グリーンインフラ しなやかな持続社会へ

 インフラは、暮らしや産業を支える社会基盤だ。成長期にはダムや道路などが主流だった。今注目されているのがグリーンインフラ。自然や農業の持つ多面的な機能を社会や国土づくりに生かす取り組みだ。持続可能な成熟社会に向け、新たな手法を官民で進めたい。

 コンクリートからグリーンへ。今、インフラの概念が大きく変わろうとしている。

 高度経済成長期のインフラ整備といえば、道路、鉄道、通信、ダム、港湾、上下水道などハード面が中心だった。国土計画も公共事業が主流で、産業政策に傾斜していた。

 だが、人口減少や超高齢社会の進展、地方の衰退、多発する大規模自然災害など、社会課題がより複雑になる中で、柔軟でしなやかなグリーンインフラの考え方が生まれてきた。

 欧米は1990年代後半から、都市緑化による雨水管理、生物多様性の保全、自然環境を利用した防災・減災などのグリーンインフラを進めてきた。

 日本は2015年の国土形成計画で初めてグリーンインフラを取り上げた。以後、本格的な論議を進めてきた。今年の「まち・ひと・しごと創生基本方針」には、持続可能な地域づくりのためにグリーンインフラを推進する考えを盛り込んだ。7月には国土交通省が「グリーンインフラ推進戦略」を策定、官民連携のプラットフォームづくりを進める。

 では、自然の恵みを豊かな社会づくりに生かすとはどういうことか。具体的に何をどのようにするのか。

 国交省はまず、自然環境の多様な機能として、「生物の生息地」「農作物の生産」「土壌保全」「水源涵養(かんよう)」「植物の蒸発散機能を通じた気温上昇の抑制」「雨水の貯留による防災・減災」「水質浄化」などを挙げる。つまり農業の多面的機能そのものだ。「農のある街づくり」「自然と共生する社会」と言い換えてもいい。国連が定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)とも重なる。

 グリーンインフラの視点で、遊休農地の利活用、都市農業の振興、森林・河川整備などに取り組むことが、国土の維持管理、良好な住環境につながる。持続可能で魅力的な街づくりは、新たな投資や人材を呼び込むことにもなる。

 国交省の担当者は、グリーンインフラを「これからの国づくりの一丁目一番地」と位置付ける。特に都市農地は新たな価値を創出する大きな可能性を秘めているという。政府には、中長期的な国家ビジョンの下で、政策を体系化し、予算や体制を整えるよう求める。

 成熟社会にふさわしい国土利用、農と共存した都市づくり、地域社会再生の在り方を一人一人が当事者として考える時期に来ている。特に、地域資源とそれを生かすノウハウ、人的ネットワークを持つJAの役割に期待する。
 

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