組織改正と行政力 食料産業発展に期待 元農水省官房長 荒川隆氏

 師走の声を聞き、来年度予算編成も大詰めだ。予算の陰に隠れ目立たないが、役所にとって負けず劣らず重要なのが、組織定員要求だ。組織の形を定め、その格付けごとの定員(級別定数)を決める組織定員要求は、役人にとって自らの処遇や組織の格にも関わる大事だ。

 橋本内閣が道筋をつけた2001年の省庁再編により、1府22省庁の中央官庁が再編され、現在につながる1府12省庁(当時)体制が導入された。役所の数を減らすだけでなく、各省庁の内部部局も一律に1局削減するとともに、全省庁を通じて局の数に上限が設定された。国土交通省や総務省など統合省にあっては、内局の数も多く問題はなかったろうが、単独省として存続した農水省では、どの局が削減されるか大議論になった。定員の割に局の数が少ない農水省で、5局(当時)を4局(当時)に再編することは難題で、結局、「畜産局」が廃止され耕種部門(農産園芸局)と統合し「生産局」が設置された。

 今、その「畜産局」が復活するかどうかのヤマ場を迎えている。「生産金額では米を凌駕(りょうが)している」「今後の輸出拡大の目玉だ」など理屈はいろいろあろうが、それはそれで、「昔の名前で出ています」の感がなくもない。5兆円の新たな目標に向かい、今後本格化するだろう輸出攻勢を担う「輸出・国際局」の新設と「合わせ一本」ということだろう。

 この組織改正の陰で見逃せないのが、飲食料品産業や外食産業などを所掌する部局の位置付けの変更だ。現在はその名の通り「食料産業局」が設置されているが、新組織案では、大臣官房に「新事業・食品産業部」なるものが設置されるらしい。わが国の食料・農林水産業の売り上げは100兆円で、そのうち農業が8兆円、林業・水産業は4兆円、残りは全て広義の食料産業部門だ。その食料産業部門を国の行政組織としてどう扱うかは、農水省の組織改正の歴史上、悩ましい問題だった。とかく1次産業偏重、農業偏重といわれてきたこの役所で、1972年に「企業流通部」が局に格上げされ、現在の「食料産業局」の前身である「食品流通局」が設置された。食料産業関係者の悲願が実現したのだ。

 あれから50年、今般の組織改正が、よもや食料産業の格下げではないと信じたいが、はたからはそんな懸念も聞こえてくる。多忙な官房長が新たなこの部を直接指揮監督するのは難しかろうから、何らかの総括整理職が設置されるのだろう。それにより、「輸出・国際局」や作物原局(農産局、畜産局、林野庁、水産庁)との連携が今以上に図られ、食料産業のますますの発展につながる組織改正となることを期待したい。

 凡人の懸念が杞憂(きゆう)で終わりますように。

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