町村職員への期待 課題即した解き方を 福島大学教授 生源寺眞一

生源寺眞一氏

 塾生の皆さん、最後まで頑張れ。そんなエールを届けたい。などと書き出してみたが、ほとんどの読者には何のことやら意味不明であろう。

 塾生とは全国町村会が主宰する地域農政未来塾の第4期生のことであり、不肖私が塾長の立場にある。正月早々に頑張れというエールも奇妙に響いたかもしれない。実は、塾生には研究論文が課されていて、明日7日が提出の締め切りなのである。大半の塾生は、年末年始の休日返上で論文執筆の作業にまい進したに違いない。
 

農政塾に可能性


 地域農政未来塾の対象は、全国の町村の農政担当者もしくは将来の担当者であり、毎期の塾生は若手・中堅の20人程度で構成される。月に1回、週の後半を東京都内に滞在し、講義とゼミの集中的なカリキュラムをこなす。ゼミごとの現地訪問学習も定着している。役場の人員に制約が強まる中での塾通いだけに、送り出す町村の側の期待も大きく、塾生の意欲も生半可なものではない。それでも最後の研究論文は、恐らく一生忘れられないチャレンジとなるに違いない。

 塾生と講師の、あるいは塾生同士の密度の濃い交流の中から、認識が新たになることも少なくない。ほぼ全員に共通する再認識の一つが、自分の所属する町村が実に個性豊かな自治体だという点に他ならない。自然条件や産業の蓄積の特色、したがって強みや弱みの独自性に改めて気付くわけである。町や村の多くは中山間地域に属しているが、中山間の三文字でひとくくりにはできない。
 

町村職員の強み


 個性を上手に生かした創造的な仕事。これこそが町村職員のミッションだとの思いを深くする塾生も多い。言い換えれば、国や県の行政の下請けが本務ではないのである。ここは国や県の側に心してもらいたい点でもある。

 もう一つ、創造的な仕事に取り組む際に、町や村の職員ならではの強みがあることも見逃せない。それは、役場の建物の中には農政以外の部署も配置されており、その気になればいつでも相互に情報や意見の交換が可能だというところにある。縦割りが徹底した中央の官庁では考えられない環境だ。しかも、職員自身が別の領域の仕事を経験しているケースが普通なのである。

 塾生による研究論文は、地域の個性を客観的に把握した上で、それを具体的な提案につなげる取り組みに他ならない。そんなチャレンジを支える塾の基本理念として、塾長である私は折に触れて「解答よりも解法」と申し上げてきた。定型的な答えを学ぶのではなく、実態に正面から向き合い、課題に即した解き方を身に付けてほしいという意味である。

 冒頭に頑張れとのエールを送りたいと述べた。いまや塾生に対してだけではない。年初に当たり、農政の現場で汗を流す皆さんに向けて、心から応援のメッセージを送る。地域社会の持続性を支える創造的な仕事にエネルギーを注いでいただきたい。

 しょうげんじ・しんいち 1951年愛知県生まれ。東京大学農学部教授などを経て17年から現職。日本農業経済学会会長、食料・農業・農村政策審議会会長などを歴任。近年の著書に『農業がわかると社会のしくみが見えてくる』『「いただきます」を考える』など。
 

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