「アグラボ」 ベンチャー支援 農家の笑顔を増やす 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 東京・大手町に2019年に開設された「アグベンチャーラボ(一般社団法人AgVenture Lab)」を訪ねました。これからの農業界に欠かせないベンチャー企業を応援しようと、JAグループが共同で立ち上げた機関で、ここでは「アクセラレータープログラム」を実施しています。投資や経済の世界では知られる用語で、「アクセル」の言葉通り、スタートアップ企業の成長速度を加速させるため、採択された企業に投資したり、協業したりして互いの発展を目指す仕組みです。

 アグベンチャーラボのプログラムによりこのほど採択されたのは、農産物の取引業務をスマホで簡略化し、労働時間を削減し作業効率を上げる農業流通特化型サービスを提供するkikitori(東京)です。代表の上村聖季さん(33)は、大手商社から農業現場を経て青果流通に参入しました。電話やファクスによるやりとりで効率が悪く、働く人も疲弊している現場を新しい技術で改革しようとしています。

 同じようにIT技術で農場の事務作業のスマート化に挑むのは、Agrihub(アグリハブ)の代表、伊藤彰一さん(33)。IT業界のエンジニアを経て、調布市の実家である野菜農家を継ぐ中で、手間のかかる農薬検索や管理から作業日誌まで付けられるスマホアプリを開発しました。既に1万人以上が会員登録して生産者には好評ですが、無料のため収益にはつながっていません。

 実はこのシステムで作業効率が上がるのは、農家だけではありません。出荷先として農薬使用履歴の情報を農家に求めるJA側も、手で入力していた手間が省けるのです。デジタル化すれば、生産者もJAも労働時間が減り、ミスも防げ、作業効率が上がり、農業界のみんながウィンウィンになるというわけです。

 伊藤さんはJAに有料でシステム導入を働き掛けていますが、ご存知のように、JAの営農部門は赤字の場合も多く、現場が望んでも、追加予算となると決裁には至りにくいそうです。

 しかし一方で、導入に前向きなJAもあります。なぜなら、まず労働環境を良くすれば、人は増え、スマホを使いこなせる世代の就農にもつながるからです。新技術の導入は、結果的に自分たちの地域農業を、自農協も含めて好転させるという経営判断です。今、現場を担う人々が快適で居心地が良いと感じれば、おのずと人は集まります。農業現場の魅力アップは、今いる人々を笑顔にすることからではないでしょうか。

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