食料輸出規制 国際的リスクに備えよ

 世界の食料供給リスクが高まっている。新型コロナウイルス禍に加え、地球温暖化による異常気象が相次ぐ。アフリカ東部などではバッタ被害もあり、輸出規制が増えかねない状況だ。食料の安定供給に責任を持つ政府は、危機感を持つべきだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、食料の生産や流通を妨げている。国連食糧農業機関(FAO)は、「すべての人々の食料安全保障を脅かし、最も貧しい国々に住む特に困難な状況にある人々を直撃する」と、警告。世界食糧計画(WFP)は、2020年に栄養不足で苦しむ人は前年より倍増し、2億6500万人に達する恐れがあると見通す。危機的事態だ。

 地球温暖化による干ばつや集中豪雨などの異常気象も世界で多発し、食料生産を脅かす。昨年から記録的な山火事に見舞われたオーストラリアでは、今年の牛肉生産が前年より14%も減少するとの見方もある。

 バッタの大発生も脅威だ。アフリカ東部や中東、西南アジアでサバクトビバッタが大発生し、深刻な農業被害をもたらしている。FAOによると、東アフリカの国々で2000万人が食料不足に陥っているという。

 バッタは、中東からインドにも迫り、パキスタンでは非常事態宣言を出した。中国でも、各地に監視観測体制の強化を通達し、「今年の食料の生産量は必ず6億5000万トン以上を実現しなければならない」(農業農村部)と危機感を募らせる。

 米国農務省の20/21年度穀物需給見通しでは、世界の生産量と消費量はともに27億トン台に増え、生産は過去最高になる見込みだ。期末在庫率も32%台に上がる。しかし、「複合災害」で生産が減れば、市況は急変しかねない状況だ。中国などで食料不足となれば、国際市場に混乱をもたらすのは必至だろう。

 こうした中で無視できないのが、農産物輸出国の輸出規制の動きだ。農水省の調べでは、これまで延べ19の国・地域が導入した。世界貿易機関(WTO)農業協定では、輸出規制を新設する場合はWTOに通報するよう求めているが、実際に通報したのは4カ国だけである。

 もともと農業協定は、関税化で輸入数量制限を原則撤廃させる一方で、輸出規制は容認する不平等な内容だ。その協定を見直す必要がある。しかし、協定より自国民の食料確保を優先するのが、国際社会の現実だ。

 FAO、WFP、WTOは共同声明で、新型コロナ禍が「輸出規制の波を引き起こし、世界市場で食料不足が生じる可能性がある」と警告している。当然の懸念だ。韓国は、輸入が止まった時の対策の点検を始めた。

 日本は食料の多くを海外に依存し、自給率(カロリーベース)は37%と低迷している。輸入頼みの「台所」は、輸出規制のあおりを受けかねない状況だ。国内生産を振興し、自給率を引き上げ、国際的なリスクの高まりに備えるべきだ。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは