中高年引きこもり 共に支え生きる社会を

 中高年の「引きこもり」はひとごとではない。仕事、人間関係、病気を引き金に、誰にでも起こり得る。80代の親と引きこもる50代の子ども。社会的孤立が深まる「8050問題」は深刻さを増す。偏見をなくし、居場所と支援の仕組みを作ろう。協同組合が目指す誰一人取り残さない社会でありたい。

 内閣府によると、中高年引きこもり(40~64歳)は推計61万3000人。昨年末に行った初の実態調査で、その一端が垣間見える。引きこもりの定義は、自分の部屋や家にこもり、趣味の用事や近くのコンビニに行く以外、家から出ない状態が半年以上続くケース。3分の2は男性。引きこもり期間が7年を超す人が半数を占め、長期化、高齢化をうかがわせる。

 きっかけは、退職、人間関係の悪化、病気などで、「職場になじめない」「就職活動がうまくいかない」など仕事関係によるものが多い。絶望感や疎外感も強まり、半数が「生きるのが苦しい」と答えている。親の高齢化が進む中で、将来不安も募っている。

 引きこもりは、社会を映す事象でもある。1980年代はいじめや不登校などによる「若者問題」。2000年代は就職氷河期など「就労問題」。そして現在は「8050問題」として親子が社会から孤立し、共倒れする危険をはらんでいる。

 引きこもりの原因も実態も百人百様で、ある人には自衛手段であり、ある人には生き抜くすべである。それを現実逃避と決め付け、排除する空気がある。5月の神奈川県川崎市でのスクールバス児童殺傷事件、6月の元農水事務次官の長男刺殺事件などを引き合いに、「犯罪予備軍」と決め付けたりする偏見もあふれている。メディアやネットなどでつくられたそうした偏見が、引きこもり家族をさらなる孤立へと追い込んでいく。

 行政の画一的な就労支援や自立相談支援も当事者たちを追い詰めることがある。この問題を長年追究し、支援活動をするジャーナリストの池上正樹さんは「就労の成果を出すことが目的の支援でなく、本人が生きる意欲を持てるような居場所づくり」を提起。自己責任論と対極にある「地域共生社会の理念」こそ必要だと説く。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の伊藤正俊共同代表も「誰もが当事者になる深く重いテーマだから、孤立を防ぐ社会的な仕組みと、どのような状態になっても生きていける仕組み作りが必要だ」と言う。

 内閣府の実態調査では、農山漁村や地域の伝統行事が残る地域では、引きこもりが少ない傾向にある。地域の結び付きが抑止効果を生んでいるのかもしれない。今後望む支援として農業体験を挙げる声もあった。就労や生きがいづくりの場として「農」の持つ力は見逃せない。助け合いの中で生きる力を育み、誰もが役割と居場所を見つけられる社会でありたい。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは