農家の働き方改革 家族協定最多を更新
2019年11月10日

家族経営協定を締結している農家戸数が、2018年度は前年度比1%(577戸)増の5万8182戸になり、過去最高を更新したことが農水省のまとめで分かった。毎年3万戸を超える家族経営体が減る中で、1665戸が新規に締結した。経営改善や女性活躍の他、家族経営体の維持や継承に役立つ利点を周知していくことが、今後取り組みを広げる上で重要となる。……
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マルシェで復興PR 台風被害のかんきつ販売 千葉・JA安房
千葉県の館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町を管内に持つJA安房は5日、東京・大手町のJAビルで、台風や大雨の被害を受けながらも頑張る農家を応援するため「安房みかん復興支援マルシェ」を開いた。同県の支援を受け、JAグループも協力。打撃を受けた産地の農産物をPRして、復興を後押しした。
台風の影響で傷ついたミカン17ケース(1ケース10キロ)やレモン400個、ユズ300個を用意。管内の生産者やJA職員が産地の情報を説明しながら販売した。被災した園地の現状や復興の取り組み、農産物の魅力を伝える動画を消費者が見ながら農産物を購入。用意したミカンなどは、販売開始から約2時間で完売した。
南房総市のミカン農家、井上栄一さん(70)は「応援を受けると、また頑張ろうという気持ちになる」と農産物や地域の魅力を消費者に話した。
JA管内は9、10月と相次ぐ台風と大雨の影響でハウスが倒壊し、果樹の落下や倒木など、大きな被害を受けた。JA調べでは、管内の農業施設や農産物の被害額は約50億円(11月30日現在)。
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2019年12月06日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 冬まで高品質桃 10品種で長期リレー 労力分散贈答品に
JA岡山西吉備路もも出荷組合は、10品種の桃をリレー形式で長期間出荷し、ブランドを築いている。6月中旬から12月上旬までの長期出荷は全国的に珍しい。中元や歳暮の贈答需要に対応した所得安定や、労力分散を図っている。現在は、高糖度で日持ちが良いJA独自ブランド「冬桃がたり」を出荷。シーズン最後に高品質桃を出荷し、消費を取り込み、来季の販売につなげる。
同組合は、6月中旬の極早生品種「はなよめ」を皮切りに、12月上旬まで「冬桃がたり」を出荷する。
近年、力を入れているのが、シーズン終盤の「冬桃がたり」の生産、販売だ。極晩生種で、1玉約250グラム、平均糖度は15以上。品質や日持ちの良さから、歳暮やクリスマスの贈答需要が強い。卸売価格は、夏に出荷する主力「清水白桃」の2倍以上。今季は11月20日から出荷を始め、12月10日ごろまでを計画する。
「冬桃がたり」は2011年に栽培を始め、組合員94人のうち今は35人が1ヘクタールで生産している。生産量は増え、19年産は前年比4割増の3・5トン、販売額は5割増の1000万円を計画する。
栽培管理は4~11月まで8カ月を要する。一般的な剪定(せんてい)は夏と冬の2回だが、「冬桃がたり」は、夏も果実が樹上にあるため、冬の1回で作業を終わらせる必要がある。剪定場所の判断が重要で、組合内で研究を重ねている。収穫から出荷までは、室温7度に設定したJAの予冷庫で貯蔵。温度変化を抑え、品質を保持する。
1ヘクタールで10品種を栽培する組合長の板敷隆史さん(46)は「労力が分散され、安定収入につながる。増産して需要に応えたい」と意気込む。
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2019年12月06日

冬風揺れる柿すだれ JAふくしま未来伊達地区
全国有数のあんぽ柿産地、福島県のJAふくしま未来伊達地区管内で、皮をむいた柿を干し場につるす加工作業が最盛期を迎えている。きれいなオレンジ色の柿が次々とつるされる光景は「柿色のカーテン」と呼ばれ、この時期の風物詩だ。
原料の「蜂屋」や「平核無」の渋柿から乾燥によって独特の深い味わいと甘味を生み出す地区特産のあんぽ柿。
同地区では、11月上旬から原料となる柿の収穫作業が始まり、中旬からは、連通しと呼ばれる柿の皮むきや縄に柿を取り付ける作業、干し場につるす作業など、加工作業が本格化する。
JA伊達地区あんぽ柿生産部会長の佐藤孝一さん方では、11月15日から加工作業を開始。約8トンを加工する。1本の縄に10個ほど付けられた柿は、手作業で次々と専用の干し場につるされ、約40日間自然乾燥し、あんぽ柿として出荷される。「昼夜の寒暖の差や乾燥に適したこの産地特有の自然環境が、味わい深い極上のあんぽ柿を育む」と佐藤部会長は話す。
JAのあんぽ柿は、主に京浜地方を中心に各地の市場などへ出荷される。現在、「平核無」が出荷最盛期を迎え、生産量の9割以上を占める「蜂屋」は、12月上旬から本格的な出荷が始まり、翌年の3月下旬まで続く。
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2019年12月04日
規模拡大に限界感 家族農業 生かす政策を
担い手の規模拡大に限界感が見え始めている。生産基盤を維持していく上で憂慮すべき事態だ。担い手の規模拡大によって農地を守るシナリオを描いてきた農政の再検討が欠かせない。多様な担い手として家族農業の育成方向を明確にするとともに、実態にそぐわない農地集積目標なども見直しが必要だ。
食料・農業・農村基本計画の見直し論議で、家族農業や中小規模農家への支援強化を求める声が広がっている。JAグループは政策提案の中で、基幹的農業従事者や農業法人だけでなく、多様な農業経営が持続的に維持・発展できる政策を強く求めた。与党からも「家族農業、中小農家を支えることが重要」「地域を守る家族農業の将来像もしっかり示すべきだ」などの意見が相次ぐ。
家族農業の現状は、2019年は経営体数115万で、この5年間に2割近い28万以上が減った。恐ろしい減少スピードであるにもかかわらず、いまの農政の中で家族農業は位置付けを落としている。
05年の基本計画と併せて策定された「農業構造の展望」では、担い手になり得る効率的で安定的な家族経営を10年後までに33万~37万戸育てる青写真を描いていた。民主党政権時代の10年の構造展望では「家族農業経営の活性化」を柱として打ち立て、販売農家の減少にブレーキをかける考えを示した。しかし政策効果は表れず、15年の現行構造展望には家族農業の記述すらなくなった。
家族農業軽視は、いまの農政が産業政策に過度にシフトしたことによる。担い手育成の政策目標として、農地利用の集積率を10年間に5割から8割に引き上げることを掲げたが、これは従来の集積スピードを一気に1・5倍に引き上げるというもの。だが現実は、中間年に当たる18年は56%にとどまった。利用が低調な農地中間管理機構(農地集積バンク)をてこ入れする法改正はしたものの、実現はほぼ不可能といっていい。
もはや、集積目標自体が妥当か考え直す時だろう。「構造政策が進み過ぎ、畦畔(けいはん)管理などが担い手の負担になっている」「農地を頼まれても、これ以上は増やせない」といった声が既に上がっている。この状況で無理に集積を加速すれば、担い手は受け止め切れず農地の遊休化につながる恐れすらある。受け手のない農地があふれないよう、中小規模の農家の離農をできるだけ食い止めることが先決だ。
家族農業を重視する流れは、国連が定めた「家族農業の10年」とも通じる。グローバリゼーションが進み、飢餓撲滅や食料安全保障の確保といった国際的な目標の実現に不安が増してきたことを受けた動きである。食料自給率が37%にとどまる日本にとってこそ切実な問題だ。国民の食を守るためにも、国内の生産基盤を支えてきた家族農業の支援策が強く求められる。
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2019年12月08日

酒粕チーズカレー 北海道新十津川町
北海道新十津川町の新十津川総合振興公社が販売するカレー。地元の金滴酒造の酒かすとチーズ、牛肉を煮込んだ中辛タイプ。酒かすのマイルドな香りと、カレーのスパイシーな香りのバランスにこだわった。
甘さを感じるまろやかな口当たりに、やや強めのスパイスが効く。同公社に併設するレストランでは、話題のダムカレーメニューをアレンジした「徳富ダムカレー」として提供し、人気となっている。
レトルトパック1袋(200グラム)702円。新十津川物産館と金滴酒造、グリーンパークしんとつかわ、砂川サービスエリアなどで取り扱う。問い合わせは新十津川総合振興公社、(電)0125(76)3141。
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2019年12月05日
農政の新着記事

アフリカ豚コレラ 予防的殺処分 迅速に 議員立法も視野 通常国会で先行改正
政府・与党が1月召集の通常国会の冒頭で、アフリカ豚コレラ(ASF)を予防的殺処分の対象とするため部分的な法改正を検討していることが9日、分かった。同国会で家畜伝染病予防法全般の改正を予定しているが、同病の国内侵入に早急に備えるため、この部分だけを先行する。与党は通常より手続きを早められる議員立法を念頭に野党とも調整する。
通常国会は来年1月に召集されるが、2019年度補正予算案や20年度当初予算案の審議を優先し、家伝法を含む一般の法案の審議は4月以降となる見通しだ。
だが、アフリカ豚コレラはアジア各国で発生が拡大し、国内侵入の危険性が高まっている。「予防的殺処分に関する条文だけでも、一刻も早く改正しなければならない」(自民党農林幹部)と判断した。
アフリカ豚コレラは伝染力や致死率が高いが、有効なワクチンが存在しない。このため政府・与党はこの通常国会で家伝法を改正し、一定地域内で、感染していない家畜も含めて殺処分する「予防的殺処分」の対象にする方針を固めている。現行法では、口蹄疫だけがその対象だ。
一方、政府・与党が予定する家伝法改正には、豚コレラ(CSF)対策の強化のため、①国の関与の強化②野生動物対策の法定化③検疫担当職員の権限強化──なども含まれる。政府・与党は、このうちアフリカ豚コレラの予防的殺処分に関する条文だけを先行改正し、補正・当初予算などの成立後、残る部分も改正する方針だ。
法改正について政府・与党は「委員長提案」による議員立法を念頭に置く。事前の与野党合意を前提に、衆参委員会での審議を省略し、手続きを迅速化できる手法だ。豚コレラやアフリカ豚コレラ対策を巡っては、野党も独自に家伝法の改正を検討している。別の自民党農林幹部は、予防的殺処分については与野党で一致できるとみて「今後、野党にも協力を呼び掛けたい」とする。
59カ国・地域で確認 水際に警戒感
アフリカ豚コレラは2005年以降、世界で59の国と地域で発生が確認されている(11月10日現在、農水省調べ)。国際獣疫事務局(OIE)の報告によると、発生件数は飼養豚と野生のイノシシを合わせ、少なくとも3万件を超える。日本では、飛行機で来日した外国人が持ち込もうとした肉製品から、ウイルスの遺伝子が検出された例はこの1年間で80件を超え、水際での警戒が強まっている。
アジアでは18年8月に中国で感染が確認されて以来、11の国と地域に拡大した。OIEには12月8日時点で、豚の飼養施設と野生イノシシの発生を合わせて約6500件の報告があった。直近では韓国で9月中旬に拡大。飼養豚は10月上旬で発生は止まっているが、12月に入っても野生イノシシでの発見が続いている状況だ。
アジアから日本への航空便では、旅客の持っていた肉製品からアフリカ豚コレラのウイルス遺伝子が見つかる事例が増加している。当初、摘発が多かった中国やベトナムの他、ラオスやカンボジア、フィリピンから持ち込もうとした例も出てきた。
欧州では今年、スロバキアやセルビアで新たに感染を確認した。野生のイノシシでは11月だけでもポーランドやベルギー、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアで陽性の報告があった。ロシアでは12月にも野生イノシシで陽性が出た。
アフリカ豚コレラは、国内で発生している豚コレラと症状が似ているが、全く別のウイルスによって感染する豚やイノシシの病気。有効なワクチンがなく、発生した場合は早期の殺処分による封じ込めしか対処法がない。
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2019年12月10日
温暖化で植物適地移動 VoCCで分析 果樹転換参考に 長野県など研究
地球温暖化が現在のペースで進むと、国内の高山帯に生息する野生動植物は、21世紀末に生息適地がなくなる可能性がある──。長野県環境保全研究所などでつくる研究グループが発表した。全国1キロ四方ごとに温暖化の影響を推計したのは初めて。影響は市町村ごとに閲覧できるようにし、農業分野では作物転換の検討に使ってもらう。
推計には、気候変動速度(VoCC)という指標を用いた。現在のペースで温暖化が進むと、VoCCの全国平均は1年当たり249メートルとなる。樹木の移動は、最大で同40メートルといわれており、気候変動に追い付けない。これは、身近な自然が将来、緯度の高い所や標高の高い所でしか見られなくなるということを示唆する。
都道府県ごとに影響を見ると、沖縄が同2174・3メートルで、最も速度が速かった。次いで千葉、長崎となった。自治体ごとの影響は、環境省のホームページ内で確認できるよう準備を進めている。
農業分野では、将来の地域の気候がどの地域と同じになるのか判断でき、転換する品目・品種や転換のスケジュールの検討で参考になる。同研究所の高野宏平研究員は「果樹などの永年作物は栽培や転換に時間がかかる。苗木の準備計画に役立ててもらいたい」と話す。
<ことば> VoCC
ある地点で気候が変化した場合、将来同じ気温になる場所の最短距離を、変化した時間で割った速度のこと。例えば、年平均気温15度の場所が100年間で100キロ北上したら、VoCCは1年当たり1キロとなる。
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2019年12月10日

中小・家族目配りを 自民畜酪委熊本を視察 畜産農家ら訴え
自民党畜産・酪農対策委員会は7日、2020年度の畜産・酪農対策の決定に向け、九州の酪農・畜産現場へ視察に入った。意見交換で畜産農家は、中小や家族経営も安定的に農業を続けられる環境づくりを要望。ヘルパーの確保や、豚コレラ(CSF)などの防疫強化を求めた。
熊本県JA菊池で開いた意見交換には、井野俊郎同委員会委員長代理、農林・食料戦略調査会の坂本哲志副会長、藤木眞也農水政務官らが出席。JA熊本中央会の宮本隆幸会長は、相次ぐ国際貿易交渉の結果「農家は先が見えず不安になっている。次世代が安心して農業ができる対策をしてもらいたい」と訴えた。
繁殖農家の源義通さん(69)は生産力の維持・向上には「定休型ヘルパーの導入で、農家が休めるようにしなくてはいけない」と指摘。ヘルパー確保につながる支援を求めた。肥育農家の斉藤秀生さん(59)はアジア諸国から日本への観光客の増加で「豚コレラや口蹄(こうてい)疫の侵入リスクが高まっている」と懸念。農家ごとの対策は限界があるとして、国主導の水際対策の強化が「最重要課題」と強調した。同委の宮路拓馬事務局長は北海道、関東、九州での視察内容を踏まえ、11日にも対策をまとめる考えを示した。
8日は鹿児島、宮崎県での現場視察、農家らとの意見交換を予定する。
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2019年12月08日

コスト増、人材不足、日米交渉… 生乳生産不安尽きず 畜酪対策 来週ヤマ場
2020年度の畜産・酪農対策を巡る政府・与党の協議が来週、ヤマ場を迎える。都府県は生乳生産の減少に歯止めがかからない一方、北海道は増産意欲は高いが、コスト増や人材確保などの課題があり、日米貿易交渉など将来への不安も尽きない。生産基盤強化に向け、規模拡大や家族経営の維持など多様な担い手が将来に安心して生産できる体制を求める声が強まっている。
生乳生産量は、北海道は増産基調だが、都府県は前年割れが続く。課題の一つが農家戸数の減少が続く都府県酪農だ。
栃木県大田原市で、育成牛含めたホルスタイン66頭を家族3人で飼養する藤田義弘さん(43)は「乳価は上がったが、消費増税で相殺され、経営は改善していない」と訴える。課題として挙げるのは人手の確保。毎月の休みは3日で休む時は酪農ヘルパーに頼むが、来てくれないときもあるためヘルパーの人材確保を強く求める。
藤田さんが就農した20年前の市内の酪農家は約90戸だったが、現在は約70戸。戸数減に歯止めをかけるため「現状の規模や労働力でも経営が維持できる対策にも力を入れてほしい」と家族酪農が続けられる対策の充実を求める。
「クラスター」要件厳し過ぎ
北海道頼みの生乳生産だが、道内の生産基盤も盤石ではない。酪農家は減り、規模拡大で生産量を維持、拡大している状況でコスト増が課題だ。
士幌町で乳牛380頭を育てる川口太一さん(56)は、牛舎の増築費用に頭を悩ませる。現在の搾乳牛200頭を約260頭に増やしたいが、増築費は資材費や人件費の高騰で「10年前に牛舎を作った時より、2倍以上(3500万~4000万円)かかる」と話す。畜産クラスター事業を活用したいが、建築基準などの要件が厳しく適用が難しいという。このため、同事業の要件緩和を求める。
コストが高くなりがちな冬の施工を防ぐため、十分な工期を確保できる仕組みも提案。同事業本来の狙いである畜産関係事業者が連携・集結し、地域ぐるみで高収益型の畜産を目指す体制整備も重要と話す。「産地としての責任を果たすため経営主になって以来、増頭してきた。少しでも事業を使いやすくしてほしい」と強調する。現在はパート1人、中国人技能実習生3人で経営しており、将来の雇用確保も懸念している。
中小・家族経営守る政策必要
酪農の規模拡大が進む中、新たな課題が広がる。「増頭で、ふん尿処理に困っている」「酪農ヘルパーなどの人材確保の対策を続けてほしい」──。11月30日、12月1日に釧路市や幕別町、網走市を視察した自民党畜産・酪農対策委員会の委員に、各地区のJA組合長が訴えた。「中小規模・家族経営基盤の維持強化に向け、省力化などの支援を続けてほしい」といった声も目立つ。酪農家が減少する中で規模拡大一辺倒ではなく、中小規模や家族経営を守るという意識も高まっている。
JAグループ北海道は畜産クラスター事業では計画的に投資できるように全ての事業の基金化を求める。加工原料乳生産者補給金は再生産可能な水準、集送乳調整金は指定団体が機能発揮できる水準を求めている。
生産減、離農止まらず
全国の生乳生産量は減少傾向にあり、農水省によると2018年度は728万9227トンと、5年前から2・9%減。特に都府県で減り続けている。牛乳・乳製品の需要は堅調だが、生産量が伸び悩み自給率は低下。同年度はカロリーベースで25%にとどまった。
酪農家戸数はこの10年、前年比4%前後の減少が毎年続く。大規模化や牛1頭当たりの乳量の伸びで、生乳生産の下落をカバーしている。
JAグループは、中小規模の家族経営などの離農が止まらないことが生産基盤の弱体化につながっていると指摘。大規模農家を、引き続き生産基盤の維持・拡大をリードする存在と位置付ける一方、「多様な生産者」の生産基盤の強化を重視する考えを打ち出した。
20年度畜産・酪農対策の重点要請では、規模拡大を問わず事業継承や生産効率の向上を支援するように提起。特に、飼養頭数50頭未満が76%を占める都府県酪農を念頭に、牛舎の空きスペースを活用した増頭への支援などが必要だとしている。
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2019年12月07日
直接支払い3制度 自治体負担軽減を 農水省が検討開始 根拠法20年度見直し
農水省は6日、中山間地域等直接支払制度と多面的機能支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金から成る「日本型直接支払い」の検証を始めた。農業者団体からの意見聴取などを通じ制度の課題を洗い出し、2020年度に対応方針も取りまとめる。現場で制度を推進する自治体の事務負担の軽減などが検討事項となる見込みだ。
三つの制度は、政府が地域政策と位置付けており、条件不利地を含めた農地の保全、営農の継続などを後押ししている。各制度の根拠法として、農業の多面的機能発揮促進法が15年4月に施行され、施行5年後の20年度に見直すかどうか、検証するとしていた。今後、三つの関連制度の第三者委員会で検討を進める。
同日の会合で、委員長に就いた東京大学大学院の中嶋康博教授は「それぞれ(の直接支払いは)地域の農業農村に大きな役割を果たしている。改めて法制度、運用について課題を共有したい」と話した。同省は、自治体のアンケート結果を報告。三つの制度を同じ部署で担当している市町村は7割に上った。
宮城大学の三石誠司教授は、関連制度を推進するに当たり「市町村が忙しいため、(現場の要望を)聞くことができていないのではないか」と指摘。自治体の人手不足を課題として検討するよう提起した。
日本消費者協会の河野康子理事も自治体の人手不足を課題に挙げ、「コンサルティングなどの手当てが必要」と述べた。コンサルタント企業クニエの原誠マネージングディレクターは「事務と人材が課題の大きな柱になる」と指摘した。
市町村は同じ部署で3制度を担当するが、同省は制度ごとに担当部署を設けていることも論点になった。中嶋委員長は市町村の人手不足を念頭に「書類様式を可能な限り統一した方がいい」と指摘、同省に精査を求めた。
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2019年12月07日

肉持ち込み厳罰化へ 次期国会提出めざす 家伝法改正で農水省検討会
農水省の有識者検討会が6日、家畜伝染病予防法(家伝法)改正の提言(中間取りまとめ)を公表した。入国者が肉製品を持ち込んだ場合の罰則強化の他、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生時に周辺農場を含む予防的殺処分を可能にすること、疾病発生時の国や都道府県の指導権限強化を盛り込んだ。これを踏まえ、同省は法案作成を進め、来年の通常国会に提出を目指す。
会議では、①輸出入検疫②野生動物対策③疾病のまん延防止措置④飼養衛生管理──の4テーマごとに提言を示した。
輸出入検疫では、訪日客が急増する中で肉や肉製品の持ち込みが増えているとして、厳罰化の重要性を強調。現状では3年以下の懲役または100万円以下の罰金としている罰則を引き上げることを盛り込んだ。家畜防疫員には、肉が入っている疑いのある荷物を開ける権限が必要とした。
野生動物対策には、豚コレラ(CSF)で野生イノシシがウイルスを拡散した経緯を踏まえ、経口ワクチンを法律に位置付けるべきだと明示。疾病のまん延防止ではワクチンがないアフリカ豚コレラの侵入時に、発生周辺農場の予防的殺処分をすべきだとした。
飼養衛生管理については農場へ責任者を設置し、基準や都道府県の命令に違反する場合は厳罰化を提言。都道府県や国の責任を明確化し、緊急時に迅速な対応が行われるよう求めた。
今回の提言をまとめたのは「我が国の家畜防疫のあり方についての検討会」。10月下旬から4回にわたり議論した。
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2019年12月07日

日米協定 規模問わず支援明記 畜産増頭強化も 政策大綱改定
政府は5日、環太平洋連携協定(TPP)等総合対策本部(本部長=安倍晋三首相)を開き、日米貿易協定の国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」を改定した。中小・家族経営や条件不利地も含め、規模の大小を問わずに意欲的な農家を支援する方針を明記。畜産の増頭支援やスマート農業の推進を重視した。来年1月1日にも日米協定の発効を控える中、長期的な生産基盤の強化につなげられるかが課題になる。
2019年度補正予算の農林水産対策費として反映する。安倍首相は「なお残る国民の不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。国内産業の競争力強化に加えて、農林水産業の生産基盤強化に努める」と強調した。
江藤拓農相は同日、農水省の対策本部で「必要な補正予算の確保を含め、しっかりと対応を議論し、これからの食料・農業・農村基本計画の議論にも反映していきたい」との考えを示した。
来年1月1日に発効する見通しとなった日米貿易協定やTPPでは、特に畜産・酪農への長期的な影響が懸念される。
大綱では基盤強化策として「肉用牛・酪農経営の増頭・増産を図る生産基盤の強化」を掲げた。畜産クラスター事業での中小・家族経営向け支援を拡充する。堆肥の活用による全国的な土づくりの展開も打ち出した。
スマート農業の活用、輸出拡大の環境整備などにも力点を置く。一連の財源確保は「既存の農林水産予算に支障を来さないよう、政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」との方針を維持した。
牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)では、TPPの発動基準数量が米国離脱後も見直されず、日米貿易協定のSGと併存するため、基準数量の調整が課題。大綱では「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況を見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行う」とした。
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2019年12月06日

中小規模に配慮を 畜酪対策で決議 衆参農水委
衆参農林水産委員会は5日、畜産・酪農対策を中心に一般質疑をした。対策取りまとめに向けて、関連補給金は中小規模や家族経営の意欲喚起も考慮して決定することなどを政府に求める決議を全会一致で採択した。江藤拓農相は、関連対策の畜産クラスター事業の要件緩和に前向きな考えを示した。豚コレラ(CSF)の殺処分に伴う手当金の非課税化については、過去の事例を踏まえて議員立法を提起した。
決議では加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価や総交付対象数量、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、中小・家族経営を含む酪農家の意欲喚起を考慮して決定するよう要望。畜産クラスター事業などは、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域一体の機械導入などを強力に支援するよう求めた。
畜産クラスター事業の規模拡大要件について、江藤農相は中小規模、家族経営にとって「大きなハードル。重要な政策課題だ」と指摘。地理条件などで規模拡大が難しい農家らへの支援を検討する方針を示した。
加工原料乳生産者補給金の単価決定に向け、江藤農相は環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日米貿易協定を踏まえ、「農家の不安に寄り添わなくてはならない」と強調。「財務(省)と、しっかり交渉をやらせていただく」と単価水準確保に力を入れる考えを示した。共産党の紙智子氏への答弁。
豚コレラ発生農家には家畜伝染病予防法(家伝法)に基づき、全頭殺処分を求め、殺処分した豚の評価額と同等の手当金を支払う。ただ手当金は所得税の対象。経営再開の財源確保のため、非課税化を求める声は多い。
口蹄(こうてい)疫の発生時は、議員立法による措置で非課税となった。江藤農相は、現在の法的状況下で非課税にするのは不可能としつつ、「もう一回議員立法でやっていただければ法的には可能」と述べ、与野党議員に検討を提起した。国民民主党の関健一郎氏への答弁。
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2019年12月06日

日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院
日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。
同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。
同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。
政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。
発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。
協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。
今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。
日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。
政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。
政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。
国内対策 農家規模問わず
政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。
改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。
改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。
農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。
TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。
日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明
日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。
参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。
国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。
協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。
ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。
衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。
一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。
さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。
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