通信技術(ICT)を使った業務のデジタル化が急ピッチで進む。インターネット交流サイト(SNS)での従業員間の打ち合わせやネット会議は当たり前。パソコン事務の自動化、顧客データの活用、人工知能(AI)による業務改善にも積極的だ。このままではJAの職場はさながら「旧人類化」することが心配される。
業務のデジタル化に向けてやるべき課題は多いが、取り組みやすいのはRPAを使った効率化である。高齢の組合員が多いため、JAの業務は手書きの注文書でのやり取りが一般的だ。それを職員がパソコンで購買システムにデータ入力するが、繁忙期ではその作業に忙殺されるといったことが起こる。
こうした事務作業を軽減するのがRPAだ。手書きの注文書をスキャナーで読み取り、光学式文字読み取り装置(OCR)でデータ化する。これだけでも人力頼みの入力作業を大幅に効率化できる。データを使ってのさまざまなパソコン事務は、PRAを使えば自動化できる。
RPAは元々、ホワイトカラーの仕事を効率化するためのシステムである。データ入力以外にも、データの加工処理、正誤照合といった仕事で威力を発揮する。高度なプログラミングはできないが、やり方が決まっている定型業務、繰り返しの業務といった分野に向いている。
数年前にメガバンクの事務部門で活用が始まり、一般の企業でも広く導入が進む。JAでの普及は遅れていたが、JA山口県下関統括本部が2018年に始め、資材の予約注文の入力時間を8割削減するといった活用実績を上げた。現在、営農指導や信用渉外力の強化、内部統制の効率化など、幅広い業務の改善を目指すプロジェクトが稼働している。
メリットは事務効率化だけではない、同本部は生産部会の会員一人一人にその人だけの営農指導書を作成し、数字に基づく経営相談を実施。会員から喜ばれている。RPAで資料作成のプログラムを組み、営農指導員に負荷をかけずに作ることができる。資料作りに費やす時間を現場での営農指導の仕事に振り向けられることは、本人の意欲向上にもなる。働き方改革にまでつながった事例といえる。
国産のRPAなら、導入費用はさほど高くはない。同本部には全国各地のJAから視察が相次いでいる。横展開による意欲の高い職場づくりを期待する。
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2019年12月12日
集落営農の持続性 広域連携と再編が鍵に
JA全中が開いた全国集落営農サミットは、これまでで最高の140人が参加した。存続の岐路に立つ集落営農組織の危機感を反映したものだろう。同サミットでの先進事例に学び、持続可能な地域農業確立へ広域連携と組織再編を急ぐべきだ。
第4回となる同サミットのキーワードは「広域化」「連携」「再編」の三つだ。総活役を務めた広島大学大学院の小林元助教は「生産基盤が大きく揺らいでいる。集落営農はあくまで手段。持続可能な地域に向け、今こそ知恵を絞る時だ」と強調する。JAグループは、今春の第28回JA全国大会で「集落営農組織間の広域連携、再編などによる規模拡大を支援する」と決議した。背景には、高齢化が進む中で地域農業の地盤沈下に歯止めがかからない実態がある。集落営農は「地域丸ごと」で農業を支える仕組みだ。だが、今の経営単位では存続が難しくなっている。
同サミットを肱岡弘典全中常務は「高齢化が進む中で集落営農組織は構造的課題を抱えている。米価変動リスクも高まる中で、情報交換を通じ今後の組織の在り方を考える大きな契機だ」と位置付ける。関係者に改めて衝撃を与えたのは、日本農業新聞の1面連載「ゆらぐ基 危機のシグナル」の10月4日付「集落営農の解散」だ。採算が悪化し集落営農組織の解散が増えている。今年2月現在の集落営農数は約1万5000で、前年より1%減った。組織が倒れたら、引き受けた農地が耕作放棄地になりかねない。
同サミットで発表された事例は、広域化、組織合併、あるいは地元JAと連携し別組織で試練に対応した。1集落単位では採算が取れず、コスト低減にも限界がある。最も深刻なのは、高齢化が進み、組織のリーダーやオペレーターの人材不足だ。
広島県東広島市高屋町の農事組合法人重兼農場は世代交代を一気に進め持続可能な集落営農を実践する先進事例と言えよう。同農場は設立から30年。発足時に生まれた30歳の山崎拓人さんが組合長を務める。前組合長は79歳。世代交代は、地域農業を守り次代につなぐ組織を最優先した結果だ。さらに個人―集落営農―共同組織の「3階建て」から成る広域連携の仕組みを作った。昨年、同農場を含めた地域内の5集落営農組織と地元JAで共同出資会社・ファームサポート広島中央を設立。その結果、より広域な農作業受託が可能となり、市内全域の農地維持が進む。
中山間地の岐阜県白川町にある農事組合法人ファーム佐見は3組織を合併した全国でも珍しい事例だ。組合員の意思統一や合併手続きでの曲折などは、再編による今後の新組織立ち上げの大きな参考になる。
今、重要なのは集落間連携による集落営農の新たな展開である。先進事例を参考に、地域の身の丈、サイズに合った地域農業の再生に知恵を絞りたい。
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2019年12月13日
農政の新着記事

[ゆらぐ基 広がる危機](1) 疲弊する青果物輸送 5年で運べなくなる
農村と都市を結ぶ農畜産物の物流が揺らいでいる。深刻なトラックドライバー不足や人件費高騰が理由だ。日々の食べ物を遠方に頼る消費者の暮らしに影響が出かねない。一方、農村の人手不足対策には政府がスマート農業の普及に力を入れる。大きな期待がかかるものの、全ての課題を解決する万能の技術ではない。食を支える現場を追った。
全国の青果物が集散する東京都中央卸売市場大田市場。午後7時、翌朝取引する青果物を載せたトラックが、全国各地から次々と到着する。運転歴20年以上の40代ドライバーは、複数個を結束した重さ9キロのミニトマトの箱をトラックから降ろし、指定パレットに積み込む。ナンバーの地名は「佐賀」。1000キロを超える道のりを走破した後、この重労働に当たる。
青果物輸送はトラックの荷台に直接荷物を載せる「じか置き」が多い。「手荷役に2時間、長い時は4時間以上かかる」。翌日は長野県に向かい、リンゴを積み、佐賀に戻る。「きつい仕事なので若手のなり手が少ない」とつぶやく。
「過重」で敬遠 時間外規制も
輸送業者の本来の業務は輸送で、荷物を受け取るのは市場側の作業だ。しかし、青果物輸送はドライバーがサービスで荷役を請け負う。産地でも積み込みを輸送業者が担う事例が多く、青果物は他の荷より負担が大きい。九州の物流業者は「青果物を敬遠する業者が増えている」と明かす。
輸送業者の負担を軽減しようと国は7月から監視を強化。荷物の出し手・受け手がドライバーに重い負担を強いた場合、企業・団体名を公表する。事務局の厚生労働省は「悪質な場合は指導する」との姿勢だ。
「産地と市場が変わらなければ、5年以内に九州から関東へ荷を運べなくなる」
福岡県内の輸送業者でつくる福岡県トラック協会の食料品部会役員らは明言する。2024年4月にトラックドライバーの時間外労働上限規制が始まるからだ。
現状、多くの産地がドライバーの長時間残業を前提に、市場に青果物を運ぶようトラックを仕立てている。福岡から東京に運ぶ場合、夕方に受けた荷物を翌日の夜までに届けていたが、規制後に同じ日数で届けるのは難しい。遠隔地ほど安定供給が難しくなる。
同部会部会長を務めるイトキューの中原理臣社長は「青果物流通は、輸送会社だけの問題ではない。産地と市場も自分事として受け止め、合理化に向けた話し合いの機会をつくってほしい」と要望する。青果物輸送は、産地や流通業者だけでなく、消費地の実需者や消費者にも影響を与える国民的な課題といえる。
産地体制を再構築
輸送業者の窮状を受け、輸送体制の再構築に乗り出す産地もある。JA宮崎経済連は、選果場で集めた青果物の一部を、一度予冷庫で保存し、翌日出荷するようにした。前日に出荷量が確定するため業者はトラックの手配がしやすく、朝から積み込みができ余裕を持って荷物を運べる。
収穫から市場に届く日数が1日伸び、生産者の反発があったが、予冷した方が鮮度維持できること、輸送業者が厳しい状況であることを担当者が根気強く説明し、理解を得た。輸送業者の業務は効率化できるが、産地は予冷庫を使うためコストがかかる。
それでも改革に踏み切った理由について、経済連は「輸送業者は物流の基盤だ。今後も消費地に安定して運ぶには、歩み寄りが必要だ」と強調する。
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2019年12月16日

国産食材だけでカロリー確保なら 夕食はご飯焼き魚だけ 自給力低下あらわに 農水省推計
ご飯1杯と焼き魚1切れ──。農水省がこんな衝撃的な夕食メニューを示した。輸入食材に一切頼らず、国内の農地を目いっぱい使って食料を生産し、できるだけ多くの供給熱量を確保しようとした時に想定される食事だという。
同省は、国内の農地を最大限に活用した場合にどれだけの食料を生産できるかを表す「食料自給力」を推計している。
2018年の農地面積などを基に同省が計算した結果、米や小麦、大豆を中心に作付けするパターンでは、荒廃農地を再生利用しても、国民1人1日当たりに供給できる熱量は、1829キロカロリーと、体重維持に必要なエネルギー量2143キロカロリーに満たず、終戦直後の摂取熱量2000キロカロリーも下回る。
冒頭の夕食はその食事の一例だ。牛乳は3日にコップ1杯、鶏卵は10日に1個、焼肉は5日に1皿しか食べられない。
栄養バランスを一定に考慮すると、供給可能な熱量はさらに低下し、1429キロカロリーとなるという。
一方、芋類を中心に作付けすれば供給可能な熱量を2633キロカロリーまで上げることができ、輸入を含めた供給熱量の実績2443キロカロリーを上回る。ただ、この時の夕食は焼き芋2本、野菜炒め2皿、粉吹き芋1皿、焼き魚1切れといった具合だ。牛乳は5日に1杯、鶏卵は3カ月に1個、焼肉は19日に1皿になる。
食料安保か 飽食優先か
今回の推計は「日本の食料の潜在生産能力を示し、国民の共通理解を醸成する」(同省)狙いだ。
冒頭の食事メニューを見て、食料安全保障のためにも国内の農地や農業をきちんと守らなければならないと考えるのか、国産だけで豊かな食生活を続けるのは無理だから輸入に頼るしかないと思うのか。人によって反応は分かれそうだ。
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2019年12月16日
飼料米複数年に助成 10アール1・2万円、転作促す 農水省
農水省は2020年産米から、飼料用米や米粉用米の複数年契約に10アール当たり1万2000円の助成措置を新設する方針を固めた。取り組みに応じて、都道府県に対し、産地交付金を追加配分する。主食用米の需給安定に向け、転作拡大の柱となる飼料用米の作付けを促す。一方、19年産まであった多収品種への追加配分(同1万2000円)は廃止を含めて見直す方針だ。……
2019年12月15日

「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁
林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。
同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。
具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。
香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。
エビデンス部会は、森林浴などが健康に与える効果のデータを集積し、事業化を後押しする。今年度は研究成果などの情報を集める。
情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。
同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。
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2019年12月15日

農地減少 政府想定上回る 荒廃、転用2倍ペース 対策見直し必須
耕作放棄や農地の転用による農地面積の減少が農水省の想定を上回って進んでいる。2015~19年の5年間に発生した荒廃農地は7万7000ヘクタール、農地転用は7万5000ヘクタールに上った。それぞれ同省が想定した2・5倍、1・5倍のペースで増えた。農地の再生が一定程度進んだものの、新たな荒廃農地の発生や転用に追い付かない状況だ。
農地は1961年をピークに一貫して減少し、2019年は439万7000ヘクタールまで落ち込んだ。政府が15年に策定した食料・農業・農村基本計画に掲げる25年の確保目標440万ヘクタールを既に下回った。
19年までの5年間の減少面積は12万1000ヘクタールに及ぶ。同省が変動要因を分析したところ、5年間で新たに発生した荒廃農地と農地以外に転用された面積は、合計で15万2000ヘクタールに上る。一方、再生された農地面積は3万2000ヘクタールにとどまり、減少要因が増加要因を大きく上回った。
基本計画では、荒廃農地と農地転用を合計で8万1000ヘクタールにとどめつつ、2万7000ヘクタールの農地を再生することで、農地の減少を5万4000ヘクタールに抑える想定だった。
同省は、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払制度を使って農地保全に取り組んだ地域は耕作放棄が抑制され、農地の再生も想定以上に進み、政策が効果を発揮したとみる。一方、「高齢化の進展や担い手不足などで新たな荒廃農地の発生が大きく見通しを上回った」(農村振興局)と認める。
現行の対策だけでは、農地減少が十分に食い止められていないことが明らかになった格好。将来にわたり農地を確保するため、より踏み込んだ対応が求められそうだ。
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2019年12月14日
台風19、21号 農林水被害3180億円 営農再開に全力 農相
10月に東日本を中心に猛威を振るった台風19号の被害から2カ月がたつ中、農林水産関係被害額が3180億8000万円に上ることが農水省の調べで分かった。被災地では依然、営農再開のめどが立たない農家も少なくない。江藤拓農相は13日の閣議後会見で、現場の不安に向き合い、復旧に全力を尽くす考えを改めて示した。
江藤農相は「雪のシーズンが近づいてきていることもあり、来年のことについて、現場には大変な不安がある」との認識を示した。その上で「さまざまな手を使って、自治体との連絡を密にして農地の復旧に全力を尽くしていきたい」と強調した。
被害額3180億8000万円は12日現在で、台風21号に伴う大雨などの被害も含む。内訳は、農作物が149億2000万円、農業用ハウスが28億5000万円、農業・畜産用機械が71億4000万円、農地が771億1000万円、用水路などの農業用施設が1219億9000万円、林野関係が789億9000万円、水産関係が130億1000万円などとなっている。
一方、9月に関東地方などを襲った台風15号の被害額は5日現在で814億8000万円。これに19号などの被害額を合わせると3995億6000万円に達し、西日本豪雨の3409億1000万円を超える。
台風19号では、各地で河川の決壊が相次ぎ、水田や果樹園に土砂が堆積するなどの被害が広範囲に発生。政府は11月に復旧支援策を取りまとめた。
特に被害の大きいリンゴには、大規模な改植を余儀なくされる農家に対し、最大で10アール当たり150万円を助成する対策を打ち出した。ただ、被災地では業者の人手不足などで復旧作業が思うように進んでいないところもあるという。
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2019年12月14日

農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日

「スマート」上積みへ 20年度予算 17日にも大臣折衝
政府・与党は12日、2020年度農林水産関係当初予算の詰めの調整に入った。転作助成や農地集積など重要施策の財源規模が固まる中、当初予算総額の前年度超えを目指し、「スマート農業実現」「輸出力強化の体制整備」の関連予算額を17日に予定する大臣折衝事項に設定した。予算の上積みに向けて、江藤拓農相の手腕が問われる。
農水省は同日、自民党農林合同会議で、20年度予算について、財務省との折衝状況を報告。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は当初予算比で165億円減の3050億円、人・農地プラン実質化や農地中間管理機構(農地集積バンク)による農地集積・集約の執行見込み額は212億円とした。
大臣折衝は、17日に江藤農相が麻生太郎財務相と面会する。会合に出席した江藤農相は「災害もあり、一連の経済連携協定も出そろう中、(農家に)希望を持ってもらえるよう先頭に立って頑張る」と決意表明した。
党農林・食料戦略調査会の塩谷立会長は当初予算案の内報額を「枝ぶりのいい内容」とした上で、大臣折衝事項について江藤農相に「しっかり交渉していただきたい。激励を申し上げたい」とエールを送った。JA全中の中家徹会長は「現場実態に合ったスマート農業、輸出拡大の加速化を実現してほしい」と期待を寄せた。
大臣折衝事項のうち、「スマート農業実現」については、中山間地域など条件不利地の担い手、労働力不足解消に向けて、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの先端技術を現場で導入・実証するための予算獲得を重視する。
輸出力強化に向けて同省は、農林水産物・食品輸出促進法に基づき、今後設置される政府の司令塔組織による輸出証明書の申請・交付システムの構築などを進めたい考え。欧米への牛肉輸出には危害分析重要管理点(HACCP)の認定が必要なことを踏まえ、HACCPに対応した施設など輸出拠点の整備も課題に挙げ、予算の確保を目指す。
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2019年12月13日

イノシシ捕獲に手引 環境、農水省 ウイルス拡散を防止
環境省と農水省は、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)対策として野生イノシシの捕獲に関する防疫措置の手引を作成した。国がイノシシ捕獲の手引を作成するのは初めて。野生イノシシの捕獲を強化する必要がある一方で、捕獲でウイルス拡散の恐れがあることから、狩猟者に防疫の手法を徹底する。
手引では、これまで農水省がイノシシ捕獲に関して通知していた文言や特定家畜伝染病防疫指針などを踏まえ、捕獲作業の事前準備から帰宅後の対応までを写真と共に掲載した。
現地に到着し、わなの設置や見回りをする前に手袋や長靴を装着するなど、作業ごとのポイントを解説。手袋は二重に装着し、内側のゴム手袋は洋服の袖口を覆うように着用するなど詳細に注意を呼び掛けた。
防護服や靴底の泥落としに使うブラシなどの持ち物チェックリストも併記している。環境省は「イノシシを捕獲する中で、豚コレラが拡大してしまうことを防ぐため、あらゆる捕獲に関する防疫手法をまとめた。手引を参考に、各地域で必要な防疫対策をしっかり行ってほしい」(野生生物課)と呼び掛ける。
手引は、アフリカ豚コレラが発生した際にも活用できる。
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2019年12月13日
来年度予算 農水2・3兆円台で調整 閣僚折衝で上積みへ
政府は11日、2020年度の農林水産関係予算を、19年度と同水準の2兆3000億円台とする方向で調整に入った。農水省は閣僚折衝で上積みし、総額の前年度超えを目指す。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は、当初予算比で165億円減の3050億円の方向。一方、19年度農林水産関係補正予算の総額は5849億円とする方針が固まった。……
2019年12月12日