「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」

「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。有名な正岡子規の句である▼茶店でもあろうか。ゴーンと鐘の音が聞こえてきそうな臨場感にあふれる。この句は親友夏目漱石が詠んだ「鐘つけば銀杏(いちょう)散るなり建長寺」を下地にしたものだと、以前、若手俳人神野紗希さんから聞いた。漱石の下宿「愚陀仏庵(ぐだぶつあん)」で培った友情の結晶であろう▼果物は子規の好物だった。「大きな梨ならば六つか七つ、樽柿(たるがき)ならば七つか八つ、蜜柑(みかん)ならば十五か二十位食うのが常習であった」と随筆「くだもの」で書いている。樽柿とは、酒だるのアルコール分で渋を抜いて甘くしたもの。帰京途中に立ち寄った奈良で子規は、東大寺の鐘を聞きながら甘柿の御所柿を食べた。それが冒頭の句につながる▼色づいた柿をのんびりと眺めていられないのが、昨今の鳥獣害である。ニホンザルの深刻な食害に悩む兵庫県丹波篠山市の畑地区で先ごろ、「さる×はた合戦」があった。猿が柿を求めて人里に来る前に取り切ってしまう作戦である。昔ながらの竹ざおと高枝切りばさみを使い、都市住民も参加してのイベントだが、〈敵もさるもの引っかくもの〉。効果はつかめないという▼近くの畑の柿が色づいたと思ったら、金色の小花のキンモクセイが香りだした。これから秋本番である。
 

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