「WAGYU」拡大 和牛 味の改良で対抗を

 「WAGYU」と表示される牛肉の生産が欧州で急速に増えている。日本から和牛肉を輸出するとき、海外産WAGYUとの競合は避けられない。和牛肉を選んでもらうための対策が必要だ。本家ならではの多様な遺伝資源を生かし、味の違いを際立たせるなど、WAGYUを意識した改良が求められる。

 畜産技術協会が海外でのWAGYU肉の生産・流通実態調査をまとめた。報告書では、日本の和牛の純粋種や交雑種(F1)の飼育が、欧州で盛んになっている実態が垣間見える。

 海外でのWAGYU生産の起点になったのが、1976年に日本から米国に渡った4頭の和牛だ。これを契機にオーストラリアなどを経由し、精液や受精卵が世界中に拡散。和牛の遺伝子を取り込んだWAGYU生産が、海外で広がってきた。

 英国やスペインはWAGYUのブームのさなかだという。正確な飼養頭数は分からないが、2000年代後半から受精卵移植を利用して牛を増やし、英国では繁殖用の純粋種が推定500~1000頭。スペインの数字はつかめていない。また、ドイツでは17年の飼養頭数が種雄牛34頭、繁殖雌牛が282頭など、3年間で3倍に増えているというデータを載せた。

 純粋種を確保した牧場では、受精卵、精液、生体を、欧州各国や中東に広く販売。流出した和牛遺伝子の拡散は今も続き、産地拡大の余力を秘める。

 各地で生産された肉が欧州の大都市に集まる。ロンドンの有名百貨店やスーパーでは、地元の英国産の他、スペイン、米国、オーストラリア、チリ産などのWAGYU肉が見られたという。それは当然、輸出される日本産和牛肉と競合する。

 本家といえども、敵地で必ず勝てる保証はない。欧州の牧場は欧州の消費者の好みを知っているはずだからだ。和牛肉の輸出を手掛ける関東地方のある牧場主は、日本の和牛は海外で「脂がおいしいと言って感激されている」と話していた。味が国際競争の鍵を握るとみる。

 一方で、最近の和牛肉は脂肪が多く味が落ちたという声がしばしば聞かれる。国内の和牛枝肉共励会では、サシの入り具合や肉の色などで優劣を競う。味が審査されることは、まずない。しかも上位入賞牛はどれも似たような血統だ。霜降りの見た目は確かに美しい。だが、味はどうか。和牛ならではの脂の味を求める外国人に、さらには日本人にも、今の和牛の味は支持されるのか。調査が必要だ。

 政府は30年までに和牛の生産量を倍増する方針を決めたが、味の改良も並行して進めてほしい。本家ならではの多様な遺伝資源を生かせば、短期間で食味が良くなるはずだ。これまでの改良はサシ偏重のきらいがある。策定中の家畜改良増殖目標にも味の改良を盛り込むことを求める。海外市場で戦うためにも、個々の生産者が味を意識した牛群改良に取り組むべきだ。

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