[2019参院選][論点を追う](中) 水田政策 米価、制度 安定望む 備蓄用転換も懸念拭えず

今後の米価下落を不安視する米山さん(宮城県栗原市で)

 「生産の目安を上回って生産する県もあると聞く。今年は需給が緩むのではないか」。宮城県栗原市で水稲を作付け、JA新みやぎ栗っこ米戦略部会長を務める米山嘉彦さん(56)は、米価下落への不安を募らせる。

 政府は2018年産から生産調整を見直し、生産数量目標の配分と達成メリットだった10アール7500円の米の直接支払交付金を廃止。各県の農業再生協議会などが生産量の「目安」を設定する。

 見直し2年目の19年産は正念場だ。農水省が示す適正生産量は前年比1・2~2・3%減。4月末現在の同省作付け意向調査では、7割の県域が主食用米を「前年並み傾向」とする。需給緩和の懸念が高まっている。

 JAの栗っこ地区本部では、非主食用米を増やす一環で政府備蓄米の拡大に力を入れる。19年産の備蓄米の生産量は昨年比3割増の2582トン。宮城県の県別優先枠の5分の1に当たる量だ。

 JAは地区座談会を通じ、非主食用米を栽培した際の10アール当たりの収入を提示し、備蓄米の作付けを促す。その一つが多収品種を備蓄米として生産する方法だ。10アール当たり収量が630キロの多収品種で備蓄米を生産した場合、同526キロの主食用「ひとめぼれ」を作付けしたときに比べて、収入は同約2万円上回るとの試算を示す。

 米山さんも同試算を基に備蓄米に取り組む。4ヘクタールで主食用米と備蓄米、他生産者との共同も含めソバ4・5ヘクタールを栽培。来年以降も不安感は強く「状況によってはさらに非主食用を増やすことも考えたい。長期的に先行きが見通せるようにしてほしい」と要望する。

 一方、農水省も米の主産県への「キャラバン」で非主食用米への転換を促している。だが、派遣先はJAグループが中心。JAの米集荷率がかつてほど高くない中、「行政には、JA以外の集荷業者や生産者にも働き掛けてもらわないと」(東北地方のJA組合長)との声が上がる。

 「米価も制度(米政策)も、安定が一番だ」

 福島県相馬市で水稲25ヘクタールを経営する桑折健一さん(64)。県独自品種「天のつぶ」のブランド化を目指す一方、「全体需給の安定が大前提」と、飼料用米と稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ=WCS)を多収品種で14ヘクタール作付けする。

 同県はかつて過剰作付けが日本で最も多かったが、桑折さんは生産調整にずっと参加してきた。ここ数年の米価回復で一息つくものの、18年産からの米政策見直しで需給調整を促す体制が全国的に弱まり、「好きなだけ作る人が増えるのでは」と不安視する。

 一方、飼料用米などに助成する水田活用の直接支払交付金の予算や交付単価が維持されるかどうかも注視する。戸別所得補償制度の導入と廃止を例に「一時的にうれしくても、長続きしないと混乱する。先まで見通して計算できるよう、安心させてほしい」と話す。

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