[活写] 小さな郷愁… 農の今昔物語
2019年11月10日

野口さんが作った昔の農作業を再現した竹細工。火であぶって曲げた竹も使う(長崎県大村市で)
長崎県大村市で昔の遊びなどを体験する施設「のだけ村」を営む野口敏幸さん(69)が手掛ける、農作業の素朴な竹細工が注目を集めている。
のこぎりで切った竹を組み合わせたもので、大きさは5センチから20センチほど。千歯こぎや牛が引くすきなどの農具も作り、農家が脱穀や田植えなど農作業に励む様子を表現している。
野口さんは農家出身で、機械化が進む前の農作業を形にして残そうと、2017年に竹細工を作り始めた。完成品は、実家で使っていた古い農具と一緒に展示している。
竹細工作りの講座も催し、休日には家族連れを中心に約200人以上が訪れる人気ぶりだ。野口さんは「かつて活躍した農具がどのように使われていたか、子どもたちに学んでほしい」と話す。(富永健太郎)
のこぎりで切った竹を組み合わせたもので、大きさは5センチから20センチほど。千歯こぎや牛が引くすきなどの農具も作り、農家が脱穀や田植えなど農作業に励む様子を表現している。
野口さんは農家出身で、機械化が進む前の農作業を形にして残そうと、2017年に竹細工を作り始めた。完成品は、実家で使っていた古い農具と一緒に展示している。
竹細工作りの講座も催し、休日には家族連れを中心に約200人以上が訪れる人気ぶりだ。野口さんは「かつて活躍した農具がどのように使われていたか、子どもたちに学んでほしい」と話す。(富永健太郎)
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地元でもやりたいことできる “Uターン組”食で催し 新潟県糸魚川市
新潟県糸魚川市にUターンした若者らが、「つなぐKitchen Project(キッチンプロジェクト)」のメンバーとして、食を題材にしたイベントを企画・開催している。プロジェクトを通して、糸魚川を離れた若い世代に「糸魚川でも自分たちのやりたいことができる」ということを伝えていく。
メンバーは市役所職員の杉本晴一さん(26)、イタリアンシェフの渡辺光実さん(28)、米や果実などを栽培する生産者の横井藍さん(28)と、JAひすい営農指導員の小野岬さん(24)。
市の広報紙の取材で若手Uターン経験者として杉本さん、渡辺さん、横井さんが集まり、3人で意見を交わす中で「それぞれのやりたいことが3人ならできる」と意気投合し活動を始めた。
その後、女子メンバーが欲しいという横井さんの希望で、巡回で来ていたJAの小野さんが仲間に加わった。プロジェクトチームの名前には「糸魚川のいろいろなところで人・物・事をキッチンでつなぐ」という願いを込めた。
職種の異なるメンバーが、それぞれの得意分野を生かしながら活動。7月には「ハヤカワ夏のピザまつり」を開いた。親子連れ30人が参加し、夏野菜をトッピングしてピザを作った。11月には「ハヤカワ秋のイモまつり」を開いて親子20人が焼き芋などを楽しんだ。
補助金を頼りにせず、全てを参加費で賄えるよう工夫して企画・運営している。メンバーは7月のイベントに合わせて動画投稿サイト「ユーチューブ」を参考にピザ窯を手作りし、11月のイベントでも大活躍だった。
横井さんは「畑で作られた野菜を味わって土に触れる感動を子どもたちに伝え、食を通して農を知ってもらえるような活動をしたい」と意欲を見せた。今後は小学校で取り組む「キャリア教育」などを通して農業の現場と教育の現場をつなぐとともに、イベント依頼などに積極的に対応していく。
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2019年12月07日
街を歩けば、掲示板の何と多いことか
街を歩けば、掲示板の何と多いことか。標識、標語、宣伝。つい見てしまうのが、お寺の掲示板である▼近くの寺は、ほぼ毎月、更新する。「自分が変われば相手も変わっていく」「実践こそ現状を変える」。説教臭くもあるが、妙にしみる時もある。気になる存在だと思っていたら、なんと「輝け!お寺の掲示板大賞」なるものがあった▼仕掛け人は、仏教伝道協会の江田智昭さん。聞けば、昨年7月、お寺の掲示板の写真の投稿を呼び掛けたのが始まり。4カ月で約700作品が集まった。2018年の大賞は「おまえも死ぬぞ」。お釈迦(しゃか)様こと釈尊の教えだとされる。生と死の本質に迫り、インパクトは絶大。これで認知度が高まった▼掲示板の言葉は、仏の教えから人生訓、著名人の名言までさまざま。寺の個性がにじみ出る。「掲示板はお寺と一般の人の境目にあり、双方をつなぐ存在」と江田さん。今年は925作品が寄せられた。5日に発表された大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます」。松本人志さんの「後輩芸人たちは不安よな。松本動きます」をもじったもの。全ての生き物の身を案じた阿弥陀仏の教えを伝えた▼衝撃を受けたのは、大分の寺に掲げてあった一言。「ばれているぜ」。深くて怖い。官邸前に張り出したい。
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2019年12月06日

日米協定 熟議程遠く 参院委可決 政府、要求応じず
参院外交防衛委員会は3日、日米貿易協定の承認案を与党などの賛成多数で可決した。4日の参院本会議で承認される見通しだ。参院の審議は計11時間余りで、より精緻な農林水産品への影響試算や、追加交渉で農業分野が対象になる可能性など、重要な論点の政府と野党のやり取りは平行線のままだった。野党の資料請求に政府・与党は引き続き応じず、議論は深まらなかった。
自民、公明両与党と日本維新の会が賛成。立憲民主、国民民主両党などの共同会派と共産党、参院会派「沖縄の風」は反対した。
日米両政府は、来年1月1日の発効を目指す。日本政府は承認後、関係政令の閣議決定など国内手続きを終え、米国に通知する。発効すれば牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税が削減される。米は除外した。
参院では、有識者らを招いた参考人質疑も実施したが、質疑時間は11時間15分にとどまった。衆参両院合計でも22時間余りで、特別委員会で130時間以上審議したTPPや、米国抜きのTPP11の際の審議時間を大きく下回る。
衆参両院の審議を通じ、野党側は、時期が未定となった自動車・同部品の関税撤廃を除いた経済効果や、TPPと、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効済みの現状を踏まえた農林水産品の影響試算などを要求した。追加関税の回避の前提となる首脳会談の議事録なども求めたものの、政府・与党は提出要求には応じなかった。
採決前の討論で、野党は「再三の提出要求にも一切応じず、国会への説明責任を放棄した」(野党共同会派の小西洋之氏)などと政府を強く批判した。
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2019年12月04日

果樹以外も“引き”強く 昨年の7倍販売 PBのこぎり好評 JAあいち豊田
愛知県のJAあいち豊田が今年度から販売を始めたプライベートブランド(PB)商品「こめったくんノコギリ」が好評だ。4月からの半年で、昨年ののこぎり販売数の7倍以上に当たる264本を販売。剪定(せんてい)作業に使う果樹農家だけでなく、一般農家にも購入が広がっている。
JAがPBのこぎりの販売を始めたのは、組合員の声がきっかけ。全国の桃生産者が集まる場で、JA桃部会の林金吾さん(67)が長野県にあるメーカーの説明を受け使い始め、良い商品だとJA営農資材課に紹介した。
当初は通常商品として果樹農家向けに販売。2、3年使った農家から高い評価を得たことから、PB化の検討を始めた。同課の職員がメーカーを訪ね、細部まで品質を確認。長期間使っても切れ味が落ちず、果樹農家だけでなく、幅広い目的で使えるよう、グリップの形状なども考慮し選定。4月からPB商品として販売を始めた。
購入価格を抑えるため、JAでは事前注文のキャンペーンを春と秋に実施し、通常より15%ほど安くした。替え刃も用意し、既に購入した組合員の要望にも応えている。
PBのこぎりを愛用する林さんは「他の物とは切れ味が違い、長持ちもするので手放せない。庭木の剪定など一般の人にも使ってほしい」と太鼓判を押す。
JA営農資材課の兵藤仁課長は「組合員の声を形にすることで、営農をサポートし期待に応えたい」と話す。
JAは、2016年3月から組合員の声を取り入れたPB商品を開発、販売している。少量規格の肥料や刈り払い機のチップソー、軽トラックの荷台に取り付けるほろなどを販売し、好評だ。
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2019年12月05日

柿じまん 富山県朝日町、入善町
富山県朝日町と入善町の農家女性でつくるグループ「美の里じまん」が製造するドレッシングタイプの調味料。朝日町産の柿「刀根早生」を熟成させて造った柿酢にしょうゆをブレンドし、ユズ果汁などを加えた。おひたしや豆腐料理に掛けて食べるのがお勧め。
朝日町の南保柿出荷組合の女性らから、2013年に同グループが製造を引き継いだ。地元の宿泊施設や学校給食などにも使われている。
1瓶(180ミリリットル)411円。入善町にあるJAみな穂の農産物販売加工施設「みな穂あいさい広場」や両町のスーパーで販売している。甘さを抑えたタイプもある。
問い合わせはみな穂あいさい広場、(電)0765(72)1192。
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2019年12月04日
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みんな二度見!? オート三輪 走る広告塔 茨城県常陸太田市の椎名理さん
茨城県常陸太田市で「てるちゃんぶどう園」を営む椎名理さん(59)の愛車は、昔懐かしいマツダのオート三輪。手直ししてピカピカに磨き上げ、現役で農作業に使っている。車体にはぶどう園のPRロゴを入れ、走る広告塔としても役立てている。
椎名さんは1・3ヘクタールの園で「巨峰」や「常陸青龍」「シャインマスカット」を栽培するブドウ農家。若い時から車好きで20代前半にMG・ミジェットを手に入れて古い車の面白さに目覚め、今では倉庫にオールドカー10台ほどを所有する。
オート三輪を手に入れたのは10年ほど前。県内の倉庫に眠るオート三輪があると知人に紹介され見に行くと、珍しいマツダのT1500だった。1971年製で比較的状態も良く、トラックなので農業に使えると思い、譲ってもらった。
手を入れて乗り始めたが、古い車両のため故障はつきもの。部品もなく親しい修理工場に頼んで直してもらっている。維持費は掛かるが苦にはならない。運転していると、対向車から注目され、工事の人が手を休めて見入ることも度々。駐車していると、懐かしがって話しかけてくる中高年も多いという。
そこで、「てるちゃんぶどう園」のロゴを入れた。それからはさらに目立つようになり、ブドウ園の名も知られるようになったという。今は「おいしいよ常陸太田のぶどう」や「だいすき常陸太田」のロゴも入れ、地域のPRにも一役買う。
椎名さんは「道の駅にわざと寄ったりして楽しんでいる。大切に乗り続けていきたい」と話している。
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2019年12月10日
気候非常事態 長野県が宣言 都道府県で初
長野県は6日、世界的な気候変動への危機感と地球温暖化対策への決意を示す「気候非常事態宣言」を都道府県として初めて発表した。2050年までに県内の二酸化炭素(CO2)排出量を実質的にゼロにすることを目指す。
県議会が同日、台風19号被害やスペインでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)開催などを背景に、宣言を出すよう県に求める決議を全会一致で採択。これを受けて県が宣言を発表した。宣言では、国内で頻発する気象災害と世界的な異常気象、気候変動に触れ、「この非常事態を座視すれば、未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことはできない」と強い危機感を示した。
県は、太陽光発電や小水力発電といった再生可能エネルギーの拡大、省エネ対策の強化などで、CO2排出量の実質ゼロを実現したい考え。阿部守一知事は会見で「広く県民一丸となって気候変動対策を進めていきたい」と強調した。インターネット中継で阿部知事と会談した小泉進次郎環境相は「台風で大きな被害を受けた長野県が宣言したことは象徴的。来週参加するCOP25で発信したい」とエールを送った。
宣言は、地球温暖化対策を加速させようと欧米諸国を中心に広がっている。欧州連合(EU)の欧州議会が11月に採択した他、国内では長崎県壱岐市、長野県白馬村などが宣言している。
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2019年12月07日

ビワ大産地 台風15号3カ月 復旧「素人には無理」 倒木、落石、通行止めもまだ… 千葉県南房総市
台風15号の被災から9日で3カ月。全国屈指のビワ産地、千葉県南房総市では農道や園地を覆った倒木、落石が片付けられず復旧が思うように進んでいない。急斜面の園地も多く撤去には危険が伴うため「素人には不可能だ」と話す農家もいて、行政などの支援を強く求めている。(関山大樹)
行政支援を切望
千葉県は、産出額8億円(2017年度)を誇る全国2位のビワ産地。だが9月の台風15号の強風で、木が倒れるなどの被害が出た。県によると、20年の見込み被害額は5億9000万円に及ぶ。
同市の沿岸部にある南無谷地区は、地域の山の多くがビワ山だという。「園地を見ると心が折れる」。ビワ農家の木村庸一さん(58)が落ち込んだ表情で話す。60アールのビワ園は、来シーズン半分以上が収穫できなくなった。
山中にあるビワ園は曽祖父の代から守り、かつては皇室に献上するビワも生産した。ビワは花や幼果が寒さの影響を受けやすいため、冬に風が吹いて霜が降りにくく、寒さが滞らない山の急斜面で栽培される。
台風の強風で、山中のビワの半分以上が折れたり、根こそぎ倒れたりした。急斜面のため現在も、石や折れた木が落ちてくる可能性がある危険な状態だ。
木村さんは、チェーンソーで一部倒木の除去や倒れた木を元に戻すなど尽力したが、19、21号と続いた台風で、修復しても元に戻る“いたちごっこ”の状態が続いた。
険しいビワ山を通る農道も、50年ほど前から農家らが協力して作り、コンクリートで舗装し管理してきた。台風直後は、強風や大雨による倒木や落石で通れなくなり、今も山奥に行くにつれ倒木が手つかずの場所もあり、一部のビワ園は立ち入れない。
木村さんは「山中での作業なので撤去は危険が伴う。安易に除去できない木もあり、全ての倒木や落石の除去は素人には不可能だ」と訴え、倒木や落石の撤去などへの行政支援を訴える。
房州枇杷(びわ)組合連合会が、66人の組合員に行った台風被害調査によると、被害額は10月末時点で1億648万円、来年の売り上げは3億円減少する見込みとなった。連合会によると、実際の被害金額はさらに多い見通しだ。
連合会会長で、南房総市のビワ農家、安藤正則さん(63)も園地半壊の被害を受けた。安藤さんは「このままの状況だと復興は1、2年じゃ到底終わらない」と危機感を募らせている。
ビワは苗木を植えてから収穫まで、5年ほどかかる。園地の再建について高齢農家ほど意欲に陰りがあるとし、「気持ちの面で立ち直れない人もいる。園内の倒木撤去や整理の他、所得補填(ほてん)などさらなる支援が必要だ」と要望する。
自身もビワ農家であるJA安房の笹子敏彦常務も「まだ山中に入れないビワ農家も少なくない。特に雨が降った後などは危険度が増す」と話し、復旧への道が険しいことを強調する。
15、19、21号 38都府県被害 農林水3900億円
農水省は6日までに、台風15号の農林水産関係の最新被害額が5日午後4時時点で815億円に上ると発表した。19・21号の被害額(3082億円、2日午後1時時点)と合わせると、総額3897億円に上る。
15、19、21号の被害は38都府県が報告。被害額は、2018年の西日本豪雨の被害額3409億円を超えた。
内訳は農地の損壊が2万6273カ所で被害額746億6000万円。用水路や農道といった農業用施設などが、2万4130カ所で被害額1226億4000万円。作物被害は3万6459ヘクタール、被害総額265億3000万円。農業用ハウスなどの被害は、2万9336件で被害額503億1000万円だった。同省によると、今後も被害額は増える見込み。
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2019年12月07日

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補助金を頼りにせず、全てを参加費で賄えるよう工夫して企画・運営している。メンバーは7月のイベントに合わせて動画投稿サイト「ユーチューブ」を参考にピザ窯を手作りし、11月のイベントでも大活躍だった。
横井さんは「畑で作られた野菜を味わって土に触れる感動を子どもたちに伝え、食を通して農を知ってもらえるような活動をしたい」と意欲を見せた。今後は小学校で取り組む「キャリア教育」などを通して農業の現場と教育の現場をつなぐとともに、イベント依頼などに積極的に対応していく。
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2019年12月07日

ハトムギで健康長寿に “お墨付き”チョコ商品化 知名度アップ狙う 栃木県小山市
栃木県小山市で、特産のハトムギを使ったチョコレートが開発され、11月から市内の「道の駅思川」で販売が始まった。生活習慣病の予防など、市はハトムギの摂取によって市民の健康長寿を目指しており、新たなスイーツで消費拡大を目指す。ハトムギの生産量も増えていて、農家は「栽培の追い風になる」と期待する。(中村元則)
全国ハトムギ生産技術協議会によると、2018年の全国のハトムギの生産面積は1122ヘクタール、生産量は1541トン。茶などで使われ、生産面積は年々、増加傾向にあるという。同市は水田転作の一環で、1991年に農家2戸で栽培がスタート。18年時点で、約10戸が作付面積80ヘクタールで188トンを生産し、国内有数の産地だという。
同市のハトムギは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で「次世代農林水産業創造技術」の開発研究に選定された。そこで市などは18年、ハトムギの摂取が人間の体に与える影響を調べる実証実験を行った。
20~64歳の健康な市民114人にハトムギ茶や麦茶を500ミリリットル、8週間、毎日飲んでもらい血液や尿を検査した。その結果「ハトムギには動脈硬化などの生活習慣病の予防効果が示唆された」(市農政課)という。
市はハトムギの摂取を進めようと、新商品の開発を促す「アグリビジネス創出事業」を実施。ハトムギのチョコレートは、食品加工品を販売する、ラモニーヘルス(同市)が同事業を活用して、半年前から商品開発を手掛けた。
同社の篠原裕枝代表は「ハトムギを高齢者も若い人も、誰もが食べやすいものにしようと考えた時、チョコレートを思い付いた」と話す。
同社は11月中旬の2日間、東京都墨田区の商業施設「東京ソラマチ」の中にある栃木県のアンテナショップ「とちまるショップ」で試験販売をした。その後、11月下旬から道の駅思川で本格販売を始めた。
商品は「はとむぎチョコ マンディアン」と名付けられ、ハトムギを3%配合したノンシュガーのチョコレート生地に、無添加ドライフルーツを載せている。チョコレートの優しい味わいとともに、かめばかむほどハトムギの香ばしい香りが広がるのが特徴だ。
市農政課は「来年2月のバレンタインデーに健康食品として参戦する」と強調。チョコに期待を掛けている。他にもハトムギを使った商品は、ふりかけなども開発され、多様化している。
相次ぐ商品化に栽培農家も期待。ハトムギを4ヘクタールで栽培する小山はとむぎ生産組合の福田浩一組合長は「小山のハトムギの知名度が増す良い機会になる。これを契機に新規就農者を増やし、生産量を増やしたい」と意気込む。
「はとむぎチョコ マンディアン」は、ビターとミルクの2種類あり、どちらも1箱3個入り(100グラム)で1500円。
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2019年12月06日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 農業も登山も全力投球 倉敷市の小原正義さん
岡山県倉敷市の小原正義さん(40)は、米の生産と餅加工で年間2300万円を売り上げるコアラファームの代表と、登山ガイドの二足のわらじを履く。今秋には、県内の農業振興や農村の活性化に貢献する青年農業者に贈られる「矢野賞」を受賞した。
実家は水稲農家で農業や自然への関心が高く、大学卒業後は8年間、長野県の奥穂高岳の山小屋で働いた。「農業だけでは生活ができないと考え山登りも仕事につなげようと思った」と小原さん。2010年に日本山岳ガイド協会の登山ガイドの資格を取得した。
同じ年に親元就農した。米で収益を上げるビジネスモデルを模索し、生産・販売から餅加工を一体的に行う経営に行き着いた。餅は年間15・9トンを製造。自家栽培の特別栽培米「ヒヨクモチ」を使って、「倉敷・八十八俵堂」の独自ブランドで販売している。
JA岡山西直売所の出荷仲間の紹介などで地道に顧客を増やし、倉敷市のふるさと納税返礼品に採用されている他、JA直売所や県内スーパー、インターネットなど多方面に販路を拡大。売り上げの9割を占める経営の柱になった。
小原さんは「登山も農業も自給自足が原則。通じるところが多い」と話す。山小屋勤務での接客や大工仕事、道路の舗装、水道工事などの経験が、農業経営に役立っているという。
経営が安定した15年からは、農閑期の7、8月に北アルプスや大山などで月10日程度の山岳ガイドも務める。19年は大山ガイドクラブ代表に就任し、山小屋の経営を始めた。
「日常を幸せにする農業、非日常を楽しむ登山」と、どちらも全力投球する。「20代は山、30代は農業に打ち込み、土台を作れたと思う。農業者、登山家として一層レベルアップしたい」と話し、40代を楽しむ。
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2019年12月05日

行動起こす一歩大切 酪農女性340人経営ヒント学び合う 北海道でサミットファイナル
全国から酪農に携わる女性が集い、経営や技術などを学ぶ「酪農女性サミット」が3日、北海道帯広市で始まった。酪農女性ら340人が参加し行動を起こすことの大切さや、今後のあるべき姿などを話し合いながら交流を深めた。4日まで開く。
サミットは2017年から北海道で年1回開かれ、3回目の今年が最後の開催。酪農家の女性が互いに学び語り合い、女性も楽しく仕事ができる酪農を目指そうと、酪農家の女性自らが企画・運営してきた。
「酪農女性のモチベーションUP!講座」と題したトークセッションでは、経営の最前線で活躍する女性たちが登壇した。
オランダで酪農家と結婚したニューランド伏木亜輝さん(43)は、酪農経営は義父と夫が行い「牧場に自分の居場所がない」と悩んでいたことを話した。自分のやりたいことは何かを考えた結果、日本からの研修を受け入れる事業を始めたことを紹介。「少しでも考えたらアクションを起こしてみて」と会場に呼び掛けた。
北海道大樹町で経産牛600頭を飼育する「カネソファーム」の金曽千春代表は、15歳で酪農家の実家を継ぐ決意をした生い立ちを披露した。経営者として先代からの思いを受け継ぎ、次の世代につなぐことで「酪農の未来は明るい」と語った。
酪農以外では、神奈川県藤沢市で野菜を栽培する「えと菜園」の小島希世子代表が、ホームレスや引きこもりの人に農作業を体験してもらい、農家への就職などにつなげる取り組みを紹介した。
「後継者不足に悩む農家と、働きたくても働けない人を結び付けたいとの思いから始めた」と話した。「農業は裾野が広い。適材適所を見つければ、人の才能を伸ばせる産業だ」と農業の可能性を訴えた。
サミットはJA全農、日本コカ・コーラが共催。中央畜産会が後援した。4日は帯広畜産大学の仙北谷康教授が酪農所得や共済について話す他、参加者同士がモチベーションを保つ工夫を話し合う。
成果 農場で実践を 参加者3倍に、注目実感
<初回からの実行委員長 砂子田円佳さん>
北海道内の酪農女性が企画・運営し、全国から酪農に携わる女性らが年1回集う「酪農女性サミット」。これまで全3回の実行委員長を務めてきた広尾町の酪農家・砂子田円佳さん(36)にサミットを始めた経緯や思い、成果などを聞いた。
──開催したきっかけを教えてください。
女性酪農家が話すパネル討論にパネリストとして参加した時、参加者から「これだけ頑張っている人がいるなら酪農女性が集うサミットを開いたらどうか」という意見が出て、酪農家ら6人で企画した。互いに見ず知らずだったが、楽しく酪農をするには勉強も大事、女性の酪農にも勉強する場があればなど、共通した課題や方向性を持っていてすぐに意気投合した。
──女性だけにした理由は何ですか。
酪農関係のセミナーは多いが、参加する女性は少なく質問していいのかと遠慮しがち。「女性」と銘打つことで来やすい人もいる。
私も20代で実家から独立した時、「お前なんか嫁に行ってすぐにやめるだろう」と言われ悔しい思いをした。頑張って働き30代になり、女性らしく生きることや理解してもらうことの大切さを感じた。それにはもっと力を付けないといけない。言われたことだけしてもんもんとするのでなく、勉強して提案することで違う世界が見えてくる。
──3年間、サミットを開いた手応えは。
初回に比べ参加者が3倍ほどに伸びた。当初は「やって意味があるのか」とも言われてきたが、男性の見る目が変わった。開催案内を広報誌や店舗に張って紹介してくれるJAもあった。3年の積み重ねで多くの人に注目されるようになったと実感している。大会実行委員への講演の依頼も増えている。私たちの体験を通じ、次に続く人たちが前に出やすくなってほしい。
──今回で最後の開催としています。
「ファイナル」としたが「これで終わり、解散」ではなく、実行委員が各地で小さくても動いていきたい。参加者も各地域に帰って動き始めてほしいし、その手伝いができたらうれしい。(聞き手・洲見菜種)
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2019年12月04日

冬風揺れる柿すだれ JAふくしま未来伊達地区
全国有数のあんぽ柿産地、福島県のJAふくしま未来伊達地区管内で、皮をむいた柿を干し場につるす加工作業が最盛期を迎えている。きれいなオレンジ色の柿が次々とつるされる光景は「柿色のカーテン」と呼ばれ、この時期の風物詩だ。
原料の「蜂屋」や「平核無」の渋柿から乾燥によって独特の深い味わいと甘味を生み出す地区特産のあんぽ柿。
同地区では、11月上旬から原料となる柿の収穫作業が始まり、中旬からは、連通しと呼ばれる柿の皮むきや縄に柿を取り付ける作業、干し場につるす作業など、加工作業が本格化する。
JA伊達地区あんぽ柿生産部会長の佐藤孝一さん方では、11月15日から加工作業を開始。約8トンを加工する。1本の縄に10個ほど付けられた柿は、手作業で次々と専用の干し場につるされ、約40日間自然乾燥し、あんぽ柿として出荷される。「昼夜の寒暖の差や乾燥に適したこの産地特有の自然環境が、味わい深い極上のあんぽ柿を育む」と佐藤部会長は話す。
JAのあんぽ柿は、主に京浜地方を中心に各地の市場などへ出荷される。現在、「平核無」が出荷最盛期を迎え、生産量の9割以上を占める「蜂屋」は、12月上旬から本格的な出荷が始まり、翌年の3月下旬まで続く。
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2019年12月04日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 豪雨被災から1年5カ月 営農再開へ一歩 果樹産地の総社市
2018年7月の西日本豪雨でブドウ園などの農地や農業用施設に甚大な被害を受けた果樹産地・JA岡山西管内の岡山県総社市福谷地区。6日で1年5カ月となる中、営農再開の動きが始まった。県と市の連携で氾濫した高梁川の堤防を整備し、浸水被害を受けた約3ヘクタールの園地をかさ上げする。100年続く農業に向け、地域の話し合いが進み、近く工事が始まる。JAは営農や融資相談で復興を後押しする。異常気象のリスクが高まる中、災害に強い地域農業のモデルとして注目が集まる。(鈴木薫子)
次代に継に向け 堤防整備、園地かさ上げ
同地区は県内有数のブドウの早期加温栽培産地。しかし、園地には、ビニールが剥がれ、骨組みがあらわのハウスや、川から流れてきた大きな岩が目立つ。堤防の決壊で農地の浸水や施設が倒壊。今も園地は豪雨被害発生時のままだ。
県は同地区で約2キロにわたる高梁川の堤防整備に乗り出した。道路から1、2メートル上げる計画で下流側から用地取得を進めている。同地区の他、高梁川に隣接する4地区で計約5キロの堤防を整備。近く工事に着手し、22年度内の完了を目指す。
園地整備は同市が担当する。堤防から下の園地を3、4メートルかさ上げし、堤防と同じ高さにする方針。整備範囲は上流約600メートルで園地は約3ヘクタール。河川などの残土で埋め立て、栽培用に上層60センチはきれいな土で埋め立てを計画する。復旧には、JA担当者も営農再開に向け密に情報交換をする。
ブドウや桃の生産者22人でつくる福谷果樹組合は、被災した18年産売上高は前年産比2割減の6500万円。19年産は上向いたが、被災前水準には達していない。
ブドウ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などを栽培する同組合の温室ブドウ部会の仮谷昌典部会長は、経営面積の半分の10アールでハウス3棟が倒壊。被害を免れたハウスとの距離は30メートル。半分の土地で収益を高めようと栽培に励む。54歳の仮谷部会長は「80代まで農業を続けたい。今が踏ん張り時。復旧に時間がかかるのは覚悟の上で、次世代のために災害に強い農業を復活させたい」と強調する。
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2019年12月03日

これユズ!? 広島の個性派 初出荷
人の顔ほどのジャンボサイズかんきつ「獅子柚子(ししゆず)」の出荷が始まった。JA広島ゆたか上島選果場管内で栽培される特産で、ブンタンの一種とされる大型の香酸かんきつ。
直径20センチを超える黄金色の果実は、表面がボコボコと波打っており、獅子を連想させる迫力ある外観から別名「鬼柚(おにゆ)」とも呼ばれ、魔よけや縁起物として珍重される。
広島市中央卸売市場ではこのほど初入荷。広島市のスーパーやデパートでは冬至に向けたディスプレー商材として売場に飾る他、温泉施設や外食業界、観光施設からの引き合いもある。
広印広島青果の小山隆之副部長は「存在感抜群の外観に加え、季節感やストーリー性があり注目を集めている。地元の個性派商品として紹介したい」と話す。
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2019年12月03日