事業協同組合 各地で設立へ 農業、飲食店、介護業…人口急減地域に働き手 若者定住受け皿に

法の活用を呼び掛ける細田議員

 過疎地や離島など人口が急減する地域のさまざまな職場や作業場に、事業協同組合が若者を“人材供給”できる新法が成立した。集落営農組織、飲食店、介護業者、農家など、若者は組合に出資した多様な組織や個人事業主に出向いて通年雇用され、行政が運営費を補助する。新法の活用では若者がやりがいを持って働ける環境づくりや地域内の連携が鍵になる。
 

複数の仕事通年で提供


 新たな法律は「特定地域づくり事業推進法」。先の臨時国会で11月27日に成立した。都道府県知事が認定し、人口が急減している各地域に、特定地域づくり事業協同組合を設立するものだ。

 組合は、地域の四つ以上の会社や個人事業主などが出資して発足。出資できる組織は資本金や従業員数などの上限がある。同組合では社会保障や給与を保障して若者らを通年雇用し、基本的に出資先の組織や個人事業主に人材を供給する。

 総務省によると、山間部の一つの中小企業で雇用を1年間継続するのは難しくても、地域の企業や個人が連携し同組合を設立すれば人材を確保できる。同省は「夏場だけ忙しい農業、冬場だけ忙しいスキー場など、年間の需要の変動を、組合でうまく調整すれば年間通じた仕事が確保できる」と説明する。

 政府・与党は組合運営費の2分の1を基本的に公費から支援する方針だが、特別交付税措置も含めて国がそのうちの4分の3を財政支援をする見通し。来年6月の施行までに同省が詳細を決める。

 組合が雇用する従業員は若者を想定するが、法律には年齢制限を明記していない。厚生労働省の労働局に労働者派遣の届け出をして、各職場に出向くことになる。

 JAの場合、資本金や従業員数の上限があるため、事業協同組合に出資できない組織が多い見通し。ただ、同組合の事務局になり地域の連携を後押しするなど、関わる手立ては多い。事務局は公務員やNPOなど多様な主体を想定する。
 

環境づくり話し合いを


 同法に、既に大きな関心を示す地域もある。農山村に移住したい若者はいても、安定した仕事の確保が移住や定住の壁の一つ。同法の運用次第では若者の定住対策も見込める。今後は、雇用される若者がやりがいを持って出向く環境づくりが問われる。

 島根県邑南町の石橋良治町長は「田舎で豊かに暮らしたい若者の活躍の場を作りたくても、難しい面があった。地域にも若者にも貴重な法となり得る。受け入れる側の責任が問われる法律」と認識する。今後は地域で時間をかけて話し合い、出資をしてもらう会社や組織を募り、若者を受け入れる考えだ。

 子育て支援に力を入れる新潟県出雲崎町も関心を示す。小林則幸町長は「若い人を呼び込める起爆剤としたい」と強調する。一方、西日本のある県は「労働の穴埋めという考えではうまく機能しない。人手不足だからと安易に組合発足を(自治体に)促さず、話し合っていく」とする。
 

地域の“宝”呼び込む

 

 法律の作成を主導した人口急減地域対策議員連盟会長、細田博之衆院議員の話


 かつては田舎には仕事がなく都会に若者が向かっていた。しかし、働く環境や子育てする環境などを見ると、現代は都会が過疎地域に比べて豊かとは決して言えなくなった。ただ、農村に住みたい若者はたくさんいても仕事の確保が課題だ。

 一方、農村では、農業や林業、雪かき、介護、草刈りなど仕事はたくさんあり、人手不足に悩む。ただ、何か専業では食べていけなかったり、一つの企業で雇用は難しかったりと課題がある。

 新法はこの二つの課題を結びつけるもの。雇用保険や年金など社会保障も確保して通年雇用し、多業で働いてもらう。

 法律に「派遣」との言葉があるので都会の派遣業のイメージを持つ人もいるが、全く異なる。来て働く若者は地域の宝。新法は地域の中核となる人材を安定雇用するものだ。派遣というより、人材供給と捉えてほしい。

 国は財政支援をする。ただ、まずはJAや地域の中小企業などみんなで将来の地域の在り方も含めて話し合ってほしい。山間地の集落営農組織に活用してもらいたい。
 

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