新型肺炎の拡大 まん延と景気悪化防げ

 中国発の新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で、経済にも悪影響が出始めている。同国では春節の連休明けも各地で人の移動が規制され、工場などの操業停止が続く。日本も、国民の健康と経済の両面で危機に直面。政府はまん延防止に全力を挙げるとともに、景気への影響を注視し悪化を防ぐべきだ。

 中国政府が5日発表した新型肺炎による死者(午前0時時点)は、前日より65人増えて490人。感染者も3887人増えて2万4324人となった。感染が疑われる「疑似症例」は、追加報告は減ったが、2万3000人を超えている。中国本土以外では香港、フィリピンで各1人が死亡し、27カ国・地域の220人以上に感染が広がった。

 新型肺炎は、米中貿易摩擦で減速した中国経済に追い打ちをかけた。封鎖状態の湖北省武漢市に続き、浙江省温州市では2~8日、市民の外出は生活必需品を買う場合に限り2日に1回、1世帯に1人までと制限。地方政府は9日までの工場の操業停止や在宅勤務を指示しており、生産と消費の両面で実体経済に深刻な影響が出ている。

 日本でも、湖北省や武漢市から帰国した邦人を中心に感染を確認。まずはウイルスを国内にまん延させないことが重要だ。政府は新型肺炎を指定感染症とし、14日以内に中国湖北省に滞在歴がある外国人の入国を拒否する措置を開始。サーモグラフィーを使った空港での体温監視など水際対策も強化している。

 感染者には無症状の人もおり、発見や二次感染の防止は困難だ。ただ、感染症対策に詳しい東北医科薬科大の賀来満夫特任教授は「無症状の人からどれくらい感染するのかは不明な部分が多いが、すぐに感染が広まると考えるのはまだ早く、現段階で過剰な心配は不要」と冷静な対応を呼び掛ける。

 中国の景気減速と併せて訪日中国人の減少による景気への影響が心配される。大手百貨店4社の春節の連休期間中(1月24~30日)の免税品の売上高は昨年比で3社が10~15%減、残り1社も5%のマイナスだった。特に中国で団体旅行が規制された連休後半に大幅に減少した。

 影響は地方の観光地や農業・農村にも広がっている。北海道弟子屈町の渡辺体験牧場では、2月上・中旬に来場を予定した中国からの団体旅行が10組ほど中止になった。バターやアイス作り体験、雪遊びなど200人分以上がキャンセルされたという。茨城県内では、春節で中国に帰省していた技能実習生が日本に戻れない事態も起きた。現在の状態が続くと、人手不足で受け入れ農家の経営に影響が出ることも心配されている。

 黒田東彦日銀総裁は衆院予算委員会で「中国経済のプレゼンス(存在感)が大きくなっており、新型肺炎の影響が大きくなる可能性がある」と指摘。国会は来年度予算案を審議中で、日本経済への影響と対策についても十分な議論が必要だ。
 

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