[実証始まる スマート農業](4) 酪農(栃木県大田原市)×次世代閉鎖型牛舎、自動管理 状態“見える化”

壁面に144機のファンと細霧冷房を備えた「次世代閉鎖型牛舎」。牛の様子を見る津久井さん(栃木県大田原市で)

省力、乳量増  実現へ


 栃木県大田原市の津久井宏哉さん(42)が代表を務めるグリーンハートティーアンドケイの酪農の牛舎では、従業員らが畜舎の清掃をしながら牛の動きに目を光らせる。体調や発情の兆候を見逃さないためだ。だが、飼養頭数は1300頭で、1頭ずつのきめ細かい観察には限界がある。津久井さんは酪農のスマート化で、牛の状態を客観的なデータに基づいて“見える化”することを期待する。

 同社は乳牛の他、肉牛や水田、牧草地管理などを手掛け、総勢70人が働く。実証試験では最新の80頭規模の搾乳牛舎で、搾乳や給餌、ふん尿処理に加え敷料の散布なども自動化する。労働時間の30%削減と乳量の10%以上の増加を目指す。

 目玉の一つが個体ごとの適切な繁殖・健康管理だ。牛の個体ごとに行動を追跡・記録し、牛舎に備えたカメラで牛群の位置情報を把握する。牛の動きに合わせて空調を管理し、多頭飼育では発見が難しい蹄病(ていびょう)の早期対処ができるようになるという。実証試験の代表者である宇都宮大学農学部の池口厚男教授は「蹄病は乳量に大きく影響する。早期に対処すれば、牛の状態によっては10%以上回復する場合もある」と損失軽減効果を強調。発情の適期発見の技術を確立し、乳量の損失を減らすことも目標とする。

 ばらばらに記録していた室内の環境情報や生乳、給餌のタイミングなどのデータも記録・一元化する。個体ごとに乳量や乳脂肪分を記録。管理改善につながる仕組みの構築を目指す。

 実証試験に用いる牛舎は、南北の壁面に144機のファンと細霧冷房を備えた「次世代閉鎖型牛舎」だ。同社では既に2015年から稼働。夏場の4カ月間で室温が外気よりも2度ほど低く、これまでに搾乳量が1日1頭当たり7キロ増える成果が出ている。多くの換気扇で使う電気料金を上回る収益の向上ができた。

 労働改善も期待する。酪農経営主の年間労働時間は全国平均で2173時間、全産業平均に比べて453時間長い(18年11月時点、中央酪農会議調べ)。自給飼料の生産を含めると、さらに907時間加わる。

 これまでに搾乳と餌寄せをロボットで行い、ふん尿排出も自動化している。実証試験で津久井さんが特に期待するのは自動敷料散布機だ。週に数回、牛を端に寄せて、敷料を牛床に搬入してから薄く広げていた。牛を動かすことが牛のストレスにつながるが、作業はほぼ毎日しなければならない。自動化すれば人手もかからなくなり、作業時間の短縮が実現できる。給餌もロボット化する計画だ。

 津久井さんは「敷料散布で2人分、給餌で1人分が省力化でき、牛の状態も通知で分かれば、負担はかなり軽くなる」という。 
 

おすすめ記事

営農の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは