日本美術理解へ目からうろこの本が出た

 日本美術理解へ目からうろこの本が出た。源流を縄文×弥生のハイブリッドと説く▼『日本美術の底力』(山下裕二、NHK出版新書)で、最近の日本画ブームを読み解く。あの極彩色の超絶画法を駆使し世界中を驚かせた江戸中期の天才絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)と絡め〈若冲パンデミック〉との表現に合点する。派手で独創的な縄文に由来する“奇想の画家”に脚光が当たる▼その一人、岩佐又兵衛による国宝「洛中洛外(らくちゅうらくがい)図屏風(ずびょうぶ)」は京の華やかさを見事に伝える。今年没後370年を迎えた又兵衛の生涯は波乱に富む。放映中のNHK大河「麒麟(きりん)がくる」のシーンとも重なる。父親は戦国武将・荒木村重。主君・織田信長を裏切り滅亡するが、赤子の又兵衛は奇跡的に生き延び異能の絵師になる▼巨大な絵師集団・狩野派を脅かした長谷川等伯。「松林図屏風」は余白の美を伴う水墨画の最高峰の一つ。墨の濃淡のみで松林を包む湿潤な大気の流れまで表す。静的で優美な弥生の美の典型だが、先の本は等伯こそ縄文と弥生のハイブリッドの人だという。確かに同屏風の前に、秀吉に請われ絢爛(けんらん)たる金碧(こんぺき)画「楓(かえで)図」を描く▼秀作が並ぶ東京国立博物館の特別展「桃山」を先週見て得心する。豪華さの一方で利休の〈静〉も存在感。縄文と弥生双方の美が交わり輝く。
 

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