続く暖冬… 冷え込む懐 農閑期の減収痛手

雪不足の中、東成瀬村から運んできた雪でかまくらを作る職人(秋田県横手市で)

降雪に備えて除雪車を点検する山波雅也さん(手前)と中村さん(新潟県柏崎市で)

 暖冬による雪不足で、豪雪地帯の農村や農家の冬の経済活動に影響が出始めている。各地で雪まつりの中止やスキー場の休業が相次ぎ、観光客の出足が心配されている。道路の除雪作業やスキー場での仕事は、農家にとって冬場の収入源。気象庁の予報とは裏腹に、「雪」を望む声は高まるばかりだ。(川崎学、雫石征太郎)
 

雪まつり かさむ調達費 


[秋田]

 冬は白銀の世界となる秋田県横手市。平年なら68センチ積もる雪が、今年は24日現在で0センチ。道路はアスファルトがむき出しの状態で、市観光協会の柴田秀樹さん(51)は「断続的に雪が降ってもすぐに消えてしまう」と残念そうに話す。

 横手雪まつり(2月15~17日)に向けては、有名なかまくらの製作に必要な雪を隣接する同県羽後町や東成瀬村から集め、連日輸送している。これまでは市内の除雪した雪で賄っていたが「羽後町からは片道1時間程度かかる」(運搬業者)。

 水稲やリンゴを栽培する農家で「かまくら職人」の親方でもある北嶋勝雄さん(72)は「他の町から雪を運んだのは、50年以上前に岩手県から運んで以来」と振り返る。「遠くから雪を運ぶと雪が固くなり、かまくらを作りづらい」のだという。

 雪まつりには昨年50万人の観光客が集まり、インバウンド(訪日外国人)も多い。柴田さんは「雪の輸送費増などでコストが例年よりかかることは間違いない。観光客が減少することも考えられる」と頭を抱える。

[福島]

 福島県下郷町で2月8、9日に開く「大内宿雪まつり」も、雪灯籠やかまくら作りの中止を検討している。大内宿は江戸時代の宿場の面影を残し、冬は雪景色で観光客に人気。だが町職員によると、これほど雪が降らないのは経験がないという。

 花火も打ち上げる予定だが、積雪がなく安全面に懸念があることから直前に見極める方針。イベントはステージショーなどで盛り上げるという。町商工観光係は「雪が降ってくれないと観光客におもてなしができない」と言い、思いは切実だ。
 

除雪作業 出動3日だけ


[新潟]

 新潟県柏崎市にある農業生産法人山波農場には、全長8メートル、車幅3・6メートルの大型除雪車がずらりと並ぶ。巨大なタイヤにはチェーンがしっかりと巻かれ、いつでも出発できる状態だ。だが例年なら2メートル近い積雪がある地域の道路に、雪はない。

 同法人は県や市から受託し、1985年から路面の除雪作業を続けてきた。現在、市内の総延長約60キロで除雪を担う。積雪が3メートル近くになる年もあり、除雪時にスタッフは午前0時に集合。朝の7時ごろに戻るまで重労働をこなす。

 雪が多かった2017年度に同法人は56日出動したが、今シーズンは3日だけ。除雪を担うスタッフの山波雅也さん(21)と中村葵さん(26)は「除雪しなくて済むのはいいが、経営への影響が心配」と、複雑な心境を語る。

 除雪事業には多額のコストが必要だ。除雪車には運転と周囲の安全確認で合計2人が搭乗する。交代要員を含めると除雪車1台に4人必要で、10台の除雪機を保有する同法人は、40人の人員を確保する。暖冬の今シーズンは、その人件費が経営にのしかかる。

 同法人の山波剛代表取締役は「地域の道路を熟知した私たちが除雪し、住民には少しでも快適に暮らしてほしい。雪が多い年でも少ない年でも、事業者が安心して除雪を続けられる仕組み作りが必要だ」と訴える。

 新潟県によると、県内に57あるスキー場のうち営業しているのは32カ所(21日現在)。湯沢町で水稲を栽培する今村将哉さん(33)は、町の岩原スキー場内で農家民宿を営む。スキー場は営業しているものの、雪が少なく客数は例年の半分程度だという。「この地域の生産者の多くは、除雪やスキー場など雪に関わる仕事が冬の収入源。影響は大きい」と話す。

 妙高市では、特産の調味料「かんずり」を作るためトウガラシを雪にさらす作業を、標高が高いスキー場に変更して行った。十日町市で2月14~16日に予定する雪まつりのメイン会場には雪が全くなく「とにかく降ることを祈っている」(市観光交流課)状態だ。
 

近畿北陸など 降雪ゼロも


 気象庁は24日、記録的な高温や雪不足について本州付近への寒気の南下が弱く、冬型の気圧配置が続かなかったことが要因として考えられると発表した。累積降雪量は過去最も少ないペースで推移しており、同庁は「今後も暖冬傾向は続く」と見ている。

 2019年12月以降、東・西日本日本海側を中心に多くの観測所で降雪量が平年に比べ20%以下(11月1日~1月23日の累積降雪量)となった。新潟、富山、福井、滋賀、京都、兵庫、島根、鳥取では降雪がないもしくは累計降雪量が1センチに満たないため平年比0%の地点もある。

 その要因として同庁は「日本付近での偏西風の北への蛇行や、北極付近の寒気が流れ出しにくい現象が続いたことなどが理由として考えられる」と分析する。

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