「なつぞら」 北の酪農ヒストリー 第20回 「太田寛一の挑戦」(上)~極秘に乳業会社設立に奔走

NHK連続テレビ小説「なつぞら」場面写真 (C)NHK
「なつぞら」では、農民資本の「十勝協同乳業」の設立が描かれました。協同組合の団結を正面から取り上げたドラマは稀有といえるでしょう。
国の妨害に遭いながら、音問別農協の田辺政人(宇梶剛士)組合長と柴田剛男(藤木直人)専務らは、農協出資の乳業会社設立で十勝の農協組合長を一つにまとめ上げます。そして、十勝支庁に乗り込み、支庁長から賛意を取り付けました。
田辺らが農協資本の乳業会社設立に奔走するのは、大手乳業に隷属的な関係を強いられ低乳価に苦しむ酪農家を救うためです。これは絵空事ではなく、実際にあった話を基にしています。
田辺は太田寛一・士幌町農協組合長(後にホクレン会長、全農会長)、十勝協同乳業は北海道協同乳業(よつ葉乳業の前身)がモデルと思われます。
太田は1915(大正4)年、十勝の川西村(いまの帯広市川西町)に生まれました。小学校卒業時に十勝支庁長から表彰されるほど学業がずば抜けていました。しかし、家が貧しく進学を断念し、地元の産業組合(今の農協)に就職します。後に士幌村産業組合(士幌町農協の前身)にスカウトされました。
ここで知り合った獣医師の秋間勇や飯島房芳(後の士幌町長)らと共に、太田は「産業組合運動で農村を豊かにしよう」と、精力的に仕事に励みました。太平洋戦争後、士幌村農協が設立されると常務に、1953(昭和28)年には37歳の若さで組合長に就任します。
1956(昭和31)年9月、村内の全酪農家(323戸)に呼び掛け、全会一致で士幌村酪農振興協議会を設立、この組織を起爆剤に農協は生乳の「一元集荷多元販売」に踏み出します。今日の指定生乳生産者団体制度のモデルともいうべき試みで、画期的なものでした。
当時、士幌村では雪印乳業、明治乳業、森永乳業、宝乳業などによる激烈な集乳競争が行われていました。親子で生乳の出荷先が違ったり、農家ごとに乳価差があったり、一家で複数の乳業に生乳を出荷するなど、混乱を極めていました。
太田は、このいびつな生乳販売の問題を解決しなければ酪農発展はないと、酪農家の団結を促したのです。この結果、乳業と対等な取引が実現し、生乳検査も自ら行うようになり、乳業による検査のカラクリをつかむなど、大きな成果を挙げました。
こうした協同に基づく事業展開の延長線上にあるのが、1967(昭和42)年の北海道協同乳業の設立です。
太田は1966(昭和41)年、欧州の乳業事情を視察し、農民自ら乳製品工場を経営していることに驚きます。帰国後、極秘裏に十勝8農協による乳製品工場建設を進めます。ことが公になると、大手乳業の猛反対に遭うからです。
乳業工場建設の実現までには、大きな障害がいくつも立ちはだかっていました。(続く)
国の妨害に遭いながら、音問別農協の田辺政人(宇梶剛士)組合長と柴田剛男(藤木直人)専務らは、農協出資の乳業会社設立で十勝の農協組合長を一つにまとめ上げます。そして、十勝支庁に乗り込み、支庁長から賛意を取り付けました。
田辺らが農協資本の乳業会社設立に奔走するのは、大手乳業に隷属的な関係を強いられ低乳価に苦しむ酪農家を救うためです。これは絵空事ではなく、実際にあった話を基にしています。

太田寛一社長(よつ葉乳業提供)
太田は1915(大正4)年、十勝の川西村(いまの帯広市川西町)に生まれました。小学校卒業時に十勝支庁長から表彰されるほど学業がずば抜けていました。しかし、家が貧しく進学を断念し、地元の産業組合(今の農協)に就職します。後に士幌村産業組合(士幌町農協の前身)にスカウトされました。
ここで知り合った獣医師の秋間勇や飯島房芳(後の士幌町長)らと共に、太田は「産業組合運動で農村を豊かにしよう」と、精力的に仕事に励みました。太平洋戦争後、士幌村農協が設立されると常務に、1953(昭和28)年には37歳の若さで組合長に就任します。
1956(昭和31)年9月、村内の全酪農家(323戸)に呼び掛け、全会一致で士幌村酪農振興協議会を設立、この組織を起爆剤に農協は生乳の「一元集荷多元販売」に踏み出します。今日の指定生乳生産者団体制度のモデルともいうべき試みで、画期的なものでした。
当時、士幌村では雪印乳業、明治乳業、森永乳業、宝乳業などによる激烈な集乳競争が行われていました。親子で生乳の出荷先が違ったり、農家ごとに乳価差があったり、一家で複数の乳業に生乳を出荷するなど、混乱を極めていました。
太田は、このいびつな生乳販売の問題を解決しなければ酪農発展はないと、酪農家の団結を促したのです。この結果、乳業と対等な取引が実現し、生乳検査も自ら行うようになり、乳業による検査のカラクリをつかむなど、大きな成果を挙げました。
こうした協同に基づく事業展開の延長線上にあるのが、1967(昭和42)年の北海道協同乳業の設立です。
太田は1966(昭和41)年、欧州の乳業事情を視察し、農民自ら乳製品工場を経営していることに驚きます。帰国後、極秘裏に十勝8農協による乳製品工場建設を進めます。ことが公になると、大手乳業の猛反対に遭うからです。
乳業工場建設の実現までには、大きな障害がいくつも立ちはだかっていました。(続く)
(農政ジャーナリスト・神奈川透)
★農業高校生 応援プロジェクト『なつぞら』特設ページはこちら★おすすめ記事

[あんぐる] 今年の顔です 嶺岡牧の白牛(千葉県南房総市)
今年は丑(うし)年。千葉県南房総市は、日本酪農発祥の地として知られる。同地にある県の酪農の歴史を伝える施設「酪農のさと」では、国内で初めて乳製品の加工を目的に飼育されたと伝わるゼブー種の牛「白牛(はくぎゅう)」がのんびりと過ごしている。
白牛は、白い毛と長く垂れた耳の愛らしい見た目。暑さに強く、あごの下の胸垂のたるみや、背中のこぶといった特徴がある。海外では乳肉兼用の牛で、ホルスタインのような大きな乳房はない。
江戸時代の1728年に、将軍の徳川吉宗がインド産の白牛3頭を輸入。軍馬を育成していた同地の「嶺岡牧」で飼い、とれた乳を砂糖と煮詰め薬用の乳製品「白牛酪」を作ったことが記されている文献が残る。その後、白牛は70頭まで増加し、乳製品が献上品から庶民への販売品になった記録もある。しかし、明治期に発生した牛疫で同地から白牛は姿を消した。
施設には乳牛や地域の酪農の歴史を学べる資料館がある
嶺岡牧はその後も、牛の改良や繁殖を研究する場として牛が飼われ続け、現在の酪農の基盤をつくった。県は同地を「日本酪農発祥地」として1963年に史跡に指定。現在も「酪農のさと」の隣に、約30ヘクタールの放牧地と県の嶺岡乳牛研究所があり、乳牛受精卵の供給や放牧技術の研究を進めている。
「酪農のさと」では、95年のオープン以降、同地のシンボルである白牛を国内で唯一、継続的に飼育。現在は、雌3頭が飼われ、そのうち2歳の2頭は、2019年にオーストラリアから導入した“新人”だ。3頭とも性格は穏やかで、日中は屋外で日なたぼっこをしたり、干し草を食べたりして、過ごしている。
同施設の押本敏治所長は「今は冬毛でグレーになっているのが見どころ。インドでは神の使いといわれ、縁起が良い牛です」と話す。(染谷臨太郎)
「あんぐる」の写真(全5枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月11日

鳥インフル対策徹底を リーフ作成 農水省
農水省は高病原性鳥インフルエンザの多発を受け、養鶏農家に注意喚起するリーフレットを作成した。今季は渡り鳥の飛来地の他、道路や公園、森などにもウイルスが多量に存在するとし、飼養衛生管理の徹底など、対策への意識を高めてもらうのが狙い。都道府県を通じて配布し、同省のホームページなども活用して周知する。
今季は昨年11月以降、過去最多の15県36例の高病原性鳥インフルエンザの発生を確認し、殺処分羽数は合計で約600万羽に上る。また死亡野鳥や、池・ダム湖の水など10道県27件の環境試料からも高病原性のウイルスが検出されている。
リーフレットでは、今季は「多量に鳥インフルエンザウイルスがあちこちに存在」すると指摘した。特にハヤブサやフクロウの死亡個体からもウイルスを検出。鳥や小動物を捕食する猛禽(もうきん)類の感染は、環境中のウイルス濃度が高まっている指標になるという。また、今季のウイルスは感染してから死亡するまでの期間が長い傾向がある。リーフレットでは養鶏農家が早期発見できるよう症状も紹介。とさかのチアノーゼや顔面の浮腫性腫脹(しゅちょう)、突然死などを写真で示した。
対策では、ウイルスを農場内に入れないことを強調。手指消毒や車両消毒、防鳥ネットの管理など全従業員による飼養衛生管理の徹底を促した。同省は「国の支援も活用し、防疫対策をより強化してほしい」(動物衛生課)と話す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月15日

「農業男子×総選挙」広報大使 初舞台Bリーグ会場 JA東京グループ
JA東京中央会は、男子プロバスケットボールのBリーグに所属する「アルバルク東京」と協力して東京農業PRの強化に取り組む。東京都立川市のアリーナ立川立飛で開かれたホームゲームでは、「農業男子×総選挙」で東京農業広報大使となった3人の若手農家が、初舞台として試合前のコートに登場した。
JA東京グループは今シーズン(2020年10月~21年5月)、ホームゲーム開催時に同チームの選手ら……
2021年01月14日

11県合同トマト販促 首都圏100店舗で 鍋料理や機能性宣伝
冬春トマトの主産11県のJAグループが、首都圏のスーパーで合同販促を展開している。11県合同での冬季の店頭販促は初めて。17社と協力し、先週の3連休と今週末に、100を超える店舗で実施する。鍋など体が温まる料理やトマトの機能性を伝えるポスター掲示や推奨販売を通じ、厳寒期の販売を盛り上げる。
参加するのは、茨城、栃木、群馬、千葉、静岡、愛知、岐阜、福岡、佐賀、熊本、宮崎11県のJA全農県本部や経済連。……
2021年01月15日

組合員加入運動に力 正准で新規500人超 福島・JA会津よつば
JA会津よつばは、組合員加入運動に力を入れる。5年、10年後も農業が持続でき、安定した農畜産物の生産と農家所得の向上、次世代を担う青年後継者や女性農業者らとのメンバーシップの強化を図り、農業の活性化を目指すため、正組合員の拡大拡充運動を展開。事業利用者にも「農業のよき理解者」や農業を共に盛り上げるサポーターとして、准組合員への加入を促進している。昨年12月末で、正組合員への新規加入者が171人、准組合員への新規加入者が337人に上った。
加入運動は、本店の総務課が統括。……
2021年01月16日