改造内閣への注文 「官邸農政」改める時だ

 第4次安倍再改造内閣と新たな自民党役員体制が始動した。長期政権の総仕上げに向けた布陣となる。農政課題が山積する中、生産基盤の強化、地域政策の実行力が問われる。民主的手続きを軽視する「官邸農政」の強硬姿勢を改め、農家の厳しい目を踏まえた生産現場本位の政権運営を今度こそ求める。

 安倍晋三首相は「安定と挑戦」を掲げ、悲願の憲法改正や内政外交の諸課題に当たる決意だ。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長ら政権の骨格は維持、初入閣は環境相の小泉進次郎氏ら13人。江藤拓新農相は、自民が政権復帰する直前の2012年9月の党総裁選で安倍氏の推薦人となり、首相の信任は厚い。農水副大臣や衆院農水委員長などを歴任。首相補佐官として、農村の声を首相に伝える役割を担ってきたことも評価されたとみられる。

 首相は農林水産業の成長産業化を掲げ、農業産出額の増加や農産品・食品の輸出増などで成果を上げたとアピールしてきた。だが、最大の目標である農業者の所得増大に十分つながっているとは言い難い。農業の生産基盤の弱体化が顕在化し、待ったなしの立て直しが求められる。環太平洋連携協定(TPP)をはじめとする大型の通商交渉で、農畜産物はかつてない自由化にも直面している。こうした課題に真摯(しんし)に向き合い、どこまで成果を出せるかが問われる。

 長期政権ゆえの緩みやおごりも目立つ。首相は「熟議」を何度も唱えたが、それを実践してきたとは到底言えない。与党が衆参両院で持つ圧倒的な議席を背景に、何度も強硬的な採決を繰り返してきた。審議時間も足りなかった。日米貿易協定交渉についても、今月下旬に予定する署名終了後まで情報を開示しない構えだ。国会は選挙で選ばれた議員が議論を尽くす代議制民主主義の根幹だ。早急に閉会中審査に応じ、国民への説明責任を果たすべきだ。

 官邸主導の政策決定で、農協改革や米の生産調整見直しをはじめとする規制緩和・農業改革が相次いで行われた。規制改革推進会議などには当初、農業の専門家は皆無で議論の過程も不透明だった。同じことが繰り返されれば、農家の農政不信はいつまでも払拭(ふっしょく)できず、不満が一層募ることになる。

 新たな食料・農業・農村基本計画策定に向けた議論が本格化する。課題山積の中、来年3月までの短期間での決定でいいのか。消費者や農家、地方を代表する委員は足りているのか。委員の追加や策定期間の延長も含め、腰を据えた議論が必要だ。

 自民党にも注文する。農林幹部は長年、政府や党内で大きな存在感を示し、農家や農村に軸足を置いて議論を尽くしてきた。その伝統が薄れていないか。農家は結論にとどまらず、議論の過程も注視していることを銘記すべきだ。

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