日常生活で渇いた心を癒やそうと絵画を求める時がある

 日常生活で渇いた心を癒やそうと絵画を求める時がある▼上野の森美術館(東京)で開かれているゴッホ展をのぞいた。息をのむほどの鮮烈な色彩、うねるようなタッチが持ち味のオランダ生まれの画家である。難解な文章の評論家小林秀雄ですら絵の前で「しゃがみ込んでしまった」(『ゴッホの手紙』)ほどの魅力を持つ。10年の短い画歴をたどる珠玉の40点がそろった▼農民画家ミレーに強い影響を受け、「種まく人」を模写している。弟テオに送った手紙に〈靴を脱ぎなさい。あなたの立っている場所は聖なる地なのです〉と言われたような気持ちになった、と書き残した。農民の生活を描いた「じゃがいもを食べる人々」を描くのに、40を超える表情を練ったという。労働する農民の姿にこだわった▼暗い作風を一変させたのは、日本の浮世絵との出会い。燃えるような黄色や青の原色を使い始める。変化の起爆剤となったのは太陽と水。「太陽はパリで、水は日本美術、つまり浮世絵だった」。作家の原田マハさんの『ゴッホのあしあと』(幻冬舎新書)に学ぶ。ジャポニスムがあの名作「ひまわり」を産み、秀作「糸杉」、「麦畑」、「薔薇(ばら)」の創作につながった▼見終えた人の顔に潤いが浮かぶ。心に「ひまわり」を咲かせたのだろうか。
 

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