20年産米販売 家庭向けもブレーキ 10、11月支出額 過去20年で最低
2021年01月18日

2020年産米の販売が低迷している。新型コロナウイルス下で業務用需要の苦戦が続き、頼みの家庭用需要も勢いを失っている。10、11月の米の家計支出額は過去20年で最低水準だった。緊急事態宣言の再発令で、販売環境は不透明さが強まる。需給の均衡に向けて、需要に応じた生産だけでなく消費喚起対策が求められる。(玉井理美)
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
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特殊詐欺とJA 職員の見破る力 磨こう
「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺の被害が後を絶たない。被害防止の一翼を担うのが金融機関だ。JAは組合員・利用者との関係の強さを生かし貢献している。しかし、金融窓口を通さないなど新しい手口が次々に現れ、より巧妙化している。JAには、詐欺を見破る職員の力を一層高めることが求められる。
警察庁のまとめでは、2020年の特殊詐欺の全国の認知件数は1万3526件で前年より20%減、被害額は277・8億円で同12%減だった。ただし同庁によると、高齢者を中心に被害が高い水準で発生。また、1件当たりの被害額は214・8万円で同9%増と高額になっており、依然深刻な状況だ。
金融機関ではさまざまな対策を取っており、JAも同様だ。地元警察と連携した注意の呼び掛けでは、地域住民らの関心を高めるために、ちらしなどと一緒に特産品を渡したり、青年組織や女性組織と協力してマスクなどの小物を配ったりするなど工夫を凝らした取り組みも盛んだ。また金融担当職員の研修を行い、それを生かして実際に被害を防ぎ、警察から感謝状を贈られた職員も多い。
しかし詐欺の手口はその時の社会情勢などを反映して、変化している。同庁によると、昨年は「新型コロナウイルス感染症関連の給付金がある」と偽り、通帳などを受け取るなどコロナ関連の特殊詐欺が55件発生。うち2件は未遂に終わったが、53件で約1億円の被害が出た。
金融窓口を通さない手法や、職員が気付きにくい金額をだまし取ろうとする事例もあった。
島根県のJAしまねでは、子会社が運営するコンビニの店長が架空請求詐欺を防いだ。来店した高齢者が、身に覚えのない請求があり20万円分のプリペイドカードを買って支払うよう言われたと話したことで詐欺の疑いが浮上。警察に通報した。機器の操作に戸惑っていたため声を掛けたことがきっかけだった。
三重県のJAみえきたでは、12万円を出金しようした高齢者が窓口での雑談中に支払い請求のはがきが届いたことを話題にしたことから、職員が詐欺を疑い被害を防いだ。本人確認が必要な金額ではなく、別の通信販売の支払いを抱えていたため、本人は詐欺と気付かなかった。
いずれも、JAが職員らに研修を受けさせるなどして、日頃から対策を取っていたことが奏功した。JAでは、詐欺防止の研修は日常的になっている。しかし金融窓口以外を利用したり、支払わせる金額を少なくしたりするなど、詐欺グループは新たな手口を使ってくる。詐欺を防いだ事例では、来店者の困った様子や普段と違った行動、ちょっとした会話などから詐欺を疑っており、組合員・利用者と職員の日頃からの関係や、研修を基にした気付きが大きい。
JAの職員らは、特殊詐欺を防ぐ「最後のとりで」である。技能を磨き、地域の安全・安心に一層貢献してほしい。
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2021年02月27日
臨時の主治医 保健所支援策の参考に
新型コロナウイルスの流行が続く中、JA静岡厚生連静岡厚生病院(静岡市)の医師が全国唯一の取り組みで奮闘している。感染して自宅などで療養している子どもを保健所に代わって電話で診察。患者の不安を取り除くとともに多忙な保健所職員を支えるのが狙いだ。全国の医療関係者も参考にしてほしい。
全国の保健所の業務に詳しい浜松医科大学(静岡県浜松市)の尾島俊之教授によると、新型コロナの患者が多い地域では業務が逼迫(ひっぱく)し、労働時間が過労死ラインを超える保健所職員が目立つ。
こうした中、電話診察に当たっているのは小児科診療部長の田中敏博医師(53)。同病院が協力する静岡市保健所は、コロナ関連(患者、濃厚接触者)で1日最大約600人の健康を観察。1人につき確認事項が10項目以上ある。対応している保健師は数人で、一人一人に丁寧に向き合うのは難しいという。
きっかけは昨年8月、市が地元の医療関係者らと、新型コロナに感染した子どもは比較的軽症で、原則「自宅などで療養する」と申し合わせたことだ。日本小児科学会の考えに準じた。自宅療養だと主治医と相談しにくくなる。子どもの不安を払拭(ふっしょく)するために田中医師は「電話などで対応できる臨時の主治医が必要だ」と提案し、自ら診察を買って出た。
昨年10月、診察を本格的に開始。2月17日までに、濃厚接触者を含む15歳以下の55人と、保護者ら52人を診察した。診察時間は朝夕の1日2回。直接対面で初診した後、療養する自宅などに連絡し、体温、心拍数、病状などを確認し、悩みなども聞く。田中医師は「全国に広まればうれしい」と話す。
同病院は「病院としてこの動きを応援したい」(桑原吉英事務長)考え。JA全厚連も「田中医師の取り組みは保健所を支援するとともに、地域と厚生連病院の関係を深めることにつながっている」とし、注目する。
同保健所や田中医師には、県外の自治体などから問い合わせがある。また同市の開業医らでつくる静岡市静岡医師会がこの取り組みに賛同。臨時で主治医を引き受ける方向で市と協議している。小児科に限らず、高齢者にも対応できる医師が協力すれば保健所の全国的な業務軽減につながるとの指摘もある。
ただ、この取り組みは、院内の医療スタッフや事務職員の協力が前提だ。新型コロナの流行で医療現場も逼迫している。自宅などで療養する患者に安心感を与えながら、保健所の業務をどう軽減するか。地域の実情にあった対応が求められよう。
保健所の業務の逼迫は、行財政改革などで保健所の数を減らし、職員数も減ったことが一因。保健所数は現在469カ所で、ピーク時の約半分に減った。「減らし過ぎた人員を増やすなどして、保健所の感染症への対応力を高めなければならない」(尾島教授)と言える。
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2021年02月28日

トマトにLED補光 日照不足解消へ試験 新潟のベジ・アビオ
トマトを施設栽培するベジ・アビオは2月中旬から、発光ダイオード(LED)を使った補光の実証試験を始めた。日本海側で9月から翌年7月にかけて栽培する同社は、冬場の日照不足が課題だった。LEDで日射を補って光合成を促すことで、収量と品質の安定を狙う。……
2021年03月03日

[米のミライ](4) 輸出 外・中食から家庭狙う 本物志向に応える JAグループ茨城
JAグループ茨城は、米の輸出に力を入れ「JAグループ茨城米輸出協議会」を設立、輸出用米の集荷量をこの3年で3倍にした。地道に販路を開拓し、昨年はフィンランドのスーパーで売るすし向けにも広げた。海外で日本食が広まり、粘りや香りの良い日本米の需要が高まっていて、有望な市場として開拓を進める。輸出を通じた需給調整にも期待をかける。
JA全農いばらきは2月、初めて米の県オリジナル品種「ふくまる」の輸出を始めた。3月からシンガポールの日系スーパーで、家庭用精米の売り場に並ぶ予定だ。ターゲットは中所得層以上を見込む。
JA全農いばらき米穀総合課の並木誠也課長は……
2021年03月02日

[米のミライ](6)加工用米 産地と地元実需 協力 活用の裾野広げる 新潟、熊本県
「パンやカップ麺のように、手軽に食べてもらえる商品にしたい」。JA熊本経済連は、県産の加工用米を使った冷凍米飯を売り込む。ご飯を炊く手間から国内の精米消費量が落ち込む中でも、電子レンジで調理できる商品ならば、消費者の簡便ニーズに応えられると商機をみる。
2009年から冷凍米飯事業に乗り出し、現在の「熊本県産こだわり炒飯」は、焼き豚やニンジンなど県産品の利用にこだわった5種類を展開。……
2021年03月04日
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2021年03月04日

[米のミライ](5) 地産地消 生産者自ら積極PR 官民連携で手応え 北海道深川市 ふかがわまい生産組合
米の消費量が落ち込む中、各主産地が販路拡大を模索する。北海道は、府県産米から北海道米への消費の切り替えを進める「米チェン!」運動など、地産地消を強力に展開してきた。現在、道民の9割近くが地元の米を食べている。
ふかがわまい生産組合は、JAきたそらちや深川市と連携し、生産者自らが米の営業活動に力を入れる。減農薬・特別栽培の「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」の地産地消を推進。「産地一丸で深川産の米をPRしよう」と、2019年9月に水稲農家の統一組合を設立した。……
2021年03月03日

[震災10年 復興の先へ] 「戻らない」5割 避難先での生活定着 復興庁など 福島県4町住民意向調査
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響を受ける双葉、大熊、富岡、浪江4町の住民のうち、避難先から「戻らない」と考える人が5割を占めることが復興庁などの2020年度調査で分かった。19年度と比べて4町とも帰還した住民は増えているが、戻らない人の割合の方が依然高い。既に避難先での生活が定着し、帰還しにくい人が多いことが背景にある。
「戻らない」の割合を町別にみると、双葉町が62・1%、大熊町が59・5%、富岡町が48・9%、浪江町が54・5%。いずれも19年度調査とほぼ同じ水準のまま変わっていない。
帰還しない理由は、富岡町では「既に生活基盤ができている」が最多の60・1%。大熊、浪江各町も同様に最多だった。双葉町も「避難先で自宅を購入し、今後も住む予定」がトップだった。避難生活が長期化する中、仕事が定着したり、友人が増えたりしたことで、元の町に戻るのを見合わせるケースは多い。
一方、4町とも帰還するかどうか「まだ判断がつかない」が2割程度いた。帰還を判断するのに必要な条件として多く挙がったのが医療・介護施設の確保。「医療・介護の復旧時期のめど」が最多の56・8%だった浪江町を含め、各町とも同様の回答がトップだった。
避難指示が一部解除された大熊、富岡、浪江各町は、いずれも10%未満ながら「戻っている」との回答があった。最も高かったのは富岡町の9・2%で、前年度から1・7ポイント増えた。各町とも19年度を上回った。
帰還を決めた理由は「(帰還先の)生活は気持ちが安らぐ」が多く、浪江町は68・8%、富岡町は52・4%だった。大熊町は「役場機能が再開した」が最多の43・5%。故郷を思う気持ちに加えて、行政機関が機能していることが帰還の動機になっている。
今回の調査は4町に加えて、川俣町山木屋地区も対象。「戻っている」との回答は37・8%で、19年度調査と同様に一定数が帰還している。避難指示区域が解除されていることも影響しているとみられる。
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2021年03月03日
コロナ下販促支援 2次募集 7月末分まで対象に 農水省
農水省は、新型コロナウイルス禍で売り上げが2割以上落ち込んだ農産物の販売促進活動を支援する「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」の2次募集を行う。近く募集を始め、締め切りは4月上旬とする方針。4月中下旬から7月末までの取り組みを対象とする。
2020年度第3次補正予算で250億円を計上した事業だが、緊急事態宣言の再発令による影響なども踏まえ、21年度も支援することにした。……
2021年03月02日
21年産米需給対策 15県が「連携型」活用 飼料用米対象が中心 農水省まとめ
2021年産米の需給安定に向け、都道府県と同額を国が上乗せ助成する措置を活用し、15県が独自の転作支援策を実施する方針であることが農水省のまとめで分かった。新潟、東北地方など、20年産の主食用米の作付面積が大きい上位10道県のうち7県を含み、飼料用米による転作拡大を助成対象とする県が多い。
同省が都道府県から聞き取り、2月22日時点でまとめた。……
2021年03月02日

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2021年03月02日

[迫るリミット](1) 荷主が選ばれる時代 物流の環境改善急げ
新型コロナウイルス下で、生活や農産物流通に欠かせないインフラとして、物流業界の存在感が高まっている。一方で「働く時間が2割長く、給料は2割安い」といわれる業界には、働き方改革の波が押し寄せる。荷物を運べなくなる事態を防ぐため、農業界も共に環境改善を加速できるか。タイムリミットが迫っている。
使命感が支え
昨年8月、東北地方で野菜や米などの農産物を取り扱う運送会社の担当者(40代)は、契約する下請け会社から連絡を受けた。「物流センターでコロナ感染者が出た」という報告だった。……
2021年03月01日
農協改革 改正法検討時期迫る 「准組」「信用事業」が焦点
改正農協法の施行5年後の見直し時期まで、残り1カ月となった。政府の規制改革推進会議は週内にも農林水産ワーキンググループの会合を開き、農協改革を巡る政府・与党の議論が本格化する見通しだ。准組合員の事業利用規制や信用事業の在り方が焦点。過去の経緯を踏まえた丁寧な議論が求められる。
2016年4月1日施行の改正農協法は、政府が施行後5年をめどに、農協改革の実施状況を勘案して見直すことを定める。……
2021年03月01日
大雪被害のハウス再建 資材発注早めに 納品に数カ月 規格・量 把握を 農水省
昨年12月以降に東北、北陸地方などを襲った大雪で被害を受けた農業用ハウスの再建に向けて、農水省やJA全農は、資材の早めの発注を農家に呼び掛けている。特にパイプは、農家が発注してから納品されるまでに通常でも2、3カ月程度かかる。これから復旧作業が本格的に始まるため、円滑な資材の手配には、必要な規格や量の把握が重要と指摘する。
農水省によると、今回の大雪による農業用ハウスの被害は25日時点で26道府県の1万5420件に上り、被害額も94億円に及ぶ。岩手、秋田、山形、新潟の各県で被害が大きい。雪が残る地域も多く、「被害の全容はまだ分からない」(技術普及課)状況だ。
大雪からの早期復旧に向けて同省は、全農などの関係団体や資材メーカーに通知を出し、農家に①規格ごとに必要な資材の量を整理して早めに発注する②流通の混乱を避けるため、複数の販売店などへの重複注文は控える──ことを呼び掛けている。
造管メーカーは、厚さや長さなどが異なる、さまざまな規格のパイプを製造している。全農によると、造管メーカーが農業用ハウスに使われるパイプを製造する頻度は1~1・5カ月に1回程度。農家が発注してから、農業用ハウスメーカーに原料パイプが納品されるまでには「2、3カ月程度かかることが一般的だ」(資材課)という。
全農は円滑な資材供給と施工に向け、各県本部と、過去の災害のハウス復旧で発生した課題や解決策を共有。自力で施工する農家を支援するため、講習会を4月以降、各地で開く考えだ。
農水省も2月、自治体やJA、農業用ハウスメーカーなどによる連絡会議を岩手、秋田、山形、新潟の各県で開き、被害状況やハウスの発注状況、課題などを共有。関係組織の連携を促し、迅速な復旧を目指している。
一方で、新型コロナウイルス禍からの経済回復により、パイプの原料となるコイルの需要が高まっていることから、全農は「パイプの需給がタイトになりつつある」(同)と説明する。
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2021年02月28日
民間建物 木造化促す 促進法改正へ自民が骨子 党派超え 今国会成立めざす
自民党は、議員立法による「公共建築物木材利用促進法」改正案の骨子をまとめた。現行法では公共建築物に限って木材の利用を促しているが、この対象を民間の建物にも拡大することが柱。利用期を迎えている国内の人工林の需要確保につなげる。野党にも賛同を呼び掛け、超党派の議員立法として今国会で成立させたい考えだ。
同法は2010年に成立、施行され、国が整備する建築物などへの木材利用を促している。日本の森林は、戦後に植えた人工林を中心に主伐、利用の時期を迎えていることから、民間の建物の木造化も促し、国産材の利用につなげるべきだと判断した。
改正案では、国・地方自治体と事業者が、建物への木材利用の推進に関する協定を締結する。協定の内容は公表し、事業者が着実に実施することを求める。国や地方公共団体は、協定に基づいて木材を利用する事業者に対し、財政支援などで後押しする。
世界貿易機関(WTO)協定の内外無差別の原則を踏まえ、国産材の利用を法律で義務付けることはできない。国産材の利用を推進する場合は、自治体と事業者が合意して協定を結ぶことで対応する。
木材利用について国民の関心や理解を深めるため、木材利用促進の日や促進月間を創設することや、農水省に省庁横断の「木材利用促進本部」を設けることも盛り込んだ。同本部では建築物への木材利用に関する国の基本方針を定め、施策の司令塔ともなる。農相、総務相、国土交通相など関係閣僚で構成し、農相が本部長を務める。
50年に「脱炭素社会」の実現を目指す政府方針を受け、法律の目的に、その実現への貢献を加えた。法律名も「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改称する。同党は今後、野党にも呼び掛け、超党派での法案策定を進める方針。通常国会での成立を目指す。
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2021年02月28日