国境越える病害虫 禁止農産物持ち込むな

 重要害虫のジャガイモシロシストセンチュウの封じ込めがうまくいっていない。撲滅対策は2026年まで延びることになった。外来の病害に侵入されると駆逐がいかに大変かが分かる。今年は国連が定めた国際植物防疫年。植物防疫の大切さを再確認し、禁止農産物の持ち込み防止などの徹底が必要だ。

 国際植物防疫年は、2015年の植物検疫関係の国際会議でフィンランドを中心に提案した。国境を越えた人と物の行き来が盛んになったことから、病害虫が新たな地域で広がることを懸念。防疫が世界的に重要な課題になっていると訴えた。

 国際植物防疫年では、“植物の健康”を守ることが、飢餓を終わらせ、貧困を減らし、環境を保全し、経済発展を進め得ることを世界中にアピールする。防疫は経済活動や環境問題とも密接だとの認識を示す。

 島国の日本も、食料や原材料、エネルギー資源を輸入に依存しているだけに、海外からの病害虫侵入リスクに常にさらされている。最近では観光で日本を訪れる人も増え、海を越えて新たな病害虫が渡って来る可能性が高まっている。

 沖縄県と鹿児島県の奄美群島にはかつてウリミバエという重要害虫がはびこっていた。大正期に海外から侵入したとみられる。ガンマ線を照射して不妊化したウリミバエを大量に放して交尾させ、次世代を作らせないという手法を繰り返し1993年にこの地域で根絶できた。

 20年以上の歳月と200億円以上の経費をかけたが、根絶の経済効果は大きい。同時期に重要害虫のミカンコミバエを根絶したことと併せ、本土復帰後も他県に持ち出せなかった果菜類やかんきつが、根絶後は移出できるようになった。

 サツマイモを加害する重要害虫のアリモドキゾウムシが高知県で確認された時には、野生植物への対応で苦労した。この害虫が寄生するグンバイヒルガオなどの野生植物が、国定公園内に分布していると簡単に除去できないからだ。環境保護の問題が絡んでくる。

 新たな病害虫が国内に一度侵入すると、根絶には多大な経費と時間がかかり、環境保全への配慮も求められる。根絶への取り組みは簡単には進められない。国内に侵入させないことが大事だ。しかし防疫上、海外から持ち込めない農産物がたくさんあることは、一般にはあまり知られていない。

 農水省の検疫統計には、海外から持ち込まれた農産物の中から重要病菌・害虫が発見されている実態が記録されている。タイやフィリピンからかんきつを、米国からリンゴやサクランボを土産などとしてそれぞれ持ち帰ることはできない。海外渡航が一般的になった今、身近なところに危険は潜んでいる。まずは農家自身が防疫の重要さを改めて意識し、旅行や視察などで海外に行く際は持ち込み禁止農産物を確認してほしい。

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