酪肉近論議本格化 生乳増産へ環境整備を

 新たな酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)の論議が本格化した。焦点の酪農振興は、都府県の「地盤沈下」にどう歯止めをかけ、生産目標数量を上方修正できるか。市場開放が進む中で、政策支援の拡充も含めて、酪農家が増産できる条件整備を示し将来展望を描くべきだ。

 農水省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会は、基本計画見直しの一環で、今後10年先の生産指標などを明記する酪肉近の論議を深めている。畜酪への未来を見据えたメッセージを分かりやすく示すことが必要だ。

 2015年は「人・牛・飼料の視点での基盤強化」を掲げた。原点回帰を強調したが、その後の展開は自由化の加速、規制改革による予期しない酪農制度見直しなど“逆風”が吹いた。いま一度、基盤を立て直さなければならない。最大の課題は生産基盤の維持に尽きる。

 畜酪単独で論議するには無理がある。むしろ、耕畜連携を核に、地域農業の中で畜酪の持つ“包含性”に注目すべきだ。特に都府県は水田など他作目との連携も欠かせない。水田と畜酪をどう結び付けるのか。米需給が深刻化する中で、酪肉近でも水田農業+畜酪の新たなモデルも示すべきではないか。

 関係者を挙げて推進する飼料用米は、需要が減少する主食用米の価格維持が主な狙い。一方で、水田農業確立には家畜との結び付きが不可欠だ。畜酪側の視点で、栄養価、嗜好(しこう)性などを踏まえた上での水田を有効活用した自給飼料確保を再考する必要がある。

 酪肉近本格論議となった10日の畜産部会では、政策の不具合も問題となった。改正畜産経営安定法施行に伴い、指定生乳生産者団体の生乳一元集荷を廃止した。生産者団体、乳業ともに年度途中で生乳出荷先を切り替える「いいとこ取り」が相次いでいることに懸念の声が出た。法改正に関連し、同省が出した資料には「出荷先の選択肢を拡大し、酪農家の創意工夫が生かせる環境を整備」とある。だが、納得できる運用になっていない。制度欠陥と言ってもいい。改めて指定団体機能、役割の重要性を認め明記すべきだ。

 焦点となるのは、現行750万トンの生乳目標数量の上方修正である。乳業は国産チーズ需要増で800万トンを提案した。中央酪農会議は760万トンと増産方針を示した。自由化が進む中で、品質の良さから国産乳製品の需要は高い。後継牛確保も一定の成果が出始めている。

 だが、果たして安心して増産できる経営環境なのか。北海道と都府県の均衡も重要だ。まずは、脱脂粉乳の過剰を踏まえ、現行制度の課題を検証すべきだ。生乳需給は、輸入乳製品の影響を一段と受けやすくなる。指定団体の一元集荷廃止で、個別酪農家が所得増を求め飲用シフトが強まりかねない。用途別需給調整機能の低下が心配だ。国の経営安定政策の拡充も今後の大きな課題となる。
 

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